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小沢健二さん“視る書籍”「言葉の戦闘力9999万ぐらいあるよ…この人…!!」

フリーアナウンサーで、鎌倉市のIT企業勤務のサトパンです。

先日(2020年11月24日)アーティストの小沢健二さんのインターネット番組『キツネを追ってゆくんだよ』の生配信がありました。小沢さんといえば数々の名曲をお持ちですが、今回は歌唱シーンはなく、エッセイの朗読(モノローグ)が中心の「視る書籍」という銘打ったライブでした。

※↑YouTubeではラジオ風に同じ内容をお伝えしています!動画・音声派の方はこちらへ!

小沢さんのモノローグは、NHKの音楽番組『SONGS』やApple Music『Tokyo, Music & Us』などで度々披露していましたが、これがむちゃくちゃ良いんですよ…。なぜこんなにも心に響くのか…。誰かと戦うわけではないですが笑、小沢さんの「言葉の戦闘力」は最高レベルの9999万ぐらい(?)あるのではないかと思いました。

現代を取り巻くモヤモヤを柔らかく、鋭い言葉で

昔の「笑っていいとも!」で、タモリさんが小沢さんの歌詞を褒めるシーンをYouTubeで見たことがあります。「小沢くんの歌詞は難しいことを簡単に言い表している」。タモリさんが手放しで人を褒めるのは珍しいので印象的だったですが、歌詞だけでなくエッセイにもそれが言えます。今回の配信でも現代を取り巻く何かモヤモヤとしたものを、平易で柔らかな言葉で、でも非常に鋭く言い表していました。

私が印象に残ったのが「文脈」のお話。デジタル世界となった現代の言葉についての小沢さんのお話を、少し内容を私なりに説明してみたいと思います。(※これもあくまで私の「文脈」ですが…!)

誰かを救う言葉が、誰かを傷つけるかもしれない

「ちょうがとぶ」と聞くと何を思い浮かべますか?

虫の蝶が飛んでいる様子を思い浮かべる人が多いと思いますが、小沢さんの息子・リーリーくん(とっても可愛らしい!)は『ゾゾゾ ゾンビーくん』というゾンビのギャグ漫画を読んでいるので、内臓のほうの「腸が飛ぶ(!)」だと思ってしまうそう。

言葉を発信する人の文脈もあれば、受け取る人の文脈も千差万別。
SNSの普及で人類史上最も多くの人が文章を読み、自ら書く時代となった現代社会はまさに「文脈の濁流」で、誰かの文脈がそのまた誰かの文脈にぶつかってしまうことが多くなってきました。不特定多数の人に発信する上で、誰かの文脈にぶつからずに済ますことなんてほとんど不可能なのではないでしょうか。

小沢さんは現代社会で言葉を発することの難しさを「黒髭危機一髪」に例えました。黒髭の顔色を伺い、相手を「首チョンパ」にせずに剣を挿していくゲームだとすると、1対1のおしゃべりは樽に1本の剣を刺すということ。相手は1人だから、何となく空気を読んで相手を傷つけずに剣を挿せる。

しかし話し相手が2人の時は、樽に2本の剣を刺すことになる。3人の時は3本、4人の時は4本…黒髭が「首チョンパ」になる確率は上がっていく。そしてSNSでの不特定多数に向けた発信になると、もう樽には無数の剣が刺さって、中の黒髭はえらいことになっている…!!

この例えも見事ですよね。。

言葉って難しい。誰かを救う言葉が、誰かを傷つけたり怒らせたりするかもしれない。読む人の「文脈」によって、180度違う意味に受け取られるかもしれない。

そうなると、繊細な人は怖くて何も言えなくなる。誰かの「首チョンパ」が怖いし、誰かが怒って石を投げてくるかもしれない。反対に、そんなことは気にしない、面の皮の厚い人の割合がデジタル世界に増えていく。どうしてもそういう人が有利なんですよ。声の大きい人の意見が、強いエネルギーを持ってしまった言説がスタンダードになってしまうかもしれない。

繊細な人はそれでいいのか?

でも、小沢さんは問いかけます。
「繊細な人はそれでいいのか?」

ドキッ……!!

僕自身が「繊細側」の人間かどうかは分かりませんが、書いては下書き保存して、結局勇気が出ずに投稿していないツイートがたくさんあります笑。地方局のアナウンサー時代に不特定多数に対して伝える仕事をしていたためか、どうしても誰かの「首チョンパ」や、意図しない意味に解釈されてしまうのではないかという懸念が拭えないのです。(それほどフォロワーいないけど…)

その懸念は、それはそれで今の時代に必要なアンテナだよなと思いつつも、たしかに「それでいいのか?」と問われるとそのままじゃいけない気がする。タイムラインをマッチョな意見で埋め尽くされるのは耐えられない…!

結局、繊細な意見を言葉にするのは技術的にものすごく難しいんだと思います。世の中、白黒はっきりしていることは少なくて、グレーで曖昧なゾーンが大半を占めている。でも実はグレーの中に大切なことがあって、ちょっとした心の動きに真実がある。それを見つけるのは至難の技だし、人に分かりやすく伝えるなんてもっと大変。

小沢さんの言葉の力は、そんな「繊細な意見」を、圧倒的な知識量(好奇心と勉強量に裏打ちされた)と言葉のセンスで見事に言い表すことができる力なのではないでしょうか。

「繊細な意見=か弱い意見」では決してありません。何よりも強力で、尚且つ優しく心に響く。誰もが言葉を扱い、誰もがメディアを持っている現代だからこそ、そのような優しい言葉の戦闘力を身に付けたいです。

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