【救急集中治療トピックス】くも膜下出血と神経集中治療〜遅発性脳虚血のモニタリング②:重症編〜
■ はじめに
以下の記事で、
意識が良い、くも膜下出血(aSAH: subarachnoid hemorrhage)の患者さん
の遅発性脳虚血(DCI : delayed cerebral ischemia)の警戒方法を紹介しました。
https://note.com/satoshi_egawa/n/n37795da9dc3f
aSAHの患者さんは重症度に関わらず、
神経集中治療室(Neuro ICU)で14日間しっかり診ていきたいものですね。
それでは、次に意識障害がある患者さんの診察方法について説明します。
■様々なモニタリングを駆使して、DCIを警戒する:MMM
重症であれば当然ですが...
意識障害のため神経所見の信頼性が落ちます。
失語の評価はもちろん、麻痺の評価も難しい場合があります。
その際は、複数のモニタリングを用いて、脳の状態を診ていきます。
神経集中治療の世界では、この複数のモニタリングの手法を
Multimodality Monitoring(MMM)と呼びます。
どうしても、一つの指標では確実にDCIの診断ができないため、
複数の手法で診断率を上げるという考えです。
最近では、
脳波(EEG)
経頭蓋エコー(TCCFI:Transcranial-Color Flow Imaging)
頭蓋内圧モニター(ICP : Intracranial pressure)
自動瞳孔計(NPi® : Neurological Pupil index)
近赤外分光分析法(NIRS:Near Infrared Spectroscopy)
の有益性が報告されています。
特に有用と感じるのはTCCFI やEEG です。
TCCFIでは12時間ごとに中大脳動脈の血流速度を測りますので、すべての脳血管ではないですが、ある程度DCI評価が可能です。
ベッドサイドで迅速にいつでも行えるという利点があります。
血流速度が上昇した際は、DCIが発生しているかもしれませんので、
要注意です。
EEGでは、DCIを認めた際、アルファ波が消失して、デルタ波などの徐波が増えるという特性を捉えることができます。
私のNeuro ICUでは意識障害があるaSAHの患者さんは脳波モニタリングを
継続して、DCIの予兆を捉える努力をしています。
■最後に
さて、今回は重要aSAHの患者さんのDCIの警戒方法を簡単ですが、
紹介しました。
MMMをしていれば、意識障害がある患者さんの神経所見を取らなくて良いと言うことでは、決してありません。
微細な変化もモニタリングの一環ですので、神経所見とMMMを合わせて経過観察しましょう!
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