蹴球邂逅録 〜エンヤ (韓国🇰🇷)〜
2017年6月中旬。
U-20W杯が韓国で開催されていた折、
友人がキャプテンを務めていた、ソウルに隣接するベッドタウン、
コヤン市をホームとするK3(4部相当)所属のコヤン・シチズンFCを訪れた。
当時のオーナー兼監督は、
元韓国代表DFにして、元Kリーグ最優秀レフェリーという
稀有な経歴を持つ、キム氏。
2008年にクラブを創設以来、
幾度も経営の危機に瀕しながらも、
自宅を抵当に入れ資金を工面したりと、
氏の並々ならぬ情熱と愛情で、なんとかここまでやって来た。
しかし、一難去って、また一難…。
2017年、クラブはさらなる問題に直面していた。
ホームゲームが行われる、約4万人収容の複合型スタジアムは、
従来、2部に所属していたコヤン・ザイクロFCが使用していたのだが、
経営陣の資金着服問題によりリーグ除籍処分となり、上からのお達しで、
代わりに、コヤン・シチズンFCが使用することになったのだった。
その結果、、、
ゴール裏10人足らずという集客の4部零細クラブにとって、
スタジアム使用料をどう減免してもらっても、毎試合、数十万円の赤字が
出てしまうという…。
前日に、マッコリを飲みながら、キム氏からそんなお話を伺って、
ホームゲームに臨んだのであった。
前半15分、ソレは起こった。
なんと、スタジアムに併設された結婚式場から、
突如として、エンヤ が流れてきたのだ。
どうやら、新郎新婦の登場のようである。
刹那、不覚にも、目頭が熱くなってしまった…。
それはきっと、、、
幾多の困難を乗り越えながら愛するチームを見守るキム氏の姿と、
手塩にかけて育てた愛娘を送り出しているであろう新婦の父親の姿が、
重なり合ってみえたからだったように思う…。
試合のほうは0-0のスコアレスドローで終わったが、
90分間に、1つの人生のゴールに出逢うことが出来た、
その晩のチャミスルは、しみじみと、五臓六腑に沁みわたるのだった。