X(twitter)現代川柳アンソロ第3号鑑賞 ~二句立て~最小単位の連作~(1)
X(twitter)現代川柳アンソロ 第3号より惹かれた句に感想をつけてみました。
現代川柳は様々な読み筋が成り立ちます。もし、この鑑賞文を読んで、自分ならこの句はこういうふうに読む!というふうな、現代川柳の読みに興味のある方への「たたき台」になったら嬉しいです。ですます調とである調が混じる時がありますがご容赦を。
最小単位の連作としての二句、というテーマに引っかかってくる句を抜いて、作家数を数えてみました。もっとも、自分の勝手な解釈に沿った数え方なのですがw
参加65名のうち21名(約32%)が何らかの効果や共通の縛りを意識して連作的に作句していることがわかりました。
書く作品の連作効果としての切り口を自分にわかる範囲で読み筋を立てていきたいと思います。
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1
猫を巻く姿が名探偵のそれ
【名】あんた【推】水餃子が【理】冷めるぜ
雨月茄子春 @ugetsunasuharu
・名探偵と【】の中を繋げると名推理 でミステリー縛り
短歌、川柳、俳句で「 」( )のブランク使い、文脈中での括弧つかいは既視感を伴うほど見かけるようになった。さらに進んで「「「「「「「「蚊」」」」」」」」(川合大祐作品)のようなポスト現代川柳作家の括弧使いが最も突き詰めた表現として現れてきた。そして第3号のアンソロでは【】が新しい切り口として登場した感がある。発想的には辞書的用法?かとおもわれるが新鮮さがあった。他にも辞書的用法を顕著にして、西沢葉火さんの二句での【】の用法が印象的だった。
2
思い出すサカナクションときみの目を
ロッカーに渡辺美里かいるはずだ
うつわ @minetaro07111
・ミュージシャン縛り
特に2句目の渡辺美里の直後の助詞「か」がきになった。渡辺美里か?大黒摩季か?なかむらあゆみか?がいるはずだのニュアンスの「か」と読み筋を立ててみた。そうすると学校や職場のロッカーの扉の内側にブロマイドやステッカ―がはってあるというどこか懐かしい像が結ばれる。またミュージシャンということからロッカー=ロックミュージシャンという連想も来る。ミュージシャンの活躍した時代やヒットソングをリアルで聞いていた年代で読者の共感度が違ってくるのも面白いなと思った。
3
桜色マーカーをうばえソプラノ
ファのでないオルガンにゆびわが光る
太田 水 @ohtamizu
・音楽縛り・身体(間接表現)縛り
ソプラノは肉声、オルガンは楽器の音。奪う事(対象の所有から欠落させること)、ファの出ない(最初からの欠落)の対称性。声帯から発生されるソプラノは音声だが身体を間接的に感じさせる単語。二句目のゆびわは指という身体部分を飾る間接的なモノだが具体的に指の像を結ばせる。そういう意味で、音楽縛りと間接的な身体性表現の二重の縛りになっているといえるだろう。
桜色 / マーカーをうば / えソプラノ
と、中七と下五が句跨りになっている。下五の「えソプラノ」が絵ソプラノと読めて桜の降りしきる桜色の絵画の像が来た。心持のよい句だと思った。
4
喪失に辿りつくまで化粧する
あやとりが呟くむかし痣でした
小沢史 @katakatahage
・身体表現縛り(直接・間接的身体表現)
化粧は身体の部分を表す言葉ではないが、顔に化粧を施す行為の言葉なので明確に顔全体や顔のパーツの像を想起させる効果があるだろう。痣は皮膚の一部で直接的身体表現になるだろう。化粧と痣の関係は読者によってさまざまな読み筋を招来するだろうし、密接な絡みを誘導する効果があるのではないか。
5
彩雲が創刊号に付いてくる
バブひとつ溶けきるまではこいびとね
おだかさなぎ @spice16g
・第2号句との連作縛り
彩雲句→天かすを撒けば撒くほどすぺしうむ
(彩雲の光線とすぺしうむ光線のペアリング)
バブ句→恋人に金継ぎをして撫でている
(恋人句のペアリング)
彩雲は(朝日・夕日などで)美しくいろどられた雲のことだそうだ。雲なのだが間接的な光を濃厚に感じる単語だ。対して、第2号のすぺしうむ光線は直線的でエネルギッシュな光である。コントラストがある。
欠点を金継のように対応して美点(景色)に見立て撫でて(愛して)いた恋人、しかし第3号では破局して別れるまでの時間が決っている。それはバブが溶けきるまでの猶予なのだ。こいびととの関係縛りでストーリーが進展しているところが面白い。こういうペアリングの切り口もあるのだなぁ。
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とりいそぎ書いてきましたが、時間がなくなったので、またね~
またかけるときに続きをかいてゆきます。
お付き合いをありがとうございました♪