経済学院試体験記

経済学系の大学院入試についてネット上にいくつか記事はありますが、結構情報が古いケースもあるので、24年版として自分の院試体験談を載せたいと思います。自分は院試の情報を入手するのに結構苦労したので、自分の記事が誰かの試験対策などに少しでも役に立てれば嬉しいです。

■ 自己紹介


・ 関西の非経済学系の学部出身。外部受験。
・ 就職後、大学院進学を決定。23年9月〜24年3月までフルタイムで働きながら院試対策開始
・ 24年4月からフルタイム→アルバイトに切り替え、本格的に院試対策開始

■ 受験校と必要書類、受験科目


神戸大学経済学研究科
大阪大学経済学研究科
大阪大学国際公共政策研究科(OSIPP)

京大はTOEFL対策が間に合わなかった(やる気がなかった)ので、受験してません。
筆記試験は、ミクロ・マクロで受験しています。
全部夏の院試で合格しました。

■ 試験対策

特に、筆記試験について、厚めに書いてます。

・ 英語

上記の大学はいずれもTOEICが使えたので、TOEICのスコアを提出しました。スコアは735点でした。そこまで高くない方だと思いますが、足切りには引っ掛からなかったので、そこまでハイスコアを取る必要はなのかもしれません。

・ 研究計画

5~6月ごろに取り組んでいました。出願締切ギリギリですね。学部とは違う分野をやろうとしていた&自分がやろうとしている分野に詳しい人が周りにいなかったので研究計画の作成は苦労しました。

IF1.0以上を目安にして英文査読誌をから、自分の関心に一番近い&実証分析が自分でもやれそうな論文を1つ選び、その論文をほぼそのまま踏襲するような研究計画を書きました。

海外の研究を日本のデータでやってみた(&日本のデータでやる意味もそんなに大きくない)だけの研究計画でしたが、先行研究をそのまま使っているだけあって、研究の意義や先行研究の流れは非常に書きやすいと思います。

どうせ研究計画とは違う研究を進学後はやっているものですから、時間がない場合は割り切って先行研究パクるのもありだと思います(もちろん、パクってちょっとだけオリジナル要素を出すだけでも難しいと思います)。

・ 経済学

まずは、試験対策に使った本を紹介していきます。
数学は高校数学2Bまでは理解しているレベルでしたが、院試のために特別な対策とかはしなかったです。ただ、ちゃんと数学の対策最初にしておけば、ミクロ演習本の途中式を追いかけるときとかにもう少し楽できた気がしています。

  ー ミクロ

<教材>

神取道宏(2014)「ミクロ経済学の力」
奥野正寛 編(2018)「ミクロ経済学演習 第2版」
渡辺隆裕(2021)「一歩ずつ学ぶ ゲーム理論 -数理で導く戦略的意思決定-」

基本的には、内容を理解するための本1冊・メインの演習本1~2冊をこなし、メインの演習本にはない論点を抑えるために、他の本を拾い読みする、というのが他の方の院試の勉強の記事を見ていてもベターな気がします。

自分の場合、内容理解は神取ミクロ、メインの演習本は奥野ミクロ演習、ゲーム理論の演習をもう少しやっておきたかったので、渡辺の1~6章の問題演習だけはこなしていました。

本の選び方としては、有名どころ(神取・奥野・武隈)あたりから1冊選ぶのが無難ですが、学部の授業で使ったレジュメや問題演習で対策するのもありだと思います。ただ、その場合そのレジュメが本当に自分の受ける大学院の院試に近い論点・問題が出題されているかは確認したほうがいいです

<勉強法>
試験で高得点とることが目的なので、1つの演習本を何周も行うような勉強法になるかと思います。大学受験と違い1つの本で試験にでる全ての論点を抑えることは難しいので、抜け漏れをなくすためにも、他の本をチラ見しておくくらいは必要でしょう。

実際、奥野ミクロ演習は、双対性に関する問題がない(webの補論で少し解説されているくらい)なので、双対性に関する問題は武隈ミクロとか他の演習書でやっておく必要があったと後悔しています。神戸の筆記の時に、補償需要や間接効用関数の導出などが出ましたが、この辺り全然やっていなかったので試験当日答えられませんでした。しかも知っていれば絶対答えられるような内容なのでここで点差が開いてしまった可能性があります。

もう一つ後悔があるとするなら、企業の利潤最大化(費用最小化)のときに、端点を解に含むケースはきちんとこなしておくと良けばよかったと思いました。神戸と阪大両方で出題されましたし、試験当日結構焦りました(阪大の方はそもそも解けなかった、、、)。大学院側としても、中級レベルの理解度が試しやすいですしこれからもちょいちょい出ると思います。脳死でラグランジュだけやってると詰んでしまうということですね。

  ー マクロ

<教材>

中谷・下井・塚田(2021)「入門 マクロ経済学[第6版]」
二神・堀(2017)「マクロ経済学(第2版)」
齊藤ら(2016)「マクロ経済学 新版 (New Liberal Arts Selection)」

二神と斎藤を何度も読み返し、それぞれの章末問題を何度か解く形式で対策進めました。 最初二神から読み始めたのですが、正直よくわからなかったのでもう少し下のレベルの中谷に戻ってマクロ経済学の直観的な理解をまずは身につけるようにしました。院試において、わからない時に一つレベルを下げた本に戻る勇気は必要だと思います。

<勉強法>
ミクロは試験で出題されるのがほぼ計算問題&試験に対応する形で質の良い演習書が発売されているので、演習書を1-2冊決めてやり込むという勉強法が効果的な気がします。
一方でマクロは、計算もあれば論述もあり、比較的出題パターンが多いことと、院試向けの演習に特化した本が(自分の知る限り)存在しないので、ミクロのように、計算問題だけやりこむ勉強法では苦労すると思います。

例えば、教科書のモデルを何も見ずにセットアップして、モデルを解いて、経済学的に解釈することを繰り返したり、教科書の中で、いくつか近い論点を自分なりにまとめてそれを何も見ないで人に説明するor書くような勉強法もこうかあると思います。

<試験の傾向>
特に神戸はほぼ毎年論述が出るので、計算ゴリゴリやるよりは、人に説明する系の勉強にウェイトを置くほうが良いと思います。あと余談ですが、神戸は金融系のトピックが比較的多く論述に出る印象なので、斎藤の15章あたりを重点的にやると良いと思います。

阪大の経済は成長論多め(神戸はなぜかほぼ出ないです)なので、ソローモデルは何も見ないで教科書の内容そのまま再現できるレベルまでやり込んでおきましょう。過去の別のネット上の記事でも触れられていますが、二神マクロの章末問題がほぼそのまま出た(小問集合のような形で出ることもあれば、大問の前半パートは章末問題とほぼ同じみたいな出題をされることもあります)ので、二神マクロはマストでやるほうが良いと思いました。

・ 面接


神戸も阪大経済もOSIPPも研究計画書をもとに15分程度行われます。
聞かれる内容は人によりけりな気がしていますが、参考までに自分は以下のようなことを聞かれました

受験している大学院の志望動機
研究計画の簡単な説明・補足
研究計画で引用している論文を理解しているか。例えば、「先行研究ではどうして予想とは異なる〇〇という結果が出ているのか?」など
そもそもその研究をやりたい動機
どうやってデータ取得するのか?他のアプローチはなかったのか?
実証分析の理解(DIDって何?固定効果とか操作変数をつかった実証研究とはどう違うのか?)
進学の準備状況。特に数学はどのくらい勉強しているか?Rとか触れるか?

特に自分は実証分析のやり方や、実証分析をやる際に生じる課題にどう対応するつもりなのかをよく聞かれました。逆に、自分のやろうとしている分野の基礎知識とかは3校全てで聞かれる事はなかったです。

OSIPPを受験した際は、質問5つのうち4つはきちんと答えられませんでしたが、それでも合格していたので諦めないでください笑。

おそらく、計画書がきちんとかけていたことがよかったのだと思います。自分は学部の時から学術論文を書く機会は何度もあり、学術論文の構成(IMRADとか)に添いながら、実現できそうな内容を計画書に書くという作業に慣れていたのがよかったと思います。

■ 最後に
大学院の受験は情報が手に入りにくい分非常に対策しにくいです。特に神戸や阪大経済は、受験者の大半は留学生です。彼らは集団受験をしており、過去の受験者が多い分おそらく院試に関するtipsを日本人よりも多く持っている気がします笑(その分、彼らは慣れない異国の地で試験を受けないといけませんが)

せっかく大学院で学びたい意欲があっても、情報戦で負けて合格できないのはあまりにも悲しいのでぜひ少しでも院試の情報が皆さんのお役に立てれば幸いです。

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