中二病の宇宙論 第二章
第二章 宇宙人に関する陰謀論の嘘とリアル
米軍と宇宙人の取引はありうるか?
エンタメとしての宇宙人コンテンツは「米軍が宇宙人と裏取引をしている」という話を中心に展開します。
最初に断言しておきます。いくら僕が中二病でも、この説には疑うべき点や嘘の証拠がたくさんあって、まじめに受け取る気にはなれません。よく言われている話をかいつまんでまとめるとこういうことですが、以下、真に受けてはいけません。
『1947年にニューメキシコ州のロズウェルにUFOが墜落して、米軍はUFOの残骸と宇宙人の死体を回収した。それを米軍基地に持ち帰ったことがきっかけで、アメリカ政府と宇宙人との秘密のコンタクトが始まる。最終的にアイゼンハワー大統領と宇宙人の間に協定が結ばれ、米軍は宇宙人の科学技術を取得する一方で、アメリカは宇宙人の地球での研究活動を黙認することになる。
宇宙人の技術をもとに米軍が最新兵器を開発する拠点がネバダ州にあるエリア51で、そこでは空飛ぶ円盤を開発しているチームもある。』
これがだいたいのUFOに関する陰謀論ストーリーです。もちろんUFOに関するテレビ番組で使われる情報の中にはそれが嘘だとわかっている情報もたくさん使われています。そもそも中二病の僕から見て、このストーリー全体のどこが怪しいかというと、
① この件の責任者は誰で、どんな組織が関与しているのか
② アメリカ大統領はなぜ宇宙人情報を隠す必要があるのか
③ 進んだUFOの科学力を供与されたはずのアメリカ軍では、なぜそれが兵器に応用されないのか
といった疑問に対する明快な答が思い浮かばない点です。
最初の疑問に関して言えば、アメリカ政府と宇宙人がファーストコンタクトをしてから現在までに70年の時間が過ぎているわけですが、それほど長い期間、いったいどのような秘密組織が、どのような組織体制で宇宙人との秘密協定をずっと守れているのかがまったくイメージできません。
よく言われるように大統領だけがその情報を知らされるという陰謀説がありますが、「じゃあそれを知らせる側の組織のトップは誰よ?」ということです。
CIAの秘密活動だと仮定しても、70年間これほど敵国から見て重要な武器開発情報がまったくロシアや中国、イスラエルの諜報機関のアンテナにかからないとは思えない。だからそんな組織はないと考えたほうが辻褄はあうのです。
なぜ宇宙人の存在を国民から隠す必要があるの?
そのような根本的な疑問を感じながらも、仮に百歩譲ってそういう組織的な活動があったとして、次にわからないのはなぜ宇宙人とコンタクトをしていることを歴代のアメリカ大統領がずっと秘密にしているのか?が疑問です。
これはUFO番組では「それを知らせると国民にパニックが起きるから」と説明しているものですが、さすがに70年もの期間があればちょっとずつ情報を小出しにしていくことでパニックはいくらでも和らげることができるはずです。
「いや、宇宙人が侵略目的で来ているのだとしたらどうだ?」
という考えはあります。われわれ人類にもうすぐ征服されるという終末が迫っているのであれば、それは国民の大半は直前まで知らないほうが幸せかもしれません。
しかしそれが真実だったら、70年後である今頃はもう地球など侵略されているはずです。侵略されていない以上、仮に地球に宇宙人が来ているとすれば状況証拠的にはその目的は侵略ではなく純粋な研究目的のはずです。少なくとも地球を侵略するほどの数の宇宙人は来ていないことが想像できます。
だとしたら、アメリカがそのことを秘密にする理由は何でしょう?
その疑問に対する一番論理的な説明は「秘密にしたほうが軍事的に有利だ」ということでしょう。
宇宙人と包括協定を結ぶことができて、宇宙人はアメリカ国内ではいくらでも研究活動を行っていい。これはおぞましい人体実験を含めての権限だと仮定します。
その一方で、宇宙人の持つ進んだ技術を軍用に独占研究する権利を米軍が確保できる。そうだとしたら、この取引は軍にとってはものすごく魅力的です。
軍という組織は、潜在的な敵国、つまりアメリカの場合はロシアや中国やイスラム勢力ということになりますが、それらの潜在敵国に対して相対的に優位な状況をいかに持続させるかに最大の関心があります。
かりに宇宙人の技術供与のおかげでボタンひとつで敵の戦闘機や核ミサイルを無力化する技術や、僕たちの科学力では作れないような超スピードで飛行したり向きを変えたりするUFOの製造技術が手に入るのであれば、それは確かに軍にとっては魅力的な話です。
でもこの説にもひとつ、大きな欠陥があります。その秘密協定から70年たって、なぜまだUFOのような反重力性能を持つ戦闘機が米軍に配備されていないのでしょうか。
これが三番目の疑問です。
秘密協定は結んだけど成果はなかった説
仮に宇宙人との秘密協定によって米軍にUFOの技術情報が供与されたのだとしたら、それがいまだに兵器に応用されていないその理由は何でしょうか。
可能性としては「結局、その原理が解明できていない」ということはありうると思います。1948年頃に米軍と宇宙人が秘密協定を結び、宇宙人は(米軍と戦闘することなく)平和裏に地球の生態系の研究や実験に専念することができる。一方で米軍は宇宙人のUFOが研究できるということになったとします。
でも実際は宇宙人はいじわるで「どうせこれの原理などお前たち人類にわかるわけないだろう」と考えながら、UFOをひとつ、米軍にくれてやったような話だったとしたらどうでしょう。
これはたとえば僕が古代のローマ時代にタイムスリップして、僕がもっているiPhoneをローマ皇帝が気に入って「巨額の黄金と引き換えにそれをくれよ」と頼まれたようなものです。
最初はローマ人の学者がそれを嬉嬉としながらいじったかもしれません。動画を見て驚いたり、音楽を聴いてうなづいたり。でもやがて電池が切れ、予備のバッテリーパックも使い切ったところで、iPhoneは動かなくなるでしょう。
そこでローマ人はiPhoneの分解を始めるわけですが、分解すればするほどその原理はまったくわからない。むしろ分解することでその後まったく使えなくなる。
ここで僕が古代のバクダッドで発見されたようなパルティアの電池をバッテリーパックにつなぐことで電池でiPhoneを再充電できることを古代人に教えてあげればもう少し長く研究を続けることができるかもしれません。しかしそれでもiPhoneの動作原理はローマ人には間違いなくこれっぽっちも解明できないでしょうし、その一部でも再現できるとは思えません。
これと同じことが起きていたのだとしたら、1950年代の初期にはもう米軍が研究できる宇宙人からもらったおもちゃは原理が解明できないことがわかったか、ないしはそのおもちゃは動かなくなってしまったことでしょう。
それでも最初の約束どおり、宇宙人の研究は黙認しなければいけない。なにしろその約束を反故にしてしまうと、宇宙人の高度なテクノロジーで仕返しをされることがわかったから、みたいな話なのかもしれません。
だから秘密の組織が細々と残って、大統領に、
「宇宙人にはいっさい手を出せないことになってます」
と申し送りをする。うん。このシナリオであれば中二の僕にも納得できるかもしれません。仮にそんなことが起きたのだとしたらです。
でも僕がロシアだったら、アメリカよりもずっといいオファーを考えて、宇宙人の技術をなんとか手にいれようとすると思いますよ。実際にはそんな国際謀略的な動きがあるという情報がまったく流れてこないところをみると、やっぱりこの推測には無理があるとしか思えないわけです。
アメリカ政府が公式に発表したUFO情報
さて、ここからは僕が「より本当には、UFO騒動の裏では実はこんなことが起きていたのではないのか?」と考える、僕の本当の考えを示していきたいと思います。
まずどこから話をするかというと、2004年にサンディエゴ沖で発生したニミッツ事件から話を始めます。
これはアメリカ海軍空母ニミッツの演習中にUFOが出現し、迎撃のために出撃したパイロットを翻弄した事件です。この事件のどこが重要かというと、アメリカ政府を通じて歴史上初めてその動画が正式に公表されているうえに、その映像をアメリカ海軍も本物の映像であることを公式に認めたからです。
事件が起きたのは2004年11月24日のこと。アメリカ西海岸サンディエゴ沖南西160キロメートルの海上で空母ニミッツを中心とする米艦隊が演習を行っていたときのことです。
後にウィングマンというコードネームで証言をした女性パイロットによれば、その日、彼女と上官の2機のF18がニミッツを離陸し訓練展開をしていました。雲ひとつ無い快晴の日中の飛行訓練でした。
そこに突如、緊迫した雰囲気で巡洋艦プリンストンの管制官から無線連絡がはいり、艦隊から100kmほど離れたある地点に向かうように指令が下ります。そして管制官は
「これは訓練ではなく、迎撃命令だ」
と言うのです。
攻撃対象は知らされずに2機はただ目的地点に到着します。そこで見えたものは海の中に何かがあり、海が渦を巻いている様子でした。
ウィングマンはそれを目視して、墜落事故の直後の現場に到着したのだと思ったそうです。しかし海の中の渦の上には不思議な物体が浮かんできました。翼も窓もない12メートルほどの大きさの楕円形の物体でした。
そこで上官が下降してその物体を確認に、ウィングマンは上空で待機する体制をとります。するとその米軍機に気づいたように楕円形の物体は空中に浮かび上がり、上官の戦闘機の目の前の高度まで浮きあがるとそこから加速して、2機の目前を通り過ぎはるか遠くの空に消えたといいます。
結局2機はニミッツに戻ろうとするのですがそこで驚くべき無線連絡がはいります。
「信じられないだろうが、その物体はいま、われわれ艦隊の目の前にいる」
というのです。遭遇地点から艦隊までの距離は100キロ。その距離をUFOは1分もかからずに移動したことになります。時速6000キロのスピードです。これはありとあらゆる航空機のスピードを超えた超高速です。
その瞬間に上官の頭をもうひとつの疑問がよぎったそうです。
「あいつらはどうやって艦隊の位置を知ったんだろう?」
つまり彼らが目撃した物体はあらゆる点でアメリカ軍の技術を超えていました。優秀なアメリカ海軍のパイロットが「あれが何にしろ地球のものではない」と断言するのです。
その後、ニミッツに戻り着艦した彼らと入れ替わりに、赤外線センサーとカメラを搭載した別の戦闘機が発艦します。赤外線センサーはUFOによって妨害されましたが、赤外線カメラは物体を撮影することに成功。これが現在公開されている映像データです。
そこに映っている物体は飛行原理的にわれわれの世界の航空機とはまったく異なります。
通常、赤外線カメラで撮影すると航空機のエンジン付近では熱が映ります。ロケットなら噴射口が同じように熱を発します。ところがこの物体には何も熱源がない。翼も無い。そのように飛行原理に反している物体が艦隊の上空6000メートルを飛行していたのです。
公式に目撃されたUFOの性能は?
海軍が認めたのはニミッツ事件以外に2015年に大西洋沖で発生したとされる事象を加えた合計で3つの動画映像の中身で、海軍報道官はこれらの物体をUFOとは呼ばずUAP(未確認航空現象)と呼んでいると形容しました。
なぜそのような情報公開が起きたのか、その経緯もわかっています。
アメリカ国防総省は2007年から2012年にかけて25億円もの予算を投入しAATIP(Advanced Aerospace Threat Identification Program、先進航空脅威識別プログラム)を立ち上げました。これはプロジェクトブルーブックなどの米軍のUFO研究プログラムの現代版です。
これまでUFO肯定派に対するアメリカの公式見解は「UFOは観測気球や金星の見間違いである」に始まり、やがて「UFOの正体は米軍が極秘に開発中のステルス兵器だ。情報が隠蔽されその存在を否定するのは、単にそれが軍事機密だったからだ」と説明されてきました。これがUFO現象の歴史です。
にもかかわらずプロジェクトサインからAATIPまで米軍が何度も公式なUFO研究プログラムを立ち上げているのは、事実として正体不明の飛行物体に米軍が過去70年間、繰り返し遭遇しているからなのです。
2004年のニミッツ事件もそのひとつで、映像に収められた飛行物体はサンディエゴ沖の演習での遭遇事件だけの接触ではなく、そこからニミッツが中東の湾岸エリアまでイラク戦争で実戦配備される間中、謎の物体はずっと米軍艦隊を追跡してきたというのです。
公開された映像に映ったその物体は「レーダーに映る」、つまり金属などの実体を伴った物質で、迎撃の戦闘機を認識すると海中に潜った状態からありえないスピードで空中に浮上し、さらには急激に向きを変え100キロ離れた艦隊の目の前に一瞬で到達したといいます。
航空機の専門家がこれらの映像を前提に指摘した点として、このUAPには地球上の技術とは明らかに異なる5つの動作的特徴が見られるといいます。それは、
① 反重力、つまり航空機のような揚力もロケットのような推進力もなく宙に浮くことができる
② 瞬間的な加速、つまり極めて短時間に超スピードに到達できる
③ 超音速での移動、それもソニックブームと呼ばれる破壊的な衝撃波を発生させずに移動することができる
④ 低観測性、つまりレーダーやカメラから消えることができる
⑤ 高速移動、空気中だけでなく水中を含めて地球上のテクノロジーでは考えられない超スピードで移動できる
という僕たちが知っている科学原理的には理解しがたい飛行性能です。少なくとも常識的な航空力学に反した動きをしています。
そして、この件を目にした米軍関係者が口をそろえて言うことは、
「もし敵国がこのどれかひとつの技術でも持っていたら戦争における力関係は形勢が一変する」
ということです。そしてこの問題を放置すれば、
「いずれ何らかの問題が起きる恐れがある」
と関係者は口にします。
UAP情報を情報公開にまで漕ぎ着けた男たち
彼らが問題にしたのはこういった米軍の脅威となる現象が繰り返し確認されているにもかかわらずその報告が米軍の上層部に握りつぶされて大統領には伝わらないことでした。
そのことに業をにやしたAATIPの責任者ルイス・エリゾンドが抗議の辞任をした後、メロン財閥の一員であるクリス・メロン元国防次官補と手を組みアメリカ連邦議会にロビー活動を行いました。
エリゾントは現在行われているUAPについての情報公開活動の中心的人物です。AATIPの中枢にいた立場から、彼はこの3つの映像と同じような現象が数多く収集されているという事実を知っています。しかし守秘義務の壁があって彼はそれを口にできない。
「非常に多く起きている」
としかいえないのです。
そこで彼は目撃者に、もう一度、目撃情報を語ってもらうように働きかける活動を続けています。
クリス・メロンはメロン財閥一族の一員で、長年、アメリカの国防の秘密プロジェクトの予算を管理する裏方として働いてきました。
彼はエリア51で米軍のどのような秘密兵器の開発計画が進行しているかをすべて知っていた。だからこの映像に映っているものが米軍の秘密兵器ではないことが即座に理解できたそうです。
「9.11テロではそれほど高い技術力を持っていないテロリストがアメリカに甚大な被害を与えました」
クリス・メロンがそう語る背景には、まだアメリカが知らない技術が存在し、それが誰かの手にわたることについての危険性を心から心配しているからです。
ところがUFOとなるとまともな政治家や政府職員は頭から相手にしない。だからこそこの現状を変えなければいけないと強く感じたというのです。
この事態が動いたのは、彼らの呼びかけに真剣に対応した故ジョン・マケイン上院議員の功績です。マケイン上院議員は2008年のアメリカ大統領候補でもあった大物で、ベトナム戦争の英雄としても知られていました。
この軍を動かせる有力者の要請によって2004年のニミッツ事件の動画映像と2015年の大西洋沖でのUFO映像が国防総省から公開されました。これはアメリカ政府が史上初めて公表したUFO映像です。つまりこの動画は流出ではなく公式な情報公開だったのです。
ただしその内容についてしばらくの間、軍がコメントすることはありませんでした。それが2019年になって突然、アメリカ海軍がUAPだと公式に認めたのです。
なぜそうなったのか?ここからUFO目撃の歴史と、UFO隠蔽の歴史を逆に推理することができる手がかりが見つかると中二病の僕は思うのです。
なぜUFO事件は隠蔽されてきたのか?
何が起きてきたのか?
UFOの歴史に関しての仮定ですが、もし「ふたつの異なった出来事」が1940年代から今日まで「同時に」起きていたと仮定すると、実はすべての謎の辻褄があいます。そのふたつとは「フーファイター事件」と「ペーパークリップ作戦」です。それを詳しく説明していきましょう。
第一次世界大戦以降、飛行機が戦争や軍隊で重要な手段となった頃から、空の上ではパイロットたちによる不思議な目撃例が増加するようになります。
その目撃例は共通していて、空のうえで自分たちの飛行機の性能からは考えられない、非常に早い速度で飛ぶ能力をもっている飛行体をみかけたり、それに追いかけられたり、ないしは追いかけようとして簡単に振り切られたりという体験をしたという話です。
これを目撃したパイロットたちは謎の戦闘機「フーファイター」と呼ぶようになりました。その目撃証言から考えると、このフーファイターはニミッツの搭載艦のパイロットが2004年に目撃したUAPと呼ばれる飛行体と非常によく似ています。
第二次世界大戦末期には連合軍のパイロットがよくこのフーファイターをみかけ、当時はナチスドイツの秘密兵器ではないかと噂されたそうです。
その飛行物体は、その後も継続的に空軍パイロットや民間航空機のパイロットたちによって目撃されます。ベトナム戦争に派遣された米軍の現地部隊の間では「敵のヘリコプター」という隠語で呼ばれていたそうです。しかしその目撃情報は不思議なことに報告しても握りつぶされる状況が続くのです。
そして目撃を報告したパイロットは異動させられ、やがて航空機に搭乗できなくなります。そのことがわかると、大半のパイロットは空の上で何かを見ても、その目撃情報を語らなくなるわけです。
なぜこのようなことになったのでしょうか。
フーファイターが空の上に現実に存在していることは1940年代から軍の上層部は認識していました。この物体は米軍の核施設に特に関心をもつようで、原子力空母や核ミサイルなどの使用中に頻繁に出現することが確認されています。
しかしそれは明らかに敵対する大国のテクノロジーではなく、同時に米軍のテクノロジーでは性能的に対抗することができないものでした。地球上のものではないということです。
そしてその物体は米軍の近くを飛び回り何かを調査しているようですが、何らかの攻撃をしかけてくることはない。
米軍ではプロジェクトブルーブックという正式なUFO研究プロジェクトが立ち上がって17年間、UFOの調査を続けていて(これはガセではなく公式文書に残る事実です)、1969年に「脅威はない」と結論づけられてプロジェクトは解散します。
つまりフーファイターは正体不明でかつ地球ではない技術によって創られた何かだと断定されたうえで、潜在的な脅威ではあるが顕在化した脅威ではないということで、結論としては「放置せざるを得ない」状況にあったわけです。過去70年間ずっとです。
これがフーファイターという存在に対するアメリカ軍の(そしておそらく共産圏やイスラム圏の軍隊も同じ)方針だったのだと考えられます。
「だとしたら、そのような謎が存在することを大統領以下、アメリカの高官たちに報告すればいいだけの話ではないのか?」
そう思うところですが、別の理由から米軍はこれを隠蔽することにしたのです。この章の後半でお話するもうひとつまったく別の理由こそがこの問題の核心です。
それはともかく「フーファイター」に関して表向き米軍は、
「米ソ冷戦下の環境では国民のヒステリーを抑える必要がある」という理由をつけてこの現象についての情報が広まらないようにするための情報操作を行います。UFOを世論がバカにするように仕向けていくのです。
そして米軍内部ではUFO遭遇や目撃について報告をする者を「精神的に不安定で軍務に就けるには不適格である」と評価するようになります。こういった運用で、現場発の情報拡散をおさえこんできたわけです。
米軍が情報公開に方針転換することになった理由
このやり方で70年間、それなりにうまくいったのですが、近年、別の大問題が起きるようになりました。
2019年9月14日、サウジアラビアの石油施設がイエメンのフーシ派による10機のドローンでの攻撃を受けました。使用されたドローンは無人航空機型の機体で、1500kmの航続距離をもち、目標物に接近して自爆するという最新鋭の性能を持っていました。
このようにドローン兵器は近年着々と性能を上げ、自爆型に加えミサイルを発射できる攻撃型などさまざまな攻撃手法を身につけようとしているのです。
そして問題は、このようなドローン兵器がフーファイター(ないしはUAPと呼んでも同じですが)と混同されて、見過ごされてしまうリスクのほうが大きくなったということです。
そのように状況前提が変化した以上、もし米軍の士官がドローン兵器を目撃してもそれを上層部に報告することをためらうようになると、反米勢力やテロリストとの戦争で敵のテクノロジーの進歩を見逃すことになります。ドローンの軍事的危険性が高まってきているのです。
そこで米軍は方針を180度転換し、UFOではなくUAPとレッテルを貼りなおしたうえで、UAPについてはすべての軍人が速やかにその目撃情報を軍上層部へと伝えなければならないという通達を徹底させることにしたというのが実情のようです。
つまりひとつめのピースとしては、1940年代からずっと「フーファイター事件」がアメリカ軍にとっての悩みの種で、それを議論の遡上にのせないようにずっと見ないふりをしてきたというリアルな軍の現場の問題があったということです。
もうひとつ別の隠蔽の理由
ではなぜフーファイター(いまではそれをUAPと呼ぶわけですが)の存在を米軍は否定してきたのでしょう。まったく別の理由とは何だったのでしょう。それが同じ時期に平行して進行していた米軍による「ペーパークリップ作戦」です。
第二次世界大戦末期、ナチスドイツでは戦況を一変させる可能性がある新技術の研究に力をいれていました。そのひとつが核開発です。
核爆弾の開発ではドイツの科学者のほうがアメリカよりも先をいっていたという情報があります。イギリスの捕虜となったカイザー・ヴェルヘルム研究所(ナチスの原爆開発拠点)の科学者たちが原爆が日本で炸裂したことを知って「なぜドイツが作った原爆が日本に落ちたのか?」と驚いたという話があるくらいです。
都市伝説では1945年3月にドイツのチューリンゲンでナチスが原爆実験に成功したという説もありますが、実際にはどうでしょう。ドイツは核分裂理論の研究はアメリカよりも進んでいましたが、原爆開発に必要な材料が不足していました。
たとえばドイツでは手にはいらない重水をおさえるためにナチスはノルウェーに侵攻します。しかし重水工場で製造した重水はドイツに輸送される途中でレジスタンスによって爆破され、輸送船もろとも海に沈むことになり、結局原爆は完成できなかったようです。
さて原爆以外に、ドイツが進んでいた技術分野が新型の航空機です。V2ロケット、ジェット戦闘機などナチスが形勢逆転のために開発していたさまざまな新技術は、終戦を境に米ソが奪い合う秘密技術へと姿を変えます。
そこでアメリカが立案し実行したのがペーパークリップ作戦です。それはソ連よりも早く、ナチスドイツの重要な技術者たちをリクルートしてアメリカに連れて行くという大作戦です。
この作戦は「終戦時最大の火事場泥棒」と呼ばれるもので、数千人規模のドイツ人科学者が戦犯ではなく研究者の地位を約束されるとともにアメリカへと渡ることになりました。
中でも一番有名でかつ、ドイツ人科学者の地位をおしあげたのがロケット工学の権威であるフォン・ブラウン博士です。アメリカがアポロ計画で月まで到達することができたのはまさに、戦後のペーパークリップ作戦の一大成果でした。
ナチスの秘密技術としての全翼機
さて、その一方で、ナチスドイツの研究兵器の中に、そのような形では日の目をみなかったいくつもの技術があります。そしてそれらが1950年代にアメリカで民間人に目撃されたさまざまなUFO事件と酷似しているのです。
ひとつはホルテン兄弟が開発をすすめてきた全翼機です。当時新兵器だったジェットエンジンの性能を生かすためにはホルテン兄弟の技術が最適だと考えたヘルマン・ゲーリングが全翼機の開発計画を承認し、1945年には試作機ホルテンHo229が完成していました。
ホルテン兄弟はアメリカにはわたらなかったのですが、この開発に関係した技術者たちがアメリカに渡り、米軍の中で全翼機の開発を進めていたという証拠があります。
このホルテンHo229はスミソニアン博物館でみることができるのですが、それを見学した人が一様に思うことがあります。それは「B-2ステルス戦闘機と同じ形じゃないか」という感想です。
この全翼機とB-2ステルス戦闘機の開発については、この後、詳しく述べることにしますが、その前に、他のナチスの新技術についても触れておきたいと思います。
ナチスドイツの秘密開発兵器のうち、なんといってもUFOに近いものがヴィクトル・シャウベルガー博士が開発を担当していた円盤型兵器です。
シャウベルガー博士も戦後1958年までオーストリアにとどまりますが、この技術は弟子のミーテによって西側に移り、米軍の資金供与を通じてカナダの航空機会社でアブロカーの名前で試作されます。計画ではまさに空飛ぶ円盤として機能するはずだったのですが、試作品は結局60センチしか浮くことができず、計画はこの段階で廃棄されることになりました。
もうひとつ謎だといわれるものがディグロッケ(英語でのコードネームはベル)と呼ばれる釣鐘型の飛行兵器です。
断片的に伝わる都市伝説的な情報をまとめると、このディグロッケは高圧電流を用いることによって物体を空中に浮かせる研究から開発が進められたもので、オカルト兵器的には天才科学者テスラの研究領域にはいるもののひとつとして分類されます。
噂ではドイツでの研究中に、高圧電流に触れた科学者たちがみな感電死してしまい、それで研究が中断したのだという説もあります。
しかしこのディグロッケの技術もアメリカに渡り、その研究が続行されていたという目撃令もあるのです。
隠蔽されたのはナチスの軍事技術だった
つまりこういうことです。アメリカは終戦時にペーパークリップ作戦を発動して、数千人のナチスドイツの新兵器開発技術者をアメリカにつれてきた。その一部はミサイルの開発や核兵器の開発を担い、その成果も科学者として広く知られるようになった。
一方でまた別の一部は米軍の秘密兵器開発を担当し、その実体は軍の守秘義務の壁で世間には知られないまま研究が進められるようになった。
そして興味深いことに、彼らペーパークリップ作戦でスカウトされた旧ナチスドイツの研究者たちは、当初オハイオ州のライト・パターソン空軍基地に配属され、後にネバダ州のグルームレイク空軍基地へと異動するのです。
この名前を聞いてピンときた方は中二病の資格が十分にあると思います。何しろこれらの基地こそが、オカルトの世界で名高いUFO隠蔽の中心地だといわれているからです。
しかしこれらのUFO事件は、宇宙人とは別の角度で捉えてみるとまったく別の事件として認識することができます。
1947年に起きた有名なケネス・アーノルドによる空飛ぶ円盤目撃事件があります。これはフライングソーサーという名前が世に広まるきっかけとなった事件なのですが、実際のケネス・アーノルドの目撃証言を聞くと、彼が目撃した物体は全翼機の編隊だったことがわかります。
その直後に起きたのが有名なロズウェル事件。何かがニューメキシコ州ロズウェルの農場に墜落します。米軍があわてて回収に向かい、墜落した航空機ではない形をした何かはライト・パターソン空軍基地へと運ばれます。
UFO界隈ではその翌年の1948年にも同じニューメキシコ州でアズテック事件と呼ばれる類似のUFOの墜落事件が起きています。ひとことで言うと、この時期のUFOはよく墜落していたようです。
そしてそのことを考えるとどうしても中二脳が想像してしまうのは全翼機です。全翼機は空気抵抗が少なく軽量化できるという利点がある一方で、空中での機体の安定性が悪い。そのため設計が難しく、実用化がなかなか進みませんでした。
軍用機がプロペラ機からジェット機へと進化する過程で、秘密兵器として開発された全翼機がこの時期に何度も墜落事故をおこし、それを軍がビニールシートで覆い隠しながら回収したのだとしたら、この話はつじつまがあいます。
そんな武器開発事情を知らない地元ロズウェル陸軍飛行場の報道官が「空飛ぶ円盤を回収した」とプレスリリースを出したのですが、翌日に、ライト・パターソン空軍基地からの連絡で急遽真実がわかり、かん口令がひかれ、それで「回収したのは気象観測用の気球だった」という別の情報にすりかえられたと考えるならば、それは理解できる話です。
しかしアブロカーのような失敗に終わったナチス新兵器情報はその後広く情報公開されているにもかかわらず、ロズウェル事件はなぜ隠蔽されてきたのでしょうか。
その理由を考えると「全翼機は、その後もずっと開発が進行していたたからだ」というのが一番わかりやすい理由です。
全翼機は設計が難しいうえに安定性がわるく、それで何度も墜落事故を起こしている。それだけならそんなものは開発しなければいいのにと思うのですが、軍から見るとそれでも捨てがたい魅力があった。それが全翼機のステルス性です。
全翼機の研究は最近公開された情報によれば、その後、エリア51ことグルームレイク空軍基地に移されて、そこで1997年にB-2ステルス爆撃機として完成します。エリア51はそれ以外にもU-2偵察機のようなロシアに対する秘密兵器が開発された拠点であり、米軍が極秘にステルス戦闘機を開発していたというのも機密情報です。
だからこそケネス・アーノルドのUFO目撃に始まる一連のUFO事件は1947年からこれまでずっと秘匿され続けてきたというのが真相ではないでしょうか。
開発が進行中だからこそいまだに否定されること
さて、ディグロッケについても少し触れたいと思います。ナチスの秘密兵器で、電磁気の力で宙に浮く釣鐘型の物体がディグロッケですが、これについても目撃事例がいくつかあります。
有名なのは1965年にペンシルバニア州ケックスバーグ近郊で目撃された、釣鐘型のUFOが森の中に墜落する事件です。これも軍があわてて回収したという目撃情報がある事件ですが、状況証拠的にはどうもディグロッケとしか思えない。
実はそれ以外にも地表近くの空中に浮かぶ不可解な兵器を米軍が先導しながら移動させていたというような目撃例が報告されています。
その目撃された空中物体はどうやら故障していたようで、目撃した女性はその後、皮膚が赤くただれるようなやけどを負い、そのことでアメリカ政府を訴えたりもしています。もし本当だとしたら、X線ないしはガンマ線のような電磁波が漏れだしていたのでしょうか。
これがただのオカルト情報ではないかもしれないというのは、その後、アメリカ軍が似たような性能を持つ兵器を開発したようだという噂が何度も場所を変えて出てくるからです。
これはTR-3Bと呼ばれる三角形をした不思議な飛行兵器で、翼やジェットエンジンといった従来型の揚力発生装置や推進装置を持たずに飛行するという特徴があります。それは長くオカルトの世界での想像上の産物かと思われていましたが、最近、米軍がTR-3B関連の特許を出願したというのです。
もしディグロッケが戦後も研究されていて、兵器としては完成していないけれども何らかの用途で有望なためずっと研究開発が続いているのだとしたら、その情報を軍が隠している理由にはなります。
つまりまとめてみると、アメリカ国内でのUFO目撃事件には二通りあるということです。
ひとつはフーファイターと呼ばれる謎の飛行物体、UAPと米軍が呼ぶものです。これは僕たちの科学力では解明できない何かであると同時に、今のところ米軍に対しては無害な存在です。どうやらただ米軍を観察しているだけのように見えるため70年間放置されています。
そしてもうひとつがナチスドイツの技術からつながる、米軍の秘密兵器開発の情報。これが実験失敗による墜落などの事件において断片的に民間人に目撃され、それを米軍が隠匿してきたことがUFOのオカルト情報として広く流布されるようになったというものです。
そのように考えると中二病的には、世に言うUFO事件の正体はすっきりと解明できた気がするのですがどうでしょう。
UAPの正体は何か?
さて、この章の最後にUAP(ないしはフーファイター)の正体は何なのかを考えてみたいと思います。
詳しくは別の章で検討をしたいと思うのですが、アメリカの開示情報を前提に考えると、地球上のテクノロジーではない何かによって作られたものであるとしか考えようがない物体です。
つまり中二脳で考えれば「地球外からやってきた物体だ」と考えるべきです。
そしてその物体は侵略も攻撃もしない。そのことを考えるとUAPは地球外から来た観測装置だと考えるのが自然ではないでしょうか。
第一章で僕たちの文明もあと45年ぐらい後にはプロキシマ・ケンタウリを初めとして近隣の恒星系に探査機を送ることができる時代が来るという話をしました。あれと同じ考え方で、過去に地球に探査機を送った地球外文明があったのではないでしょうか。
そしてそれは地球だけではなくあらゆる近隣の天体に送られた。たとえばその星から半径300光年に存在する30万個ぐらいの恒星系すべてに送ったのかもしれません。
しかもこの装置は自律的なエネルギー供給装置と修復装置を備えていたとしたらどうでしょう。太陽系に送られた装置は太陽のエネルギーで活動ができる。そして太陽系内の惑星や衛星の材料を用いて劣化した部分は自分で修復できる。
そのような装置なら70年前に地球に来たのではなく、もっとずっと長く地球にとどまっていると考えることができます。1000年前かもしれませんし、10000万年前かもしれませんし、ひょっとしたら恐竜がいた1億年前かもしれません。
そうしてその地球への来訪が古い時代であればあるほど、その文明が僕たち地球人とのコンタクトに関心を持たない理由もなんとなく想像できるようになります。
でもこのUAPの正体についてのもっと詳細な検討は、考えだすと長くなりそうなのでもっと後の章で検討することにしたいと思うのです。