焼き物のまち
マグカップが割れた。取っ手の部分。
レンジで炊飯するガラスの容器を上から落としてしまったから。
実家にいた頃から皿を落とさないように、割らないように、細心の注意を払ってきたというのに。一人暮らしを始めてたった数ヶ月での出来事だった。
私は焼き物の街で産まれた。本当に小さな頃はプラスチックのお皿ももちろん使っていたけれど、皿に関心を払うようになった頃にはマグカップもお茶碗も焼き物だった。
高校、大学の友人と話していて知ったこと。小学校や中学校の給食の食器が焼き物なのは一般的ではないということ。当時はそれが当たり前だったし、プラスチックや金属の器などは想像もしていなかった。
柄はあんまり覚えていないけれど、かわいかったという記憶だけある。
もちろん、落とせば割れる。特に小学生なんてすぐに皿を落とす生き物だから、誰が割ったなんてことはすぐに忘れ去られてしまうぐらい皿は割れた。
そんな環境にいたことは大変贅沢であったらしい。地元の文化に親しみを持てるようにという意図が恐らくあったのだろう。割れる皿にも予算が割かれているわけである。
おかげさまで皿は割れるものという認識はしっかり染み付いており、皿は丁寧に扱うようになった。その重みにも慣れているから、今でも当然のように焼き物を選ぶ。
ただ、今はもらいものだったり、100均だったりと地元のものから離れてしまっていることが寂しく感じられる。次に茶碗を買い換えるときにはぜひ地元の焼き物を物色したいものである。
それも、いずれは割れるのだが。
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