複数の情報源を使うことの大切さ
さあ、始めていきましょう。
ヤンデル先生との往復書簡マガジンも、すでに13本目の記事になります。気がつけば随分ときたなと思います。
さて以前の私の記事では、嘘はやさしいという話をしました。
それに対してのヤンデル先生の返事はこちら
私の記事で出した荒削りの素材に、色を丁寧に塗ってくれています。そして、SNSで医療者が発信することの意味についても深めています。まだお読みで無い方は、ぜひ読んでみてください。
では、今回の話に入っていきたいと思います。
この記事では、医療情報収集では複数の情報源に頼ることが大事というお話をしたいと思います。
一つの情報源で完璧なのか?
SNSでこんな書き込みをよくみます。
「新型コロナの正しい情報を知りたければOO先生をフォローすれば完璧だ」
信頼できる一人の専門家を探す。そして、その人をフォローする。それで十分。そう考える人が結構います。でも、この方法は結構リスクがある方法です。
まず、信頼できる専門家を本当に探せているかです。不正確なことばかりをいう専門家をフォローしてしまったら、そこからは誤解の闇が待っています。
たとえ、良い専門家を上手く見つけたとしても、その人があなた個人に合った情報を流しているかはわかりませんし、時には間違ったことを言う可能性もあります。
正確な医療情報を手に入れるために大切なのは、複数の情報源に頼って、一つの情報源に依存しすぎないことです。
医療情報の入手方法
情報が溢れる現代で正確な医療情報をどう手に入れれば良いのか?
これには正確な一つの答えというのはありません。どの病気の情報を探すかにもよって変わります。
ここでは一つの例として、私が専門にしている「がん」の場合にオススメの方法をご紹介して、それを元に話を進めていきたいと思います。
ここに出したのが、私が考える2021年現在での、正確ながん情報の見つけ方です。
※イラスト提供:いらすとや
がん情報の場合では、5つの情報源に頼ることが大事だと思っています。
具体的には、
担当する医療者からの情報
政府・国際機関からの情報
学会・ガイドラインからの情報
SNSでの専門家からの情報
患者会からの情報
どれかだけで完璧というのはありません。それぞれには良い点と、悪い点があって、それぞれを合わせた時に、最も失敗せずに、必要な情報を手に入れることができると思っています。
大きな過ちを犯さない
SNS時代の医療情報収集でとても大事だと思っていることは、「大きな過ちを犯さないこと」です。
ネットや書籍にはいわゆるトンデモ情報が広がっています。健康に害を及ぼしてしまう可能性があるものや、一般的な治療を拒否して命の危険が及ぶような行動を取らせるものも存在します。
それらを信じてしまわないことが極めて重要です。
病院の医師から話を聞く。SNSの専門家の書き込みで勉強する。それは良いのですが、それが最も正確性の高い情報である「政府・国際機関からの情報」と乖離していないかをチェックする必要があります。なぜ、「政府・国際機関からの情報」は正確性が高いのかについては以前の記事も参考にしてください。
また、現時点で最も効果が高い治療を載せている「学会・ガイドラインからの情報」とも異なっていないかを見ることが望ましいです。ガイドラインとは現時点での最も良い治療方法が何かを、専門家達が検討してまとめた本で、最適治療のレシピ集のようなものです。
それらの正確性が極めて高い情報から乖離したことをいう専門家からは距離を置くことが、大きな過ちを犯さないために重要です。
病気の個人差を忘れない
大きな過ちを犯さないということの次に必要なのが、自分にあったわかりやすい情報を手に入れる方法です。
病気には個人差が大きくあります。また、健康維持でも個人差があります。一人一人に合った情報を手に入れることが大事で、そのためにはやはり主治医からしっかりと情報を手に入れるという基本をおろそかにしてはいけません。
同じ名前の病気でも、患者ごとで実際の治療は異なることが結構多いです。ネットで見た「OOにはこれが良い」的な、雑な情報ではなくて、細かくあなたを見てから決めた主治医の情報を重視することを忘れてはいけません。
読みやすい情報を探す
わかりやすい情報を探すことも大事なことです。いくら正確でも、専門的すぎるものは理解できず、有効に利用できません。
「学会・ガイドラインからの情報」とかは一般的に専門的すぎて、よくわからないことが多いです。「政府・国際機関の情報」も読み物としてはお固いものが多いです。
正確性を追求していくと、どうしても読みにくいものになっていきますので、致し方ないことです。
だからこそ、「SNSでの専門家の情報」とか「患者会の情報」とかも活用してもらって、患者目線で書いている情報にもアクセスして欲しいと思っています。
ただ、わかりやすくなるほど、今度は正確性の問題が出てきます。患者さん自身が発信している情報などは、同じ目線での情報だから良いのですが、時に不正確な情報も混ざってきます。
だからこそ、他情報と一致しているのか、大きく乖離していないかと見る必要があります。
情報源を絞りすぎない
一つに頼りすぎず。複数の情報源からバランスよく情報を仕入れていく。それが大きな過ちを犯さずに、わかりやすい情報を仕入れていくためには大事です。
主治医のお話をしっかりと聞いて。
時にはお固い政府機関の情報をチラ見して。
ワクチンを2倍にするとどうとか言う、SNSの医療者もみて。
同じ病気と闘っている患者さんの情報を見て。
何だか、随分と違うことを言っているなという人は、そっとフォローを外して。情報を仕入れていってもらえればと思います。
最後までお読みくださってありがとうございました。では、また次の記事でお会いしましょう!
追記)「正確ながん情報の見つけ方」の詳細が気になるという方は、以下の動画で解説していますので、ご覧になってみてください。