絶対大丈夫。…多分。
どうも専務佐藤でございます。
当館、おおぎ荘の受付には甲子園優勝監督やプロ野球選手のサインが多々あります。
私が元高校球児でして、高校時代の監督さんが野球関係の方に紹介してくださったり一緒に泊まって下さったりでいただいたものばかりです。
実を言いますと監督さんが教え子のプロ野球選手に書かせたりしてお土産として持って来てくださったりで、当館にいらっしゃった事が無いのにおおぎ荘さんへと書いてくださって。さもプロ野球選手がいっぱい泊まってますって感じで飾ってます。ちょっとしたキタキタ詐欺です。
なかでも一番目立つとこに置いてあるサインがヤクルトスワローズの主砲、村上宗隆選手のサインです。知名度も凄くてお客様もすごく興味深々に見てくれます。
「村上選手来たんですか?」
とよく聞かれます。2日に1回は聞かれます。
そんな時、私はこう答えます。
「いや、来たこと無いんですけど実は村上は僕の後輩なんですよー!」
お客様「へー凄い!」
その後、私はこう言います。
「まあ会った事無いですし、先輩って言い張ってるだけなんですけどねー。ハハハー!」
はい。これで会話のつかみはバッチリです。あとはもうその後例えば宿の周辺スポットでどこかいい場所ありますか?とか聞かれましたら
「宝くじが当たると言われてる小国両神社なんかどうですか?金運アップするらしいですよ。僕も毎年初詣行ってるんです。一回も当たった事無いんですけどね。ハッハッハ!」
はい。鉄板で笑ってもらえます。
景色がいい所ありますか?って聞かれましたら
「車で30分ほどの所に押戸石の丘って場所があります。景色はもちろん素晴らしいですが神秘的なパワーが集まってるパワースポットだそうです。そこに挟み岩って大きい岩がありましてこの岩は正直者は通れて嘘つきは挟まれるらしいんですよ。で、正直者の僕も行って試したんですよ。どうなったと思います?10分ぐらい挟まれて抜けなくなりました。ハッハッハー!」
はい。こんな感じで受付漫談をいつもしております。若干、高田純次チックな漫談してます。
で、まあさっきですよ。ほんの3時間前ほど。出来たてホヤホヤのエピソードなんですけどね。
素泊まりプランでいらっしゃったお客様3名様。男性3名ですね。20代の皆さん明るい方々でしてね。
遅くなるとのご連絡いただいてましたし、食事も付いていないプランなのでどこかで晩御飯食べて来られてゆっくりでいいですよーって事で20時30分くらいにチェックインされました。
駐車場に入って開口一番「遅くなってすいません!」とおっしゃってくださって。
いやいや全然。
そんな。
遅くなっていいですよってこっちが言ってたのに。そんな言ってくださるだけでお客様の好感度爆上がりです。
それで受付で記帳されてるときに1人が
「あっ!村上のサイン!!!!」
とけっこう大きな声で言われたんですね。
お客様「ヤベー!村上のサインある!俺めっちゃヤクルトファンでそのなかでも村上が一番好きなんすよ!えっ?来たんすか?」
もうシメシメと思いましたね。鉄板トークがもうお口の発射台に乗りました。
私「いや実は来た事無いんですけど、村上君は僕の高校の野球部の後輩なんですよー!まあ会った事も無いんですけど先輩って言い張ってるんですけどね!ハハッ!」
よし、これでつかみはオッケーかなって思ったんです。笑ってくれるかなって。でもその彼、笑わず凄い目をキラキラしちゃって。
お客様「すげー!!!名門じゃないっすか!それにあのサインも甲子園で優勝してる監督じゃないっすか!ヤベー!」
もうホント思った以上に食い付きが凄くて嬉しかったんです。
で。受付にサインボールを飾ってるんです。村上選手の直筆サインボール。2019新人王って書いてるサインボール。全然触っていいですし触れるように置いてあるんですけど。お客様がそれを見て。
「このボールって直筆っすか?触っていいですか?持っていいですか?」
私「どうぞどうぞ!堪能してください!」
お客様「ヤベー!村上が触ったボール触ってる!」
って。
うん。まあね。まあそうなんだけどね。どっちかっていうと俺が2年間そのボールに触ってるから村上君より俺の風味の方が強いけどね。村上君は隠し味程度でほとんど俺の汗が染み込んでるボールなんだよね。それ。って思ってました。
そしたらそのお客様が
「俺、野球やった事無いんすよね。見るのが好きで。ちなみに4シームってどう握るんですか?」
って村上選手の直筆新人王記念サインボールを持って握り方を聞いてきたんですね。
「あー、こうですね。」
って村上選手の直筆新人王記念サインボールを受け取って実演したんですね。でお客様にサインボールをまたお渡しして。
お客様「こうっすか?」
私「親指は折り畳む感じで。あーそうそう。」
お客様「2シームってどう投げるんすか?」
私「ボールの縫い目の違う所を握るんですけど投げ方は真っ直ぐと一緒ですよ。」
お客様「こうっすか?」
私「ですね。あーいいっすね!」
お客様「すげー!スライダーは…
この辺で私、気付きましたね。
なんか俺、凄い野球選手に見られてないっ!?って。
イヤイヤイヤイヤ。
違う違う違う。
俺、高校2年生でマネージャーになったからね!選手じゃ無理って監督に言われてそのあとはスコアブックの書き方練習してたから!
野球部時代、後半、ボールよりボールペン握ってる時間の方が長かったから!
高校通算出塁率10割とかたまに自慢してるけど練習試合で1死2、3塁の場面で思い出代打として出させてもらったらまさかの敬遠されての1打席だけだから!
監督に「これがお前の最後の打席だから思いっきりフルスイングしてこい!」と背中を押されてちょっと涙ぐみながら打席向かっての結果、敬遠だからね!振っても無いから!
あいたー!完全に言いそびれた。
お客様、目キラキラして変化球の投げ方聞いて来るよ。
そして残された2人のお客様はスマホ見てるよ。ここ圏外なのに。
野球熱に燃えてるお客様は今度は縦カットの投げ方を聞いて来られて。
???。いや縦カットって何よ!?髪型?北の将軍の髪型の事!?
「縦カットも有効ですけどやっぱりスプリットが使えますよ。」
て何とか返答を絞り出して村上選手新人王記念サインボールを人差し指と中指で挟んでドヤ顔してみました。使えるってどこで?って思いながらボールをそっともとの場所に戻したらお客様がまたボールを持って
「ワンシームってどう握るんですか?」
って聞かれてさっきの状況に逆戻り。
ワ、ワンシーム?時代はすでに5Gなのにシームは4から2、そして1へと減る一方。
ごめんギブ。もう僕には分からないよ。村上君の先輩なんて軽はずみに言ってごめんよ。今、僕が分かるのは後ろで残された2人のお客様が早く部屋に入りたそうだって事だけ。
ワンシームはうやむやにして最後にナックルの握りを教えて部屋にご案内しました。これ覚えたら最強って言って。
そういえば前澤友作さんが宇宙からTwitterで宇宙に関する質問を募集しているそうです。
拝啓
前澤さん。宇宙での風景楽しく拝見させていただいております。
あの〜…ワンシームってどうやって投げるんですか?