先生記録 No.3 常勤講師一年目(1)
あっけなく「教員」への道が開けた3月末。
あっという間に4月が訪れて、社会人として初の仕事場へ。
採用自体は4月4日からとのことだったが、4月1日から新学期開始ということで「顔合わせに行っておこう」と教育委員会で言われ、1日に初出勤(?)。
いま思えば完全な無賃労働だが、その当時はそれにまったく気づかなかった。
こういうところから実は教員の労働問題の一端が見えていたと考えると、感慨深い。
緊張の初出勤。まずは校長室に常勤講師が集められ、無言の約30分。
事務員さんに呼ばれ、揃って職員室に入室し、挨拶。
講師経験者3名、社会人経験者1名、私を含む大卒2名、男ばかりの計6名が自己紹介を終える。
次に転勤の教諭が同じく自己紹介。
思えば、この時が教職のスタート。
初出勤から10年経った今でも、この時一緒に自己紹介をした講師の先生4名とは長期休暇の度に飲む仲だ。
今では全員が教諭となり、1人を除いて他の全員が妻帯者となった。
職員室での自己紹介を終えると、事務員さん(事務補助員、だったらしい)から事務手続を教えてもらい、出勤日ではないためこの日はおしまい。
帰るタイミングを伺っていると「ちょっといいか?」と教頭先生から声がかかり、そのまま校長室へ。
管理職2人と向き合うことに。
職員会議の様子を見ていると、校長先生はなんだかのんびりとしてハッキリしない印象。反対に教頭先生はすごくせっかちそうで、体育会系然とした雰囲気。
小さい校長と、平均以上に背の高い教頭という容姿も相まって、凸凹コンビのように感じた。
「出勤日じゃないのに申し訳ないけど、ちょっと聞きたいことがあって」
教頭が切り出し、視線で校長に続きを促した。
校長が口を開く。
「先生には担任を持って担当学年すべて、あるいは担当学年と他学年の一部の授業を受け持ってもらうか、あるいはサポーター教員の役についていただくか、どちらかになります。どちらを希望しますか?」
ほんの少し前に大学を卒業したばかりの私。
とりたてて教員になるための準備もしておらず、担任業務も授業づくりも、まったくの未経験。
本来ならば「サポーター教員ってなんですか?」と聞くべきところだが、その感覚すら麻痺し、半ば現実逃避気味に
「サポーターをやりたいです」
と答えていた。
なんとなく、「いろんな先生方の補助を行う」ような役割なのかなと考えつつ、私の教員生活の第一歩は常勤講師として「サポーター教員」をすることになった。