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すごい本を読んだ話

すごい本に出会った。大塚篤司先生が書かれた「世界最高のエビデンスでやさしく伝える 最新医学で一番正しい アトピーの治し方」という本だ。

この本は、皮膚科医の大塚先生が一般の方向けに、アトピーの治療方法を丁寧に解説した医療本です。

私は今までたくさんの医療本を読んできましたが、ここまでハイレベルの本に出会ったことは今までなかったです。ぜひ、多くの方に読んでもらいたいと思ったので、ここで少し紹介したいと思います。

科学的根拠に基づいた徹底的な解説

まず、特筆すべきことは、書籍内で紹介されている内容は徹底的に科学的根拠に基づいて書かれていることです。この治療は効く効かないと、大塚先生の主観で解説しているのではなく、過去の研究データに基づいて解説されています。105個もの論文データをもとに解説されていて、その引用文献の情報もしっかりと巻末に添付されています。これは大変に重要なことです。

実はこのようにしっかりと引用文献を添えて書かれた医療本というのは、今まで多くはありませんでした。どこまでが高い科学的エビデンスに基づいているのか、どこからが個人的な意見なのかが曖昧であったりして、正確性が高くない書籍も多くありました。

また、これらの科学的エビデンスをたくさん紹介しても、けっして難しくならないように、簡潔で平易な文章で、わかりやすい例えを豊富に入れて解説されていて、一般の方にも易しい本となっています。専門的知識がなくてもすらすら読めると思います。

民間療法を行う患者さんにも目を向けている

私が最も感嘆したのはこの点です。今までにも正確な科学的データで書かれた医療本は色々とあったのですが、大きく不足している点がありました。

それは民間療法にハマる方へのやさしいメッセージでした。

ネットに大量の医療情報が広がる現代では、多数の患者さんが標準治療以外の民間療法・代替療法にも興味を持ちます。患者さんの中には、それらを実際に試したり、大金を支払ってしまう人もいます。本当に効果があると信じきってしまっている方もいます。今まで見られた医療本では、この方達への十分な配慮が欠けていました。

治療が難しい病気で苦しむ患者さんが、標準治療以外に興味を持つことは極めて自然なことで、実際に色々と試してしまうことも十分にありえることです。しかし、標準治療を行う側の医師はその気持ちを十分に分かってあげていないことも多く、人によっては強い言葉で全否定してしまったり、そんなに頼るのはバカだとか責めたりしているものありました。その行為に至る気持ちをやさしく理解してあげられていないことで、結果的にそれがさらなる分断を生んで、さらに民間療法にハマるきっかけを作ってしまっていました。

この本では、本当に丁寧に丁寧に、そんな患者さんたちの思いに向き合ってから、代表的なアトピーの民間療法・代替療法を一つ一つ丁寧に解説して、それらを試すべきではないのは何故なのかを、やさしく解説されています。患者さんの気持ちに真に寄り添った本だと思いました。

散りばめられた思いあふれるストーリー

医療のデータはどうしても無味乾燥になりがちです。確率的にどちらが良いとかは、見方によっては冷たくも感じられたりします。科学的データよりも、個別の患者さんの体験の方が自分に近いと感じられて、受け入れやすかったりします。

そのため、近年注目されているのが、医療情報を伝える際に、患者さんの感情に響くストーリーを織り交ぜて伝える手段です。これはナラティブ・アプローチなどとも言われます。

大塚先生は実にうまくこの手法を使われています。患者さんの感情に響くストーリーが満載です。感情溢れるストーリーを読み進めるうちに、感動したり涙しながら、気づけば正しい治療について理解しているという体験をできるのではと思います。

この本が未来に繋がって欲しい

解説して来たように、この本はすごい本です。アトピー治療の決定版とも言えると思います。ぜひ、アトピーに悩む患者さん・ご家族の方はお読みになってもらいたいです。

また、アトピーではない他の病気で悩む患者さんも、ぜひ読んでみてもらいたいと思います。日本では、がんをはじめとした多くの難治性の病気で、民間療法・代替療法の問題があって、全く同じ問題の構図が広がっています。この本で解説されていることは、きっと他の病気で悩む患者さんにも参考になると思います。

医療者の方にもこの本を読んでもらいたいと思います。きっと、ネット社会の中で、民間療法・代替療法にハマってしまう患者さんと接していく上での、多くのヒントが得られると思います。

私が津川先生・勝俣先生と作って、近日発売するがんの本(世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった 最高のがん治療)もまさに同じアプローチで書いています。今求められているのは、このアプローチで書かれた医療本だと思っています。

患者さんに真にやさしい医療本が、他の疾患領域にもどんどん登場してくれたら、きっと本屋さんの医療本コーナーは素晴らしいものになるだろうなと思っています。本当に、未来に繋がって欲しい一冊を紹介させてもらいました。

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世界最高のエビデンスでやさしく伝える 最新医学で一番正しい アトピーの治し方


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大須賀 覚
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