外神田(秋葉原)の再開発を考える~税金と区民財産の使い方に関する疑問~
外神田(秋葉原)のまちづくり・再開発に関して、6月5日から19日まで千代田区によって「外神田一丁目南部地区」に関する都市計画案の意見募集が行われています。
区の都市計画案には、税金と区民財産の使い方に疑問があります。
1 少なくとも80億円以上の税金が投入される
区の都市計画案に沿った事業計画概要では事業費は854億円とされています(千代田区「外神田一丁目南部地区のまちづくり説明会」資料24ページ)。
区の担当者は、「都心部における市街地再開発事業の補助の割合がだいたい10%」(2021年7月環境・まちづくり特別委員会)と説明しています。そうすると、少なくとも80億円以上の税金がこの再開発事業に投入されることになります。
千代田区の予算をみると、1年間の環境まちづくり費が65億2391万円です(令和5年6月5日付広報千代田7ページ)。秋葉原(外神田)の再開発事業に投入される税金は、千代田区の環境まちづくりの年間予算よりも高いのです。
事業費854億円とされていますが、これは千代田区が今後10年間で子育て支援や高齢者施策、施設整備などに活用する見込みの基金859億円とほぼ同じ規模です(令和5年6月5日付広報千代田7ページ)。
2 区有財産はどうなるのか
都市計画案の対象地域には、千代田清掃事務所、千代田万世会館(葬祭場)等のほかに区道が3本あります。区道3本は廃止されて、千代田清掃事務所、千代田万世会館等の公共施設は再開発によって建て替えられ、民間施設と同じ建物に組み込まれます。
区は、公共施設(道路等)の廃止によって、千代田清掃事務所や千代田万世会館(葬祭場)が建て替えられることが公益の実現だと考えているようです(千代田区「外神田一丁目南部地区のまちづくり説明会」資料18~19ページ)。
しかし、本当にそうでしょうか?
3 葬祭場付き観光ホテルが秋葉原に必要か
まず千代田万世会館(葬祭場)についてみると、令和3年度の実績で利用件数は年間で葬儀72件(1日1組としても利用率35.6%)です。この施設の運営のために区は指定管理料2238万5000円(令和3年度)の税金を投じています。区の資料でも「以前からのダウントレンドと相まって、今後も減少傾向になると予測される」とされています(「令和3年度 指定管理施設に係る事業報告概要」)。
驚くべきことに、区の都市計画案では、川沿いのエリアに観光ホテルと葬祭場が一緒に入る建物を建てることになっています(千代田区「外神田一丁目南部地区のまちづくり説明会」資料18ページ)。
葬祭場付き観光ホテルが秋葉原に本当に必要でしょうか。
にぎわい・観光のためのホテルと故人を偲び、送り出す葬祭場を一棟の建物にすることは、相互にマイナス効果しかありません。
4 公共施設が民間の共有建物に入る問題
公共施設が民間と同じ建物に入ると、たとえ公共施設であっても、区は単独で大規模修繕や改修の意思決定ができなくなります。
この公有財産白書では、公有財産の将来推計について、改修周期40年のパターンと、築後30年で大規模修繕を実施した場合、改修周期60年とするパターンが示されています(「千代田区公有財産白書」74ページ)。いずれのパターンでも、共有建物に公共施設が入れば、区が単独で改修や大規模修繕を決められなくなります。
区は現時点で双方のパターンを想定した費用推計を出すべきですが、これらの数字は示されていません。これでは公共施設の維持管理費用がどのようになるのかが分からず、区民が判断する材料がありません。
公共施設を民間との共有建物に入れる計画には、今後の修繕などで区が単独で意思決定できなくなるという問題があり、さらには維持管理費用が増えるリスクもあります。
5 千代田区は意見募集中(6月19日まで)
このように区の都市計画案は、税金(80億円以上)と区民財産(公共施設・区道)の使い方に疑問があります。
これは秋葉原だけでなく千代田区全体の問題です。
この都市計画案について、千代田区が6月19日まで意見を募集しています。ぜひみなさんのご意見を千代田区にお届けください。
<参考情報>
千代田区ホームページ「外神田一丁目地区のまちづくり」
東京新聞「アキバ再開発に地権者困惑 千代田区の超高層ビル建設 19日まで意見募る」(2023年6月11日)
秋葉原の未来を考える会ホームページ「より良い千代田区・秋葉原の
再開発を考える」
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