Twitter現代川柳アンソロ2~鑑賞~6
・TLに流した、X(Twitter)現代川柳アンソロ2の感想 #ツイ川ア・ラ・モード をnoteにまとめ始めました。
・一部に加筆修正をしています。掲載は時系列でもページ順でもなく、加筆修正順のランダムになっております。
・あと、その時の気分で、文体が「ですます調」「である調」「口語調」に変わるので、いろいろ、混じっています。読みにくいかと思いますが、いちいち直すと、またタイプミスとか増えそうなので統一しません。
すみませんがご了承ください。
やわらかな呪詛へ光の射す角度 / 茉莉亜まり
@Eternalstamoon
掲句の川柳性は「はたして呪詛はやわらかだろうか?」と違和感を持たせる点にあると思われます。呪詛という語は掲句の文脈の中で唯一といっていいほど質量が大きく、語感も異質なものだからです。
そういう意味で、キラーワード(季語のようなイメージ喚起力を持つ語とでもいったらよいでしょうか)だと思われます。やわらかな→呪詛やわらかな→光へとつながるのですが、ここで当初の違和感を辿ると「語順」へと意識がたどり着くのでした。
本来的には~呪詛へやわらかな光の射す角度~なのではないか?と。
呪詛という救いのないおぞましい感情や怨念的なイメージに対し、慈愛、許し、包容といったイメージが来る「柔らかな光」が対置される。というのが本来の語順ではないか?と。
しかし、それでは文体としてスラリと行き過ぎて、読者の意識を立ち止まらせるフックのような、文脈上の障り(さわり)が無さすぎます。
読み流されてしまう可能性があるでしょう。それでは、読者は掲句の持つ川柳性の表皮をなぞるだけとなってしまいます。そこで作者は語順を変えることで違和感による穿ちを読者に与えるというテクを使っているようです。
柔らかな呪詛?という語順のフックによって、読者は掲句の川柳性の、表皮だけではなく真皮の領域まで惹き込まれるのではないでしょうか。語順の入れ替えだけで、穿ちを生み出すという、ベテランによるハイテクニック。そのお手本として、わ~!という感じで掲句を観るのでありました。
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正しいと君は独りになるんだよ / 雪上牡丹餅
@2uNXiPgy974FwsH
端正な575の句姿。難しい単語0。掲句から、時事のエッセンスの抽出された、川柳として王道の文体の風韻を感じます。正しいことを川柳で叫び続け、孤独に極中死した鶴彬なども想起されます。
読みとしては例えば、内部告発。五ノ井里奈さんの件や、昔あった食肉の偽装事件など。
独りを詠んだ作品としては、自由律俳句の尾崎放哉
咳をしても一人 9音
を想起しますが、これは自分を詠んでいて、独語に近い詠嘆。やはり俳句としての詩情のベクトルを持っているかと。
掲句を自由律句に翻案すると
正しくても独り 9音とでもなるでしょうか。でも、掲句は他者への語りかけの要素がありますし、翻案しようとしても、どうしても違った詩情のベクトルになってしまいます。やはり掲句は伝統的要素である、人間諷詠にそった作品なのだろうと思われます。
社会詠、風刺とか反骨という要素も川柳の伝統的かつ重要な表現領域のひとつだとおもいます。
今回のTwitter現代川柳アンソロの出詠句のなかで、唯一といっていいほどの内容の句だったので、とても心に残りました。
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七色の勝負下着になりかける / 楡
@elmman
作中主体は、複数の恋愛経験ありという前提で妄読してみました。
~ 前回は七色の下着で勝負した。うまく行ったと思ったが、翌日、相手は愛というより刹那的享楽優先の結果だったとわかり、勝利は虹のように消え去った。人間はうっかりすると、すぐ前のめりになってしまう。
今の恋でも同じ轍を踏み、七色の勝負下着をつけようとしていた。
しかし、逢瀬の寸前で気が付いた。
これではいけない。。。
今回は、抑えめで、三色にしよう。RGB対応で。
R=赤は見込みなしで中止。G=グリーンはまだお互いの温度差があるから様子見で現状をキープ。B=青は確信が持てたとき、ゴーサインだ。
さて、どうなることか。。。 ~
性愛俳句の皮を被ったアフォリズム(=警句や箴言しんげん) といった趣があり、その余裕の感じに知的な川柳味が漂います。下五の「なりかける」がおもしろくて物語性のある結句になっていると思いました。
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来たぞ水陸両用の花嫁だ / 橋元デジタル
@digi_hashimoto
上五~中七の句跨りによって、前半の文脈に連続のパワー感が漲ります。それが水陸両用車の語感ともぴったりリンクしてきます。特殊でイカツいパワートレインを持つ車両のイメージから一転、花嫁。
花嫁まできて急に浮かんだのが、未来少年コナンのテレビ版で最後にダイス船長と結婚するモンスリーさんというキャラ。
成熟した大人で、体格がよくて、戦闘能力があって、勇気と優しさがあって、機転もききます。ダイス船長には勿体ないキャラ。
モンスリーさんのパワー感が水陸両用車のイメージともぴったりきます。
あと、未来少年コナンは船と飛行機(=水と空)の物語でもあるので、水陸両用車の水の部分と連想が結びついたのかもしれません。
コナンの大団円のように、掲句の花嫁も幸せになるのでしょう。
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→ 7に続く