蛇口

"サブスク"スタートアップの戦い方① -初期はチャーンレートより「ひねれる蛇口」を-

SOELUというオンラインフィットネスサービスをつくっているSOELU株式会社代表のシラトといいます。

このnoteでは、toCサブスクリプションサービスをリリースからグロースさせていく中での知見を主に書いていきます。

試行錯誤していく中でマーケ費用を3倍以上に拡大しつつCPAを1/5以下に抑えた実体験をもとに、スタートアップでプロダクトをつくっている方の参考になる記事にできればと思っています!

目次

● 「チャーンレート高いからマーケ踏めない問題」の罠
● 「うわっ、私の検証スピード、遅すぎ…?」
● まずはひねれる蛇口をつくる
● ひねれる蛇口のつくり方
● 「一見うまく行かなさそうだけど、意外とうまく行く」かもしれないアイディアにベットする
● おわりに

「チャーンレート高いからマーケ踏めない問題」の罠

サブスクリプションサービスに限らない話として、継続率が低い(チャーンレートが高い)うちはアクセルを踏むべきではない、という議論があります。
いわゆる「穴の開いたバケツ問題」です。

多くのサブスクリプションサービスは、メルカリのようなマーケットプレース型のサービスと違ってネットワーク効果が効きづらいです。

「ネットワーク効果が効かない分、サブスクサービスは地道に獲得コストとチャーンレートを下げてからマーケ踏まないとな…」

特にSaaSなど、サブスクリプション型サービスでのチャーンレートの重要性が語られることも多く、私もリリース当初そんな考えを持っていました。

「うわっ、私の検証スピード、遅すぎ…?」

ですが、リリース後間もないtoCサブスクサービスで「まずはチャーンレートを下げてからアクセルを踏む」という考えだとグロースに悪影響を及ぼす可能性が高いです。

ある程度の流入量を担保するための「チャネル確保」と「ユーザー獲得コスト低減」ができていない場合、スタートアップとして致命的な検証スピードの低下を招いてしまいます。

ユーザー獲得コストが高い
⇒仮説検証に最低限必要な集客にコストと時間がかかる
⇒検証サイクルが遅くなる


というように、検証スピードが落ち、必然改善のスピードが落ちます。
さらに、

ユーザー獲得コストが高い
⇒アクセルを踏むと通常獲得コストは高騰するため、既にユーザー獲得コストが高いとチャネルを広げられない
⇒成長スピードが限定される

という悪循環が起こります。これは、スタートアップにとって死に等しいことだと思います。

さらに言うと、初期からチャーンレートを気にしすぎ、少数ユーザーの満足に最適化しすぎることで、市場をあえて狭めることに繋がるリスクもあります。

まずはひねれる蛇口をつくる

私の現時点での考えとしては「穴の開いたバケツ」のたとえで言うとこのような順番でフォーカスしていくのがいいのではないかと考えています。

①ひねれる蛇口をつくる(CPA×チャネルで検証速度を担保)
まずはバケツに入ってもらう部分にフォーカスし、検証スピードをあげる。

②蛇口をひねりながらバケツの穴をふさぐ(Churn改善によるLTV向上&継続的なCPA改善)
次に、バケツに入ったユーザーが体感する効果・信頼・所属感を積み上げてチャーンレートを改善。同時に、継続的にCPAを改善していく。

③大きなバケツに取り替える(ユーザーあたり単価向上のアップセル施策や、ターゲット/チャネル拡張)
より大きなマーケットを目指してプロダクトを拡張したり、信頼関係のできたユーザーに更なる価値提供⇒アップセル・クロスセルを図っていく

②、③についてはここでは深堀りせず、今回は①についてSOELUで行った改善の概要について書いていこうと思います。

ひねれる蛇口のつくり方

①ユーザー"にならなかった人"の声を聞く
②構造的な問題に取り組む
③ファネルの上から改善に取り組む

実際は①~③を別々に行うわけではなく同時進行だったり行ったり来たりすることもありますが、大まかな順番としてはこのような順番で改善を行っていきました。

①ユーザー"にならなかった"声を聞く

何故入会まで至らなかったのかの仮説をまずは立て、データから定量的に、ヒアリングから定性的に壁をどうして越えられたか/越えられなかったかユーザーの声を聞きます。

ここで仮説の確信度を上げ、取り組む課題を具体的に定めます。
※データ分析やユーザーヒアリングについては今回の主題ではないので深堀りしません。

②構造的な問題に取り組む

SOELUの場合、初回無料体験を予約し、体験してから入会するフローとなっています。
この形に落ち着くまで、「改善インパクトの大きさ」「より良い可能性を見逃していた場合の機会損失の大きさ」を重く見て獲得フローの構造的なテストをまずは行いました。

具体的には、Netflix型の「X日間無料」モデルや、LP上で決済まで行うツーコスLPモデル、確認ページで入会アップセルを行うモデル、予約ではなく即時体験をベースとしたモデル、意志決定コストをかけずに課題ごとの希望レッスンを受けれるモデルなどなど…フロー自体の見直しを行いました。

③ファネルの上から改善に取り組む

構造的な問題に一旦の最適解が見つかった後は、ファネルの上から改善に取り組みました。

何故ファネルの上からかというと、最も速く改善サイクルを回せるからです。ファネル上の数値で圧倒的に大きな問題が他にない限り、ファネルの上から改善を回すべきです。

有意な検証に1,000人の母数が必要だとして、例えばSOELUの例で入会率の検証を行うためには、予約率が10%/体験率が50%の場合20,000人の流入が必要となります。

一方、ファネルの上の予約率を改善するためには1,000人の流入でよく、単純計算1/20の期間で検証を行うことができます。逆にいうと、純粋な検証運用期間のみでいうと入会率の検証には予約率の実に20倍の時間がかかることになるので、下のファネルに大きな問題がある場合早急に対策をとる必要があります。

(数値はダミーです。念のため)

「一見うまく行かなさそうだけど、意外とうまく行く」かもしれないアイディアにベットする

ここまで初期サブスクリプションサービスのグロースについて長々と書いてきましたが、最後にSOELUのチーム文化について紹介させてください。

SOELUでは「一見うまく行かなさそうでも、小さく検証する」という文化を推奨しています。
例えば、SOELUでは入会時に一定の割引を行い1年間継続してもらう「年契約」を選択できるようになっています。この施策も企画当初は
「toCのオンラインサービスで、月額数千円以上で年契約ってうまく行ってるところ少なくない?」
「オンラインで年契約なんてうまくいくの?」
そういった声の方が大きかったです。

ですが、いざ実際に小さく検証してみると、
-「自宅でできる」=続けやすい
-初回体験で期待以上のAHA体験を提供できている
ことから多くの方に年契約で入会いただいています。

この施策がワークしたことで、最低継続月数(ひいては最低LTV)がより明確になり、許容CPAが引きあがりました。許容CPAが引きあがることで、Paidでの検証スピードを上げることができ、いいサイクルが生まれました。

これは一例にすぎませんが、SOELUではこのように「一見うまく行かなさそうだけど、意外とうまく行く」かもしれないアイディアも、期待インパクトが大きければ迷わずベットする文化でプロダクト開発を進めています。

成功率10%の施策でも、20個試せば88%の確率で1つは当たります。クイックに試せてインパクトが大きい施策は、直感に反していてもCEOやCOOの好みの施策でなくても(笑)、必ず試すチームがSOELUにはできています。

おわりに

そんなチームで一緒に働く方を、SOELUでは絶賛募集中です!
UI/UXデザイナー(特に!)、エンジニア、プランナー/ディレクターを主に募集しております。

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