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世界を包含する空間と「情報」

 N大先生(N氏を密かに私はそう呼んでいた)と「時間と空間との諸相」について不定期に議論を交わしていた。その中で、近年の人工知能の急速な発達という現象から、時間という概念は空間の一側面を表しているに過ぎないという認識が我々の中に生まれ、この宇宙の空間は四次元以上あるということになりつつあった。更に空間や物の存在は全て単なる「情報」であって、次元という概念は我々が世界を理解する上での記述方法であって、本質は「情報」だ。世界は、この情報の変化の営みそのものであり、すべての情報は関連しあっている。単独で作用することはありえない。何故なら情報を個々に分離するには境界を規定する「情報」が必要だからだ。

 この様な感覚は、N大先生との対話の中で生まれた。ところが少し調べてみると、同じようなことを考えている人が世界中にいる事が分かった。Physical Review Lettersに掲載された投稿だから、まともな話だ。

From Planck Data to Planck Era: Observational Tests of Holographic Cosmology

Study reveals substantial evidence of holographic universe

英語なので読む気がしないのだが、自動翻訳された日本語訳を読んでの理解だと、この宇宙(世界)は二次元のホログラムから投影される立体みたいなもので、この考え方なら相対性理論と量子論や重力理論などの統一的な説明ができるというものらしい。

 この内容ではまだまだ甘い。物理学の論文では学術的に語らなければならない。実験観測事実との対比も必要だ。従って思い切った内容になり難いのだろう。N大先生との対話の中では、この様な制限はない。妄想で一向にかまわないのだ。納得できる説明であればよい。

 世界はホログラムでさえもない。単なる「情報」である。従って時間もない。ただここで言う「情報」とは、情報工学での用語にとどまらずもっと抽象化されたものである。その状態を表す媒体は勿論存在しない。物の状態で情報を規定する(例えば「0」「1」の状態を決めるようなこと)のではない。表現しようがないのだが、「その場に『情報』がある」状態である。ゲームの世界の中のマリオを考えると分かりやすい。知性を持ったマリオは自分の世界を規定しているハードディスクや半導体メモリに格納された「情報」がハードディスクの磁性体の状態や半導体メモリの中のトランジスタやコンデンサに蓄積された電荷の状態で決まっているということを知るのは非常に難しいであろう。マリオにとっては「我々が存在するという『情報』がある」としか言いようがないのである。

 ある意味空間もない。空間や世界(実体)は「情報」が展開された結果だ。時間概念の否定によって相対性理論と量子論との統一は非常に簡単になる、筈だ。また人間の自我、精神と物理法則との関係も説くことも可能だ。そのはずだ。

 となるとこの世には知的な生命は人間しかいないことになる。宇宙人(地球外『知的』生命体)は宇宙のどこにもいない。そして人間以外の生物には知性はない。あっても、昨今の人工知能程度。人間のような精神活動はない。

 科学が発達する前のデカルト以前の考え方に戻っているみたいだ。

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