見出し画像

500文字の建築試考「不確定が生むもの」

建築は不確定の中に生まれる

建築には必ず、使ってくれる利用者が存在する。
住宅には、その家に住む住人が。
コンサートホールには、音楽を聴きに来た観客が。
駅舎には、毎日のようにそこを使う通勤者が。

建築設計者は常にこの利用者のことを考え、この空間の中でどのような行動をするのか、この空間からどのような気持ちを受け取ってもらえるのかということを想像して設計している。
建築がどんな効果をもたらすのかということに思いを巡らせる。

しかし、この利用者という存在は、建築から効果を受け取る存在であるとともに、建築に不確定な効果を与える存在でもある

建築の中をどのように歩き、建築からどのような感情を感じ、どんな言葉を発して、どんな動きをするかまでは設計できない
私の尊敬する教授曰く、人間の行動や感情まで制限してしまう建築は、気味が悪く、怖い建築であると言う。

このような予想できない行動が、建築に様々な不確定な効果を与えるのだ。利用者は設計者が予想もしなかった行動をとり、様々な色、光、音、振動、熱、気持ちを与える。
「普通はそこに座らないだろう」とか「なんであえてそんな遠回りするの」とか、そんな気持ちにさせられる行動こそが建築に面白い発見を与える。

それでは建築はこの不確定な効果に対してどうあるべきか。

放っておいてもこの不確定な効果は建築に彩りを与える。
人間の動きが建築に光と陰の変化を与えたり、会話が建築内に響いて音と光と建築の交わりを与えたりするからだ。

それに加えて「徹底的に、不確定な効果に対して反応する建築」がこれからは面白い。
AIなどにより電子的にインタラクティブな反応を生み出すインスタレーションが最近の流行であるが、本来確定的であった建築が、利用者の不確定な要素によって動き出す姿を見られたら面白いと感じる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?