500文字の建築試考「見ることと感じること」
人間には五感が存在している。
見る・聞く・触れる・臭う・味わう。
その中でも人間の中で最も支配的な感覚は「見る=視覚」であることはよく言われている。
情報の8割を視覚から得ているとも言われており、様々なものを「見る」ことによって生活を成り立たせていると言ってもよい。
そんな「見る」重視の世の中では、人は外出をするときに見た目を気にするし、何か商品を売るときはパッケージにこだわる。
建築についても同じだ。
建築の見た目を気にして、形を作り、プロポーションに注意して、色、素材、大きさなどを決めていく。
最近の建築においてその流れは顕著で、「インスタ映え」などと呼ばれる建築や空間体験、インスタレーションなどが出てきた。
ただコロナ禍のなかで、視覚の体験の限界を感じ始めた。
zoomでの会議はどこか虚無感を持ち、
絶景の写真は数秒で消費され心に残らない。
視覚以外の刺激が少ないこのような時を過ごして、他の感覚への欲求がだんだん高まっていることを感じる。
最初に話した人間の五感のなかで唯一シャットダウンできるのが視覚だ。
目を瞑れば、視覚は失われる。
ただ、他の感覚は常時はたらいている。
匂い、音は常に感じている。
地球上に生きている限りどこかに接して過ごしている。
「見る」以外の「聞く・触れる・臭う・味わう」がはたらいてこそ、その先の第六感「感じる」が働き始める。
コロナ禍で「感じる」の機会がだんだん失われている。
この状況にいる時間は「感じる」の先を考える時間でもあるとも感じる。