【前書き】元学科指導員のネタ帳
前書き
教習所の先生,といえば基本的には「教習車の助手席に乗って原則マンツーマンで運転技術を教える仕事」というイメージではないでしょうか。そのイメージも決して間違ってはいないですが,実際にはこの教習指導員という仕事は実に幅が広いのも事実です。多くの方が教習指導員の仕事に抱いているイメージというのは,旧制度のころの「技能指導員」のことを指すと思います。自動車の運転を教わる,という言葉のイメージはまさに実車を動かすことに対してのハウツーであり,交通ルールというのはある意味20年近く人生を歩んでくればそれなりのレベルでは知識があるものです。また,教習所の職員の中で実際に学科教習に従事している人の数というのはそれほど多くなく,実際にどんなことをしているのかあまりわからないまま日頃の業務に当たっている人もいるのが現実ではないでしょうか。
またそんな中,ひょんなことから学科指導員に指名をされて,何をどう話したらいいんだろう…と戸惑っってしまうケースも多いのかもしれません。実際僕のところにもよく後輩が「学科の◯番ってどんなこと話せばいいんですか?」「時間の配分が分かりません」「時間が足りなくなってしまいます」「間が持ちません」などなど…質問は絶えないようです。
よく誤解をされてしまうのですが,私は特別人前で喋ることが得意なわけではありません。これでも小さい頃はどちらかといえば引っ込み思案で,知らない人たちの輪の中に放り込まれると借りてきた猫のように大人しくなってしまうような典型な3兄弟の真ん中・次男坊でした。今でも出張講義などであまりに聴いている方の目が一斉にこちらに向くと,汗が止まらなくなってしまうものです。
ただし,話をするときには「自分のこと」なんて正直どうでもいいのです。人に話をするとき,何かを伝えようとするときに最も重要なのは話し手ではなく聞き手の方だと思います。学科の授業に限りませんが,私は「台本」というものは一切作成しません。スライドで投影するのも要点を軽く載せているだけで,その時の聞き手の反応や雰囲気に合わせて言葉を選んだり,場合によっては話す順番を入れ替えたり,話を省略したりすることもよくあることです。それだけを聞くと「なんだよ,話すのが結局得意なんじゃないか」と取られがちですが,そうではなくその時の雰囲気で言葉を選んだ方が相手の耳に届くような気がするので必死になっているだけのことです。そのためには当然自分の喋るペースをある程度は把握しておくことが大事でしょう。ときには話が脱線することもあると思います。脱線することも悪いことではないですし,場合によっては教習生から質問が飛んでくることもあります。質問が飛んでくる授業ほど雰囲気が素晴らしいものはないでしょう。そのときに「どこでこの雑談を切るか」と頭の中で計算しておくスキルも身につけておきましょう。では台本がない中でどのようにその計算をするのか。台本ほど細かく話す言葉を決めてはいませんが,「ここで説明をしておきたいこと」や「説明の裏付けになる統計や資料」を取り出しやすい位置に置いておくことが大切です。
自分が学科の授業を担当するときに何を手元に持っていくか。その答えは簡単です。学科教本1冊。基本的にはただこれだけです。(学科1番だけは例外的にもう1つ持っていくものがありますがそれはまた後ほど…)。道路交通法が改正されて学科教本が新版になると,僕もまた教習生と同じく真っ新な教本から全てがスタートします。僕の定番は蛍光ペンを2本と三色ボールペンを持って,家の近くのジョナ◯ンに向かうことでした。会社を出て早くて21時くらい。先輩や後輩と駐車場であれやこれやと教習談義をした後であれば22時くらいからでしょうか。自分が受験生の時ですらやったことはないのですが,ドリンクバーとちょっとしたアパタイザー,大体ポテトやチキンを注文してそれを片手に,教本を開いて今まで使っていた教本の書き込みを1つ1つ新しい教本に移していきます。その作業の中で改めて50分の時間の使い方や伝える内容,教本の触れ方や教習生への問いかけを改善したりしていました。だから単純に教本を移し替えるだけではなかったので,大体1週間~2週間くらい授業の合間や夜のファミレスで作業をしていた記憶があります。今思えば懐かしいものですね。
さて,前置きが長くなりました。このnoteは僕が学科教本に書き込んでいることであったり,学科の中でどんな話をしているかを単元ごとにまとめてみようと思っています。単純に項目ごとだとかなり短いものもありますので,神奈川県の学科番号に合わせてみようと思います。応急救護を除いて全部で23章になる感じですが,可能な限り時間を作ってアップしていこうと思いますので,ぜひお読みいただけたらと思います。
1段階
1:項目1 運転者の心得
2:項目2 信号に従うこと
3:項目3 標識・標示などに従うこと
4:項目4 車が通行するところ・通行してはいけないところ
5:項目5 緊急自動車などの優先
項目6 交差点などの通行・踏切
6:項目7 安全な速度と車間距離
項目14 オートマチック車の運転
7:項目8 歩行者の保護など
8:項目9 安全の確認と合図・警音器の使用
項目10 進路変更など
9:項目11 追い越し
項目12 行き違い
10:項目13 運転免許制度・交通反則通告制度
2段階
11:項目1 危険予測ディスカッション
15:項目4 死角と運転
16:項目5 適性検査結果に基づく行動分析
17:項目6 人間の能力と運転
18:項目7 車に働く自然の力と運転
19:項目8 悪条件下での運転
20:項目9 特徴的な事故と事故の悲惨さ
21:項目10 自動車の保守管理
22:項目11 駐車と停車
23:項目12 乗車と積載
項目13 けん引
24:項目14 交通事故のとき
項目15 自動車の所有者などの心得と保険制度
25:項目16 経路の設計
26:項目17 高速道路での運転