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若手がん研究者に賞を!

「受賞者は大須賀覚さんです。」

その言葉を聞いたときに、ドッという胸の高鳴りと、頬が熱くなるのを感じた。
立ち上がった私は、壇上に向かうものの、何となく足が地面についてないような感じがして、ふわふわしていた。

通路のそばに座っている同僚が「おめでとう」と声をかけてくれる。

しかし、こんな場面に慣れていないので、笑ったら良いのか、ガッツポーズでもするものなのか、いまいちわからない。結局、半笑いのような、なぜか微妙な顔をして壇上へと向かう。

偉い人から小さな賞状を受け取る。見た目には嬉しそうにはしていないが、本当は飛び跳ねるほど嬉しい。良かった。


これは私の大学院時代の思い出です。

がん研究を始めてから2年くらい経った頃、大学内の小さな発表会で、自分が行っている研究内容を紹介して、賞をもらいました。若手が対象の小さな賞で、副賞も大したものではなかったですけど、本当に嬉しかったのを、今でも鮮明に覚えています。

そして、何より安心したのを。



「俺はがんを治す。新しい薬を作る。」と意気込んで大学院に入ったけど、すぐにわかったのは自分はほとんど知識がないということでした。自分の無知に情けなくなりながら、指導教官の助けを得て、何とか研究を進めていました。

日々の中に満ちていたのは不安でした。

研究のやり方はこれであっているのか?
この研究で論文を出せるのか?
大学院を卒業できるのだろうか?

そして何より、
私の研究は本当に患者さんのためになるのか?


大学院生として研究をする私は。いつも不安を抱えて仕事をしていました。
研究は孤独や不安との戦いです。

学校のテストなら、すぐに答えが出るから、あっているか間違っているかはすぐにわかります。しかし、研究は全く違います。何が正解なのかを誰も知りません。研究ではまだわかっていないことを調べるので、当然先々の答えが何かをまだ知りません。

答えの見えない暗闇の中を、自分を信じてひたすらに進む。


この方向で正しいのか?
この辛く苦しい日々に意味はあるのか?
時には成果が出るまでに、何年も暗闇を進むこともあります。



「賞をもらって安心した」というのはそのためです。

「あなたの研究は素晴らしい。きっと患者さんのためになる」その言葉がどんなに嬉しいか。「私は間違っていなかった。よし、また研究を頑張ろう」と思える。



私は若手研究者を対象とした賞はとても大切だと思っています。研究というのがどのようなものかがまだまだ見えていない時に、賞をもらえることは本当に自信に繋がるし、その先の研究への大きな原動力となります。


ただ今の日本では、若手向けの賞がそんなに多くないのが現状です。少子高齢化が進み、日本経済が元気さを失う中で、研究の世界も資金力不足にあえいでいるからです。

研究費も大学助成金も削減。研究者のポストも激減。研究者の減少によって学会の運営費も低下。若手研究者向けの賞を盛大にやろうというのは簡単ではなくなってきています。

そんな中で、がん研究者の集まりである日本癌学会が一生懸命に若手の表彰をしようと頑張っています。昨年、大会長の佐谷秀行教授の号令の元で、若手がん研究者の表彰を実施するためクラファンを立ち上げ、それは大きな成功につながりました。私も微力ながら応援をさせてもらいました。

クラファンで集まったお金をもとにして、優れた研究成果を発表した65名の若手研究者に記念の盾と副賞を贈呈されました。それに励まされた若者がいっぱいいたと聞いています。本当に良かったです。昨年、ご支援してくださった方に本当に感謝しています。

とても素晴らしい企画だったからと、今年もクラファンが行われることとなり、つい先日に開始されました。


ぜひ、今年も成功して欲しいと心から思っています。私は全面的に応援したくて、この記事を書いています。

がん患者さんの手元に届く新薬。その種を作る人は若い研究者であることが多いです。経験豊富な研究者に指導を受けながら、若手研究者が一生懸命に手を動かす。そんな中で未来の希望の種は生まれます。

がん研究は未来を開くための希望です。それをつむぐ若手研究者たちを支えてあげて欲しいです。


かつての若かった頃の私が賞をもらったことが励みになって、それが今につながっているように。きっと、あなたの助けは、見知らぬ若者の背中をそっと押して、未来へと、患者さんの笑顔へとつながっていくと思っています。

物価高が直撃して、みんな大変な時ですので、資金援助をお願いするのも心苦しいですが、もし少しなら助けても良いよと思っていただける方がいたら、ぜひ若手がん研究者のためにご支援をいただければと思います。

どうか、よろしくお願い致します!

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