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Day290:「新しい世界の資源地図」
著者:ダニエル・ヤーギン 東洋経済新報社
(米国で最も影響力のあるエネルギー問題の専門家)
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「移行には、大きなコストがかかる。しかし何もしなければ、もっと大きなコストを払うことになる」
Q:原油価格は、なぜ激しく変動するのか
新しい世界の資源地図とは…
■エネルギー問題と国家の衝突
石油輸出国は、市場の変動に向き合わなくてはいけなくなる。
石油輸出国は、今度、減収、緊縮財政と経済の低成長へ向かう。
石油への過度の依存をあらためることが、ますます重要性を帯びる。
国に任せるだけではなく、エネルギー消費社の私たちが今、地球で起きていることを知り、学び、消費スタイルを改めなければいけない。
炭素税やガソリン税の増税がない中、自ら進んでグリーンエネルギーに高いお金を支払う消費者は少ない。
■「エネルギー変化」今、どんな変化が起きているのか?
[中東]石油需要枯渇への危機感の増大
[自動車]自動運転車と電気自動車が石油の地位を脅かす
[気候変動]再生可能エネルギーや政策の役割の比重が増大
など
低炭素社会への道筋を描けるかどうかは、今後数十年の世界の鍵を握る課題になる。
■問題
エネルギーの未来には今、明確なコンセンサスがない。
・産業革命前に比べて世界の平均気温の上昇を2度、または1.5度までに抑えることを目指すのみ
・数十年後の転換の未来図についても、コストについても、どのように達成するかも決まっていない
■温室効果ガスと気候、経済の変化
亜酸化窒素やメタン。そのガスは一旦大気中に放出されると、1年以上、場合によっては10年以上、大気中から消えない。二酸化炭素より強い効果を持つこともある。温室効果ガスは地球全体を「温室」のように包み込んで、太陽熱を地球の大気圏内に閉じ込め、宇宙空間に逃げないようにする。その結果、地球の気温が上がる。「温室効果」と呼ばれる。
臨界点に達したら、「制御不能の気候変動」が起こりうる。
「地球温暖化」や「気候変動」
→「気候危機」「気候非常事態」「気候大災害」へ
気候変動に直ちに対処しなければ、新たな「大量絶滅」を招く
(グレタ・トゥーンベリ:2019年、英国議会で演説)
「空港を増やすのは、愚かすぎる」
「気候変動に対処しなければ、世界はあと12年で滅びる」
気候は今、金融の安定を左右する問題に。
世界の金融システムにとって、2008年の世界金融危機を彷彿とさせる「システミック・リスク」(金融システム全体を機能不全に陥れるリスク)になっている。
今後、5年から10年は、脱炭素化は確実に経済力を損ね、石油会社や天然ガス会社の地中の埋蔵資源が地中に残されたままになる。会社の価値が急落(ゼロ)、投資家が持っている株式が紙屑になるかもしれない。
ちなみに、石油需要は2030年にピークを迎える。
旧来のエネルギー会社から、「脱炭素」経済へ投資先を切り替える「全面的な配分変更」を行うべき。
グリーンボンド(再生可能エネルギーのインフラなど、環境分野の資金調達のために発行される債権)は、2015年500億ドル2019年2570億ドルへ。ダイベストメント(投資撤退)も勢い付いている。投資家は、化石燃料産業の株式を売却したり、銀行が化石燃料産業への融資を控えたりしている。
■世界の動き
G20中、カーボンプライシング制度や何らかの炭素税を導入するか、導入の計画を発表するかしている国は14ヵ国にのぼる。
英国は、2050年までに炭素の排出量をゼロにすることを法制化。
欧州:世界で最もエネルギー転換の促進に政府の政策を使おうとしている。欧州投資銀行の総裁が、天然ガスへの融資を2022年までに停止することをは発表。カーボンプライシング制度と同等の制度を持たない国からの輸入品に「国境税」をかすことを検討。
■グリーンニューディール
2030年までに米国内の電力を100%、クリーンな再生可能エネルギーで賄えるようにすべき。ジェット機の本格的な代替燃料はまだなく、既存の航空会社は廃業を余儀なくされる。
■再生エネルギーと課題
二酸化炭素を排出する電源から、炭素ゼロの電源へ
(太陽光・風力タービン)
再生エネルギー主要国は、「中国」
2020年中国の太陽光パネルメーカー123社。2010年から2018年までに太陽電池の生産能力5倍。世界の太陽光パネルの70%を生産。2013年ドイツを抜く。2017年市場規模は世界市場の半分に。
再生エネルギーである、風力・太陽光が全発電量に占める割合は24%から36%へ。2040年までに最大60%まで増える。
《課題》
大量の細切れ電力
出力の乱降下によって、停電がおこるリスクが高まる。
いかに送電網に組み込むか?
実際の発電量は、設備容量の20%(太陽光パネル)
■エネルギー打開策
・天然ガスに変わる燃料「水素」の可能性(地政学的な問題も絡まない)
・炭素回収・貯蓄
・スーパー植物の開発
《原発》
ドイツは、2011年福島の原発事故後、2022年までに国内の原発17基を全て停止することを決めている。米国では、いまだに100基近くが稼働。中国では、34基が新設されている。
「2030年までに」という目標。それでは間に合わないという意見も。年々気温が高くなっている地球。このままでは、近い将来、電力が安定供給されないとなると…
これ以上、自然を壊してはダメ。