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500文字の建築試考「散歩的建築」

建築は散歩的な体験を促す役割をもつ

散歩を日課として日頃から続ける人は、毎日同じ道を、毎日同じ時間に、毎日同じような速さで歩いているであろう。
そのような散歩をするご年配の方を見て、
「いつも同じように散歩をして飽きないのかな」とか
「いつも同じように散歩をして暇なのかな」とか、
若者は勝手に思うことがある。
でも実はこの『毎日同じように』ということが、散歩にとってものすごく大事なことであることが、最近自分の中でようやくわかってきた。

毎日同じ道を散歩すると、日により異なる植物や陽の光によるまちの色の変化に気がつく。
毎日同じ時間に散歩をすると、季節によって違う太陽によって毎日異なる風景が生まれていることに気がつく。
毎日同じ速さで散歩をすると、日々歳を重ねる自分の身体の変化にも、風の強さの変化にも、他人の日常の変化にも気がつく。

毎日同じことをすると比較の軸が生まれ、「変化」に敏感になる
世界には無数の変化が生まれていて、すごく不確定なものである。

その不確定な「変化」に身を委ねることで新しい発見と感情を抱くことを、素晴らしい『散歩的な体験』とすると、建築にも同じ役割がある。

建築は動かない。
毎日同じようにそこにあるだけだが、世界の無数の変化に反応し、多様な表情を見せる。散歩のように「変化」による発見と感情を体験する楽しさを生むことが建築の役割の一つである。

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