【#地味PM】すべてが不足するなかでプロダクトリリースする
はじめに
こんにちは。polyfit株式会社でPM 兼 代表をしている大薮 聡史です。普段は株式会社プレイドで派生プロダクトの新規事業推進をしていたりもします。
本日はpolyfit株式会社での話を中心に話します。
polyfit株式会社は非効率が多いPTA活動をクラウド技術をフル活用することで効率化する。地域での活動履歴を社会が有効に使えるようにすることを目指すスタートアップ企業です。
2021年10月に設立し、2022年10月にプロダクト正式版のリリースをしています。(ちなみにβ版はクローズドですが7月にリリースしてました。)
地味PMというテーマなので、すべてのリソースが不足している中でPMである自分が取り組んだ地味なテーマについて書きます。地味かどうかはわからないですが、やったことはめっちゃ地味です。
すべてがない「polyfit株式会社」
上段に書きましたが、自分はフルタイムで働きながらプレイドで働き、土日を中心とした時間でpolyfitの開発及びPM業務をしています。要するに「時間がない」です。
また、弊社自体は日本政策金融公庫からの借入を除き、資金調達を行っていません。要するに「資金があまりない」です。
最後に重要な観点として、自分自身はPTA業務を実際にやったことがありません。要するに「解像度が低い可能性」があります。
上記のすべてがない状態でプロダクト開発を行うのは割と絶望的だと考えるかもしれませんが、実はそうではないと僕は考えています。
本日は上記の観点「すべて(資金・時間・解像度)」のスコアが低い中でもプロダクトをリリースし、ユーザーを巻き込むという観点の記録を残したいと思います。
ここ数年(1年くらい前まで)は資金調達が活況でしたが、この1年はテック株のマルチプルが落ち込み、株式を用いた資金調達自体が難しくなっています。今後はいかに少ない手数で検証を回せるか?という観点が重要になるはずです。
とはいえ、ない状態だとそんなに楽しくはないので、「ある」状態を作っていきます。
優先投資すべきは「解像度を高めること」
一般的にスタートアップはまずは資金から手当を行います。シード期であればエンジェル投資家や(プレ)シード期に投資をいただけるVCから出資を受けることも多いです。
ですが、条件次第では「解像度を高めること」が重要であると思います。
この段階では創業者自身が「人生のすべてを掛けて挑戦する課題か?」などが不明確であるケースが多いと思います。その観点でまずは解像度を高めていくこと、リーンな形で外部資本をできるだけ入れずにそれを資金が続くまで、検証をすることが重要だと思います。
また、解像度を高めることで、開発及び事業進捗での手戻りを非常に少なくすることができます。中長期的に時間及び資金を節約することに繋がります。
PTAというドメイン自体が企業向けのドメインと異なり、緩やかに時間が流れることもあり、何よりも解像度を高めることに先行投資しました。
解像度を高める為に市場に参入する
弊社はPTA業務に対して初期から解像度が高いわけではありませんでした。
前述の通り、自分はPTA業務に対する原体験がないです。細かいコンテクストがない状態で改善するプロダクト作れるわけがないです。
なので、解像度が低い状態から解像度を高める必要があります。結果的にあらゆる手段を使って、ひたすらにヒアリングを行いました。(50名以上)
とはいえ、弊社には以下の大きな課題がありました。
正直のところ大手企業でない限り多くの立ち上げ期の市場において起こりうる課題かなと思います。
上記の課題は実際に起こりました。
実際にデスクトップリサーチに加え、TwitterでのDMを通じた業務ヒアリング、大学教授へのアクセス、区や市の有識者へのヒアリングなどを行いました。数としては十分すぎるくらい行いました。
しかし、有益な情報を得るに至る解像度の深さまでは至りません。
1時間程度会話しても解像度が高まるほど会話は進まない。なんとなくわかるけど、プロダクトという作品に落とし込むまでの確信に至らないのです。正直、これはよくないな、って思いました。なぜなら自分はPTA活動自体はやったことがないのですから。
よくよく考えてみると会話が進まない理由がわかりました。
具体的には「弊社への期待値がないから」です。これは当たり前の話です。話し手からすると、課題を話しても解決できない事業者であれば、話す価値もないのです。特にスタートアップ企業であればなおさらです。
私は困りました。どうしたら弊社に期待感を持っていただけるのか?と。
弊社は実際に以下の打ち手を行いました。本気度を見せることに注力しました。
上記を3か月程度の期間で一気に進めていきました。
解像度を高める、という目的にしてはかなりオーバースペックに見えるかもしれません。
ですが、未開拓の市場で課題を解決するという目的ではこのくらいを行うとユーザーサイドが期待値を高めてくれます。期待度が高まると一気にヒアリングが進みます、もっと言えばユーザーさまがユーザーさまをご紹介いただけるといったことが生まれます。
期待値が高まる結果、PTAに関する座談会に呼んでいただいたり、課題感について共有いただけたりするケースが圧倒的に増えました。弊社として期待をいただいているのを最近だと日々感じます。
お、やっと市場に入れたんだな、って思いました。
ここから一気に解像度が上がり、多くの学校さまやPTAさまと連携をしながら理想の業務フローを探していく旅が始まります。
解像度を上げた状態でプロダクトを再設計する
解像度を上げた後に次の課題がありました。簡易的に作ったアプリケーションであるゆえに、ユーザー側が継続的に使う判断をしてくれないという課題です。保護者のみなさまはLINEやGoogle Docsなどの世界的に素晴らしいソフトウェアを当たり前に使っています。polyfit(ポリフィット)は課題を解いている反面で、継続的に使い続ける判断をしてもらうのは難しいと言われることが多かったです。
なので、UI/UX設計に投資することにしました。そこで教育関連プロダクトに関わったことがあり、業務系のソフトウェアに強いデザイナーを業務委託(副業)で採用しました。ざっくりとしたDesign Docsを用いて、共有し、ゼロからプロダクトを設計しました。
また、エンジニアの採用(業務委託・副業)も開始しました。弊社は小規模であることから、副業での採用力も高くないと考えていた為、比較的新しい技術(React(TS), Recoil , Nodejs(TS))などを採用。徐々に人数を増やしています。
2022年8月にβ版リリースを目標に機能追加及びフルスクラッチで開発を再開しました。
さて、解像度も高まったし、始まりだ。作るぞ、と。
2022年4月の出来事でした。
β版の検証ユーザーを絞る
弊社にはビジネスメンバーが私しかいません。とにかく人数が少ない。
検証するにも多くのユーザーさまに対して導入コスト 及び 関係値作りのコストを支払うことは難しい現実があります。お客様対応はできる限り行いたいのですが、検証を回すという段階においては打ち合わせよりも投資優先度の高いものがあります。
私たちは検証ユーザーを絞ることによって少ないお客様で検証を回すことにしました。特にPTAのデジタル化という領域については新領域であることから、特に事業会社(スタートアップ)やSierなどでIT領域に詳しい方が本部役員にいる かつ 私の知り合いではないインバウンドでのお問合せをいただいたユーザーさまから検証対象を選び、β版の導入を進めていきました。
また、業務プロセスの改善を伴うものもあり、丁寧に対話を進めていきながら貢献領域を決めていきました。足りない機能については必要不可欠なものであれば実装していきました。(現在進行形でしています。)
(公開した当日も熱量高いフィードバックをいただきました。)
時には実地に行き、リアルでの対話を行いました。
弊社としては使われる状態(=ストレスレスに使える)を作ることを目標にプロダクトを作っています。あまり数を追うというよりは、明確に使われるもの、初期であれば課題を解き切れているか?という方向を重視しています。
無事にリリース
一定、検証項目が終了した為、拡大に向けてリリースをすることになります。リリース当初は色々な反応をいただき、想定通り。現在のpolyfitは一般的な機能が中心であるので、さらにPTAに特化したソリューションを継続的に作る為にいろいろ準備しています。
年間1,000時間、保護者の方の余暇時間を作り、子どもが笑顔になれる瞬間を作っていきます。
また、最近ではリリース後のお問合せが落ち着いてきたところもあり、営業資料などの仕込みを行う余白が出始めたところもあります。これから。
最後に「地味、だけど大事なことだけをやるために」
今回のアドベントカレンダー登壇者の方はシリーズA以降の会社さまが多かったので、立ち上げ初期のお話を書いてみました。
解像度を高める、教科書通りの話ではありますが、立ち上げ初期にそれを捉え切るのは結構難しいと正直思っています。
その反面で、ソフトウェアはデータベースを扱うので、一度作り切ると変更するのが非常に難しい特性があります。なので、うまく解像度を上げてみる、数年間、信じられる仮説を作るということは意外と重要な論点に見えます。
まずは動くものを作る、小さい仮説を積み重ねるということは重要ですが、だいたいの企業ではまずは動くものがずっとプロダクトとして使われます。最初作ったものはとにかく変えづらい。
だからこそ、初期に自分たちが数年間投資をできる仮説を立てるのは重要だと思います。その仮説の優劣で、成長後に開発を継続できるか?が変わると色々なSaaS企業をみてきて思います。大事。
また、この1年で自分がこのドメインをしっかりやっていけることがわかりました。PTA課題はまだ明確な課題解決手段を持ち合わせている事業者及び自治体が不在で、課題解決自体が非常に面白いドメインです。リサーチに強みを持つが、技術的に大した強みを持たない自分がPO(PM)をやるには本当に合ったドメインだと思います。
【宣伝】一緒にやってくれる人を募集中です。
polyfit株式会社では創業メンバーを募集中です。polyfit株式会社は日本政策金融公庫の借入以外の資金調達をしていないことから、代表が100%の株式を保有しています。そのため、早期のフェーズであれば創業時の株価で株式を付与することができるという特性があります。一般的なスタートアップと異なる魅力があると思います。創業期を支えるCTO及びCxO、人的資本領域に強いBizdev(COO候補)を募集しています。
とにかく課題をスマートに解決する、自分はそれだけを目指しています。自分たちが新しい価値観を作り、日本をアップデートするんだ!、そういった強い感情を持てる人は弊社向きです。
弊社は自分が新卒で上場株投資家(AMOne)を経験後、IPO準備(PLAID , 144A)を経験した為、それなりにSOなど知見があります。社会課題を解決し、従業員ステークホルダーが金銭的にも大幅に報われる設計を作っていきます。
ご興味があれば(@satoshiojs)にDMをいただければと思います。
Twitter:https://twitter.com/satoshiojs
Facebook:https://www.facebook.com/satoshi.oyabu2/
HP:https://www.polyfit.jp/
但し書き
上記は条件付きで行えたことが大きく、色々な経験を各所で積ませてくれた社会のおかげだと思います。経験をすることで色々な思考をショートカットできます。今後は社会に価値を還元していくことで、より楽しい社会を作れるように努力を積み重ねていきます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?