『007』シリーズに関する告白
実はほとんど観たことがありませんでした。
正直言うと、軽く避けてました。
初めてちゃんと観たのは『スカイフォール』でした。
それ以降は『スペクター』観て、ちょっと前に『ノー・タイム・トゥ・ダイ』観て、それ以前の過去作は先月から配信が始まったAmazonPrimeにてありがたく一気に鑑賞。ってことでつい先日、ようやく全作品をとりあえず一通り観ることができました。
って言われても、私のことなど全く知らない、地球上のほぼ全ての方々からすれば、如何なるリアクションも取りようのない話だとは思いますが笑、私のことを個人的に知ってくださっている方からすれば、多少の驚きはあるかも知れません。
あちこちで「映画好きなんですー」ってな顔をして、大学では映画研究部に所属して自主映画作って、社会人になってからも自主映画作って映画祭に出して……みたいなことをやっている人間が、007シリーズを観てないというのは、やっぱり少し意外な気がします。
「俺ジャズ好きなんすよー!」って言ってる人間が「まいるすでいびす?何ですかそれ?」って言ってたら、そりゃあ「え?」ってなりますもんね。
映画に全く興味のない方でも、「ダブルオーセブン」「ゼロゼロセブン」「ジェームズ・ボンド」という言葉は聞いたことがあるでしょうし、銃口をイメージした丸ワイプの中にフレームインしてくるスーツ姿の男が、画面の中央に来た瞬間カメラの方に振り向き銃を発射!という、あのあまりにも有名なカットもどこかしらで見覚えはあるでしょうし、パバッ!ドゥーン、パバッ!ドゥーン、パバッパパーパ! ドゥーンドゥーンドゥーンドゥーン、ドゥーンドゥーンドゥーンドゥーン、ズンデケデンデーンズンズンズン、ズンデケデンデーンズンズンズン……(なぜ文字で表現しようなどと思ってしまったのか)という、これまたあまりにも有名なあのテーマ曲も、きっとどこかで聴き覚えがあるでしょう。
そのくらい超有名なシリーズなので、映画好きなら普通に観てるんでしょうね、くらいに思われても当然ですが、本当にずーっと観てなかったんです。
というのも、私の映画初体験は4歳の時にテレビで観た『少林寺木人拳』でして、そこでジャッキー・チェンを知り、それ以降ジャッキー映画を中心に映画を観るようになったので、幼き頃(©︎ジャルジャル)の私にとって「映画」とは、「鼻の大きいお兄さんが超絶アクションで悪者をやっつけるやつ」だった訳です。
で、そうなると当然、アクションシーンの基準がジャッキー・チェンになってしまう訳で、そのせいで私はウルトラマンや仮面ライダーもほぼ観ていません。格闘シーンをちょっと観ただけで「アクションがのろい」と思ってしまったんでしょう(と言いつつ、なぜか宇宙刑事シリーズや戦隊シリーズは多少観た記憶もあるのですが。アクションが自分の中で許容範囲内だったのでしょうか?)。
まぁとにかく、ジャッキーの「おかげ」というべきか「せい」というべきか、アクションシーンに関しては、割と早い段階で目が肥えてしまったのかも知れません。そりゃあ幼少期に『スパルタンX』『プロジェクトA』『ポリス・ストーリー』『サンダーアーム』なんかを繰り返し観まくってたら仕方ないですよね笑。
で、今回のテーマである007シリーズも、当時の私にとって、「アクションがのろい」フォルダに入ってしまったんだと思います。
昔は「金曜ロードショー」「ゴールデン洋画劇場」「日曜洋画劇場」などを筆頭に、昼でも夜でも深夜でも、テレビでたくさんの映画が放送されていましたので、その中で007シリーズにも出会っていたはずです。
来週の予告とかでも「次週は、テレビ初登場!大ヒットスパイアクション!」とか「手に汗握る、ド迫力のスペクタクルアクション!」とかいうナレーションとともに断片的な映像は観ていたでしょうし、親がたまたま観ていたのを通りすがりでチラ見くらいはしていたはずですが、そこで「よし!俺も観よう!」とはなりませんでした。
車や飛行機やヘリを贅沢に爆破させたりしてるのは単純に「すげー!」と思いましたが、とにかく格闘シーンがゆったりしていて、パンチ一発ごと、キック一発ごとに、攻め手と受け手が呼吸を合わせて「よしっ、せーの!」ってやってるのが見える感じで、「え?なんかめっちゃもっさりしてる……」って思ってしまいました。
でもって、私がその存在に気づいた時点で、既に10本以上あるご長寿シリーズだったことも、避けてしまう一因だったかと思います。途中から観ても、雰囲気とかノリとかあるあるとかが理解できなくて、ついていけないんじゃないの? という不安もあった気がします(ちなみに同じ理由で『男はつらいよ』も『釣りバカ』も『ワイルドスピード』も観れていませんが、それらもおいおい観ていきたいと思っております)。
と言いつつ『ロッキー』は思い切り4から観たんですけどね……。
って考えると、避けた理由は他にもあって、映像が古めかしく見えたのもその一つだったかも知れません。その時見たのがショーン・コネリーだったかロジャー・ムーアだったかも定かではありません(でも二人の内のどちらかだったはず)が、なんとなく直感で「自分向きの映画じゃない」「大人向けの映画だ」と思ってしまったのでしょう。
実際、今回通して観てみると、けっこうエグめの惨殺シーンもちょいちょいありましたし、今聞くと「ただの下ネタ/セクハラやないか!」という「小粋でセクシーなジョーク(当時)」も多かったですし、「ウォッカマティーニを、ステアでなくシェイクで」なんて言われても「何イキっとんねん!麦茶でも飲んどけ!」って思ったでしょうし、まぁ子供には色々ピンと来なかったでしょうね。
とまぁ、そんなこんなでずーっと観てこなかった訳ですが、そんな私の重い腰を上げてくれた記念すべき作品が『スカイフォール』でした。とは言えこれも「007を観るぞ!」というよりは「サム・メンデス監督の新作!」という動機で映画館に行きましたが、結果的には良い出会いだったと思います。
ダニエル・クレイグ時代の007シリーズは、撮影やVFX技術の向上とも相まって、それ以前と比べてもアクションのクオリティが格段に上がっており、特に冒頭、ツカミのアクションシーンからアデルの歌声が響くオープニングに至る流れも本当に素晴らしく、一気に引き込まれました。
その後、『スペクター』も映画館で観て、ちょっと前にようやく公開された『ノー・タイム・トゥ・ダイ』も映画館で観て、ダニエル・クレイグ時代の終わりを見届けてから一気に過去に飛び、AmazonPrimeにて第1作目から順に観始め、つい先日、ようやく全シリーズを走破し、世界の片隅でこっそりと静かな達成感に浸っておりました。
ってことでようやく各作品の内容、歴代ジェームズ・ボンド、歴代ボンドガール、007あるある、撮影技術やアクションシーンの進化、ライムスター宇多丸さんにそっくりなヘリ操縦士などについてあれこれ書きたいところですが、「観てこなかった話」だけでだいぶ長くなってしまったので、それらはまた別の機会に。
追伸
以下、ご参考までに、シリーズのタイトルを、ジェームズ・ボンドを演じた役者名と共に列挙しておきます。時系列順に観るも良し、気になったものから観るも良し。それぞれの楽しみ方で是非。
初代:ショーン・コネリー
第1作『007/ドクター・ノオ』(1962)
第2作『007/ロシアより愛をこめて』(1963)
第3作『007/ゴールドフィンガー』(1964)
第4作『007/サンダーボール作戦』(1965)
第5作『007は二度死ぬ』(1967)
2代目:ジョージ・レーゼンビー
第6作『女王陛下の007』(1969)
初代復活:ショーン・コネリー
第7作『007/ダイヤモンドは永遠に』(1971)
3代目:ロジャー・ムーア
第8作『007/死ぬのは奴らだ』(1973)
第9作『007/黄金銃を持つ男』(1974)
第10作『007/私を愛したスパイ』(1977)
第11作『007/ムーンレイカー』(1979)
第12作『007/ユア・アイズ・オンリー』(1981)
第13作『007/オクトパシー』(1983)
第14作『007/美しき獲物たち』(1985)
4代目:ティモシー・ダルトン
第15作『007/リビング・デイライツ』(1987)
第16作『007/消されたライセンス』(1989)
5代目:ピアース・ブロスナン
第17作『007/ゴールデンアイ』(1995)
第18作『007/トゥモロー・ネバー・ダイ』(1997)
第19作『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ』(1999)
第20作『007/ダイ・アナザー・デイ』(2002)
6代目:ダニエル・クレイグ
第21作『007/カジノ・ロワイヤル』(2006)
第22作『007/慰めの報酬』(2008)
第23作『007/スカイフォール』(2012)
第24作『007/スペクター』(2015)
第25作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021)
初代主演の別プロダクション作品:ショーン・コネリー
番外編『ネバーセイ・ネバーアゲイン』(1983)
※番外編中の番外編として、デヴィッド・ニーヴンがJBを演じた『カジノ・ロワイヤル』(1967)というのもありますが、これは別プロダクションによるパロディ作品なので、正式なシリーズとは言えませんが、内容と釣り合わないやたらと豪華な出演陣など、歴史的資料として観るのはアリかと思います。
映像ディレクター。自主映画監督。 映像作品の監督・脚本・撮影・編集などなどやっております。