告白され、ふられ、告白され、ふる
レストランで単発で厨房アルバイトをした。
この現場はもう何度も入れていただいてるので
親交は全くなくても顔は知れてた。
基本は言われたことに素早く反応し
対応し、準備し、対応しの繰り返しだ。
良かれと思って先走ってもシェフ達の気まぐれの幅が
大きいので失敗して怒られてるバイトを何度も見てきた。
そんな中、ホールに料理を直接提供するのは
私達、単発アルバイトの業務の一つだ。
ホールの方は色んな方がいる。
いつもにっこりと笑顔をくれるBさん。
素早く料理を褒めて持っていくFさん。
真面目な顔で真剣にお皿を確認していく
ちょっと動きの遅いGさん。
そんな中、全く印象になかったホール社員の方から
呼び出しを受け、告白された。
話を聞いてみると彼はひと回り年齢が下で、
私の年齢を5歳上と勘違いしていたらしい。
発覚するまでは結婚の話や幸せにするという
説得もあったが一旦彼は落ち着いていた。
一晩考えさせてください。
と彼は申し出たので私は黙ってうなずいた。
次の日、仕事は特にやりずらさもなかったが
やはり彼がお皿を取りに来るたび意識はした。
私は彼と付き合う気はない。
まず彼の親に息子を騙しやがってと思われるのが
絶えれないし、それを乗り切れる感情がない。
彼には相応しい素敵な彼女と出逢える前座で
あろうと決めていた。
それは年増の長年フリーターのつとめだ。
彼の人生は輝かしい後悔のないものにしてほしい。
全く名前も全く知らなかったが今、
私は彼を親戚並みに大事にもてなしたいと思っていた。
仕事が終わり、彼は少し遅れて喫茶店にきた。
彼は席について珈琲を頼んだあとすぐに話しだした。
私は彼をふらなければいけなかった。
まだ彼の珈琲がきていないのに
話が終わってしまった。他愛のない話をするような
関係性もないのでただお互いを探り探り珈琲を飲んだ。
彼は少し名残惜しそうにしてる感じにも見えた。
勘違いだとしても悪い感じではなかった。
次の日も私は厨房だった。
彼は休みだったようで一度も見なかった。
相変わらず厨房から見えるホールの景色は
慌ただしかった。
ホールから見える厨房の景色は
どんななんだろうと思ってはみたがそんな興味がないので
厨房バイトで引き続き頑張ろうと決意した。
彼に好かれた事より
彼が年齢を一晩考えたことの方が興味があり
どこを好きになったかなどは聞く機会がなかった。
彼は一晩、どうゆう悩み方をしたんだろうか。
年増の日雇いフリーターに告白したことはなぜか他の
スタッフの耳にも入っていた。
なんとなく気疲れもあり働きにくくなり、
その現場から離れた。
いつか彼が告白したことを後悔しても
断られてよかったと思われるだけなので
年増のフリーターは引き続きマイペースに生きてける。
それは私のプラスにもマイナスにもならない。
こんな冷たい人間と付き合わなかった彼の人生は
きっと素晴らしいものだろうと思うと
そこまで普段交流のない親戚のこの幸せを
手伝えたような感覚が今も残っている。
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