500文字の建築試考「現象はintertwinから」
建築の現象を語る建築家の1人としてスティーブン・ホールがいる。
現在の私が研究対象としている人物だ。
もっともホールが現象、つまりphenomenonという単語を用いるときに必ずイメージしているのが、メルロ=ポンティの現象学である。
メルロ=ポンティの客体的身体と現象的身体に対する概念が、ホールが建築の思想を書き記したりスケッチに起こしたりする際に必ず元となっている。
もっともメルロ=ポンティはフッサールの現象学概念を元としながら発展させ、現象学をほぼ完成させたと言ってもいい人物である。
その概念は二項対立にあった世界において、フッサールの自然主義的態度、つまり意識か自然かという思考の二項対立的な枠組みを、根幹からゆるがし、自然ー身体ー自然の身体に重きを置き、新たな第3の次元を探ろうと試みた。
これがメルロ=ポンティの主著「知覚の現象学」につながる。
この身体の知覚こそがホールの建築の中心である。
「intertwin」とは「絡み合わせる」という意味であるが、ホールは建築に関する要素、空間、水、色、素材、自然、個人思想などを絡み合わせることによって人間の知覚に訴える建築をつくろうとしている。
近年、このような人間の知覚に訴える現象学的な建築は世界の主流の一つとなっているがその第一人者は紛れもなくホールであろう。
そのホールの研究を通して現象と人間の知覚の関係について考えていく。