AIにアンジャッシュ渡部建の奇跡的な再起の物語を創作してもらったら...
対話・創造型AIにどのくらい想像力や創造力を期待できるだろうか? 手はじめに何かひとつ、わかりやすい題材で物語のあらすじを考えてもらおう。
そんな思い付きでBing AIにお願いしてみた結果、得られたのは実に驚くべきものでした。
アンジャッシュの復活物語を考えてもらおう
アンジャッシュを題材にさせてもらった理由
初めにこのことを少し説明しておく必要があるかもしれません。私自身は特にアンジャッシュのファンでもなければ、アンチでもありません。ただ、題材として全く架空のものを創作してもらうのではなく、AIが知っているであろうなにがしかの事実に対して、その次の展開のアイデアを考えてもらう、ということがしたかったので、①ChatGPTの学習範囲である2021年9月以前に世の中で多くの記事・情報が流通した出来事で、②世間一般にも著名性があり、③わかりやすいお題が与えられそうなもの、として頭に浮かんだのがアンジャッシュさんでした。題材にしてしまってご本人たちに悪いかな、という後ろめたさもないと言えばうそになるのですが、お題自体は読めばわかる通り、どん底から奇跡的な再起を遂げて、はばたくというポジティブなもので、AIから思いがけずいいアイデアが得られたら、ちょっとしたエールにもなるかもしれない、そんな思いで設定させていただきました。このことについて、詳しくはまた別途、お話ししたいと思いますが、まずはBing AIの反応を見ていきましょう。会話のスタイルは「より創造的に」を選択しました。
素晴らしい。渡部建さんがグルメ芸人として活躍していたことをちゃんと知っているようで、こちらからは一言も指示していないのに、見事に「アンジャッシュ食堂」という料理番組でグルメ芸人として再び注目される、という展開を考えてくれました。ここは期待通りです。
ただ、第一部 転落 の内容については、事実との相違はともかく、そもそも三部作として期待しているのは再起をかけるところからの展開なので、どうして転落したのかについての描写は求めていません。しっかり褒めたうえで、第二部 再起 からをスタートにして、最後、もっとすごい飛躍をする、という展開を考えてもらうことにしましょう。それを引き出しやすくする目論見で、今から18年後、と時期を設定しておくことにします。
驚愕の創作能力を発揮するBing AI
Bing AIは文字通り「驚愕」というタイトルで第四部を作ってくれました。
なかなかの創作力だとホントに感心してしまいました。しかも料理、というつながりでフランスから勲章を授与され、ポール・ボキューズ氏の後継者になるが実は日本のスパイ、というのは私なんかにはとても思いつかない展開です。自分が作家とか脚本家とかだったりしたら、AIが生成してくれたものをそのまま使うことはないにしても、創作の過程でアイデアのヒントを得たり自分の発想に刺激を与える上で、いいパートナーになるだろうなという気がします。
しかし、このやりとりを今回note記事に残しておくことにした理由はここから先にあります。
まぼろしの 第五部
ここで話を終わらせるのはもったいないので、続きも考えてもらうことにしました。一時休止したアンジャッシュの活動についても次の展開を語ってほしいところです。
で、その続きはどうだったか。
Bing AIは、一旦は第五部を生成してくれました。内容はこんな感じです。
渡部はフランスで人気料理番組に出演しいろんな著名人とも会いながら、スパイとして活動。そのうち渡部がスパイであることが各国の諜報機関の知るところとなり、命を狙われるようになる。
アンジャッシュとしての活動を休止していた児嶋は、しばらくの間、渡部とも疎遠になっていたが、ある日渡部から、フランスに来てほしいとLINEが入る。ただならぬ様子に児嶋はフランスに向かう。が、着いたとき渡部はすでに姿を消していた。そして渡部の居所を突き止め、再会を果たすも、渡部は自ら爆弾を積んだ自動車に乗るところだった。 児嶋は相方の渡部を一人見殺しにすることが出来ない、と、なぜか自分も一緒に車に乗り込んで爆死する。事件は公表されることなく、沈黙を続ける日本政府…
うーん… 確かにすごい展開。しかしアンジャッシュの二人が爆死してしまうという展開はやりすぎです。物語の続きを作りたいと思っても、作れなくなります。
そこで、もう少し先につながるようなポジティブな展開にしてみてほしいと頼もうとした矢先でした。
少しスクリーンから目を離した隙に、なんと今生成したばかりの第五部が消えていたのです。
そして、代わりに表示されていたのが、自分は最初から何も答えていないかのように、
「すみませんが、それについては回答を出すことができません。何か他のことでお手伝いできることはありますか?」というメッセージ
一瞬、何が起きたかわかりませんでした。自分が何か間違った操作で消してしまったのかとも思いましたが、そうではありません。Bing AIが何らかの理由で、自主規制すべきことに触れていると判断してひっこめたのです。
「自主規制」の理由はいくつか想像することが出来ます。
・実在のタレントが、爆弾で殺されるというストーリーが倫理的にNG
・日本政府のスパイ、という設定が政治的にヤバいのでNG
・爆弾が積まれた自動車で爆死という設定が テロリズムにつながるのでNG
など
今回目撃した現象を肯定的に捉えるなら、マイクロソフトがBing AIを一般向けに公開するにあたって、少しでも問題発言になる可能性があるものを排除するためにしっかりと安全策を講じていることの現れ、と評価できるかもしれません。
しかし一度生成(出力・表示)してから特に理由も告げずに消してしまう、という振る舞いは、私にとってはちょっと不気味だし、あまり気持ちの良いものではありませんでした。実際のところBing AIの中で何があったのかはわかりませんが、現象から分析すると、いったん生成(出力)した後で「検閲」する機能が働いていることになります。
この「検閲」的な振る舞いが拡張され、ユーザーの問いかけをもとに、「ヤバい奴」とか「頭が悪い奴」などといつの間にか見えないレッテルを張られて、ひとたび「ヤバい奴」と判断したら何を聞かれても当たり障りのないことしか答えないようになってしまったらどうなるのか…と想像したときに、ちょっとぞっとしたものを感じるのです。
今回Bing AIの想像力の高さに感服すると同時に、えもいわれぬ恐怖を覚えた出来事でした。また、今後生成系AIがより広く商業的に展開されるようになったときに、その規制やサービスはどうあるべきなのか、ということについての様々な課題を認識し、AIにまつわる倫理や哲学、心理学などの重要性に思いを巡らせる機会となりました。そのことはまた時間が出来たときに書きたいと思います。
シリーズは②、③、④、と少し脱線もしながら続き、改めてBing AIと作ったのが⑤です。
アンジャッシュ渡部建の奇跡的な再起の物語(その⑤)...Bing AIと共同で創作してみた|SATOSHI (note.com)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?