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「最高のがん治療」となぜつけたのか?

がん治療について解説した初の著書を4月2日に出版します。この本は、勝俣範之先生と津川友介先生と3人で執筆した共著となります。

書籍表紙

『世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった最高のがん治療』

実は、この本を作る中で、3人の執筆者と編集者のみんなで協議した中で、ものすごく意見が分かれて、揉めに揉めたところがありました。

それはタイトルでした。

この「最高のがん治療」というタイトルをどう思われたでしょうか?もし、あなたが医療者なら違和感を感じたかもしれません。医療本を良く読む方なら、何だか医師達が書いた本らしくないと思ったかもしれません。

このタイトルは医療者なら普通はつけないタイトルです。

なぜなら、「最高」という言葉を使うのを医療者はとにかく嫌うからです。確率が中心の世界で生きる我々は最高や絶対という治療を決めることが無理であることを知っています。そのため、このような言葉は使いません。

例えば、患者さんの説明で「これは最高の治療です」ということはありません。説明としては「これは最も治療効果が高くなる可能性のある治療です」となります。医療に絶対はなく、常に確率です。たとえ最もエビデンス(科学的証拠)のある治療でも、その人にとって最高の治療とはならずに、時には最悪の治療となることすらあります。あくまで、全体では良くなる確率が高いとしかいえません。

それなので、「最高」は科学的な本でつけられることは滅多になく、科学的でない書籍でよくつけられるタイトルでした。世に言われるイカサマ医療本と言われるもので良く見られました。

では、なぜ我々は最終的にこのタイトルにしたのかといえば、それはがん患者さんのためを思ってつけました。

患者さんが求めているタイトルは何か?

本書は患者目線にこだわりました。医療者としては何を説明したいかではなくて、患者は本当に何を知りたいか、何に困っているかを追求して、患者目線の情報をまとめました。

では、タイトルについても、医療者目線で良いのであろうか?医者にとって気持ちの良いタイトルをつけることで、本当に患者さんが求めている情報がこの本に載っていると伝わるのであろうか?そこを考えました。

我々は様々なことを調査しました。患者さんはどのようながん情報を探しているのか?どのようなタイトルの本にひかれるのか?

そこで気付いたのは、医療者と患者さんが持つ”言葉のギャップ”です。医療者が良いと思うタイトルというのは、患者さんにはものすごく弱く感じて、効果のない治療に思えてしまうという事実です。

患者さんが興味を持って、手に取るのは「最高」「最良」「治る」のような強いタイトルの医療本ばかりでした。「科学的に確率が高い」とか、「エビデンスレベルが高い」とかいう言葉ではない。

負け続けてきた標準治療の解説本

病院で行われる標準治療を解説する書籍というのは今までも色々とあったのですが、残念あがら患者さんに手に取ってもらうことはできませんでした。そこにはタイトルの弱さもあったと推測されました。逆に、売れに売れているイカサマ医療本のタイトルには、バッチリと患者さんの感覚にあった言葉が並んでいました。

もちろん、その事実は医療者も気づいていたことでした。そして、向こうが間違ったことをしているだけだと、傍観してきたわけです。しかし、その結果がどうなっているのかはアマゾンランキングを見ればわかります。多くの患者さんは怪しい書籍ばかりを手に取って、標準治療を解説した書籍は呼んでくれていなかった。その結果として、標準治療を放棄して、食事でがんを治そうとする患者さんがたくさん出てしまっていた。

もちろん、そのような怪しい本を法律で取り締まってくれれば良いのかもしれないですが、現実として行われずに、ずっときていて、これからも文句を言い続けて傍観して良いのであろうかと疑問を感じていました。

このまま、私たちはかっこつけていて、医療者に気持ちの良いタイトルをつけ続けることが正しいのか?たしかに、同業の医師や研究者に誤解されたくない、良く思われたいと気持ちはもちろんあって、だからタイトルをつけるときは悩みに悩みました。しかし、最終的に思ったのは、私たちが何をしたいのかと再考した時に、思ったのはがん患者さんに読んでもらうことです。

「最高のがん治療」に込めた思い

がん患者さんに手に取ってもらえなければ意味がない。がん書籍のコーナーに来た患者さんに、本当に手に取ってもらえるタイトルにしないと、この情報は伝わらないし、患者さんは救えない。

そこで、「最高のがん治療」というタイトルをつけました。煽りのようなタイトルで、イカサマ医療本に寄せたようなタイトルですが、手にとって中を見てもらえば、一切怪しい情報はありません。

もちろん、この書籍の中で私たちが「最高のがん治療」と呼んでいるのは、科学的に最も効果が高いとわかっている標準治療のことを言っています。医療者は最高とは言わないけど、患者さんがイメージする最高の治療はこれです。

最終的により多くの患者さんに、標準治療がなぜ最高の治療なのかを知ってもらうために、このタイトルがあります。

案の定、このタイトルを発表した直後から、医師や研究者から、あのタイトルは良くないとか、あれではまるでイカサマ本だと言われました。その批判は甘んじて受けます。それはおっしゃる通りです。

ただ、我々はその先を考えてつけたことだけは言わせてもらいたい。これが成功するかはわからないです。ただ言いたいのはカッコつけるのをやめて、がむしゃらに、本当に必要としている患者さんに正しい情報を届けようとしているということを伝えておきたいです。

何とか、このタイトルに込める思いが伝わって、多くの人に手に取ってもらえ、標準治療の大事さを知ってもらえればと願っています。

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『世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった最高のがん治療』

科学的根拠に基づいた、いちばん正しいがんの本! 「抗がん剤治療のパイオニア」「新薬開発の専門家」「医療データ分析の専門家」の3人が、現時点で最も効果が期待できるがんの治療法とは何かを可能な限りやさしく、かつ「トンデモ医療情報」が見分けられるほど詳しく説明。がん解説本の決定版!

目次抜粋

はじめに がんになったらどの治療法を信じればよいのか

第1章
「最高のがん治療」はどのように決められるのか

1万個に1個しか残らない! がん治療薬を選抜する4つのプロセス
「マウスに投与したら効いた!」を信用してはいけない
「新しい治療法であるほど効果が期待できる」わけではない
標準治療は「スーパーエリート」の治療法
「余命2年のところ5年も生きた奇跡の治療法」を信じてはいけない
ノーベル賞級の治療薬でも、個別の例だけ見ると効果を見誤る …など

第2章
「最高のがん治療」では何をするのか

効果を徹底的に検証された3つの標準治療
抗がん剤がまったく効かないがんはない
「日本での承認の遅れ」はわずか0.4年
「緩和ケア」は最後の手段ではなく、第4の治療法
「免疫細胞療法」とオプジーボはまったく別物
「免疫療法=副作用が少ない」は間違い …など

第3章
食事やサプリでがんは治るのか

糖質制限でがんは治るのか
「コーヒー浣腸」には死亡例も
治療後のがん患者さんがとるべき理想の食事とは
大腸がん患者さんは生存率をあげた食事とは?
「がんに効果あり」と言われている4つのサプリを検証する
サプリは抗がん剤の効果を弱める可能性がある …など

第4章
どうしてがんができるのか

タバコを吸わなくても、親ががんでなくとも、がんになる人がいる
がんの原因は「プログラムエラー」の蓄積
がんができる3大要因とは
偶然発生するがんが意外と多い
「がんになったのは過去の生活習慣のせい」は言い過ぎ …など

第5章
「トンデモ医療」はどうやって見分けるのか

教育レベルや収入が高い人ほど、怪しいがん治療法にだまされやすい
インターネット上の情報を信じ込んでしまう4つの理由
「本に書いてあるから正しい」と信じるのは危険
信頼できる専門家の2つの特徴
科学的根拠に基づいた8つの情報源
トンデモ医療を見分ける6つのポイント …など

第6章
どうやってがんを見つけるのか

がんが疑われる4つの症状
受けるべきがん検診はこの5つ
検診が有効ではないがんがある
「急速がん」は検診で見つけられないが、抗がん剤がよく効く
「超のんびりがん」は、見つけてもがんで亡くならない
前立腺がんの60%は進行しない …など

第7章
がんを防ぐために普段の生活で何ができるのか

がんになるリスクを上げる2つの食品
肥満はがんになるリスクを上げる
がんになるリスクを下げる5つの食品
お酒は少量なら体によい? 悪い?
運動は大腸がんと乳がんになるリスクを下げる
ストレスはがんを引き起こすのか? …など

おわりに この本は「情報のワクチン」である

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大須賀 覚
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