『モードに入る』 ③全集中

続編。

①友人と距離を置く(お酒の制限)
②日記
③やることを1つに絞った

プロ選手になって約1年間自分が世界一に向けて取り組んだ事の三つ目。
③のやることを1つに絞る、とは?
最も経験が無い自分が短期間でどうやったら世界一になれるか考えた。
考えた結果、「長く強く漕ぎ続けられること」。自主トレはこの1点に絞った。
レースラフティングというスポーツは非常に要素が多い。
チームスポーツであること、ボートやパドルといった道具を扱うこと、常に変化する『川』というフィールドで行うこと。
さらに種目が4種目ある。短距離種目1~2分、2艇同時スタートの勝ち抜きのレース、ゲートを通過するスラローム、長距離を競うダウンリバーだ。
これだけの要素を満遍なく取り組んで世界レベルになるのは相当な時間がかかる。
2011年シーズンのチームの最重要種目が「ダウンリバー」だった。ダウンリバーは4種目のうち最も配点が高い400ポイント(当時。今は350に変更)であり、この種目で1位を獲る事は世界一になるのにかなりのウエイトを占めるのは誰でもわかる。前回の投稿でも書いたが、このチームは前年優勝をしてる。そのため戦術や技術面では先輩達のお力を借りることができるが、体力面は私次第となる。チームでも「ダウンリバーで絶対勝つ」と意思統一がされていたので最重要種目で自分が一番活躍できれば世界一になれる、とプランニングした。そこから沢山やることがあったが自分の中では「何に集中するのか?」が完全に明確になっていたので徹底的にダウンリバーで勝つための練習をした。世界選手権2011年大会は最終日のダウンリバー種目まで混戦が続き優勝国がわからない状態だったが、チームは1年間取り組んだ成果を発揮して2位に大差をつけてダウンリバーを圧勝し世界一、2連覇を達成した。自分なりにも1年間集中してきたダウンリバーで力を発揮できたと思う。
結果論ではあるが、あれこれと集中するが多かったらこの日のダウンリバーでの私の漕ぎは変わっていたと思う。

以上が選手1年目に世界一に向けて実際に私が取り組んだ事である。

恥ずかしい事だが、この取り組みの重要性に気づくのはキャリアの後半になってからである。ここから長い期間勝てない時期が続き、一時期はキャプテン(キャプテン5年目に)を外されたこともあった。約1年間キャプテンという役から外れて頭を整理する時間があったので、その時に思い出したのが今回の投稿の事である。

この事が誰かの役に立てれば幸いである。

小泉聡


いいなと思ったら応援しよう!