【救急集中治療関係者必見】神経集中治療に役立つ知識〜mFisherスケール; aSAH〜


■ 最初に


さて、ここ最近はくも膜下出血(aSAH : subarachnoid hemorrhage)関連が多いですが、もう少しお付き合いください。

以下の記事で遅発性脳虚血(DCI : delayed cerebral ischemia)
のモニタリング方法について解説しました。
https://note.com/satoshi_egawa/n/n37795da9dc3f

今回はDCI のリスクを見極める簡単な方法を解説します。

それに応じて、神経所見をとる頻度も変わってきますので、大切です。

■ DCI予測スケール

DCI発生のリスクを予想するために有用なスケールがあります。

modified Fisher スケールと呼ばれていますが、私たちも必ずスコアリングしており、臨床に生かしています。

modified Fisher スケール

■modified Fisher スケール

これは、

“くも膜下出血の厚さ”と”脳室内出血の有無”
によりCT所見を4段階に分けます。

図に示す通り、
DCIのリスクは1 < 2≒3 < 4のイメージとなります。

■ 実際の使用方法

当然ですがmodified Fisherスケールのグレードが上がるにつれて、
神経所見の介入の割合が増え、
脳機能モニタリングの種類も増えていきます。

一例ですが、自施設では、
modified Fisherスケール グレード1
であれば、
4-6時間程度に最低限1回神経所見を取り、
1日1回経頭蓋エコー(TCCFI:Transcranial-Color Flow Imaging)
を行います。

modified Fisher スケール グレード2、3
であれば、
神経所見をとる回数を2-4時間に1回程度に増やし、
TCCFIも1日1回行う
といった感じです。

modified Fisher スケール グレード4
の場合、
神経所見をとる回数は1−2時間に1回
と増えます。
ただし、意識障害の程度も強いことが多く、TCCFIの回数も増やさなければ客観的に異常所見を追う事ができません。
1日2回ぐらいはTCCFI で脳血流を評価しています。

また、意識障害がある患者では、
脳波でδ波などの徐波が増えてこないか?
新規のPDs(周期性発射)やRDA(律動的デルタ活動)を認めていないか?
などに注意することで事前に遅発性脳虚血の発生を疑うことができるため、脳波モニタリングの出番になります。

※上記のPDsやRDAについては、今後解説していきますが、
 ご興味ある方は以下のリンクを参考ご参照ください。
   ↓ ↓
「神経救急の脳科学」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscn/47/1/47_35/_pdf/-char/ja



■ まとめ

なんとなくDCIが怖いから安静するのではなく、
しっかりとリスク評価と言語化を行うことで、
適切に遅発性脳虚血を警戒することができます。

また、メリットはそれだけではありません。
リスクを評価し、さらに適切にモニタリングしていることで、
リハビリを安全に行うことができるという利点もあります。

繰り返しになりますが、グレード4などになると、リスクが高いから、とりあえず安静にしておきたいという気持ちはわかります。

しかし、その分離床の機会も減ります。

実は、この辺りのタイミング(離床して良い?まだ待つべき?)
をしっかりと見極めるのも神経集中治療医の大事な仕事です。

今回の内容をもっと知りたい方は、
PMID: 30094030のFig. 4を参考にしてみてください。



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