【今日の本】
リーンスタートアップ
エリック・リース 著 日経BP 2012年
リーン・スタートアップとは
生産工程における無駄を徹底的に省くことに主眼を置く「リーン生産方式」を参考に生まれたリーン生産方式。
*リーン生産方式:トヨタ自動車の編み出したシステムをもとに、1980年代にマサチューセッツ工科大学が体系化したもの。
概念そのものは、新しいものではないけれど、著者の視点が新しいのは、概念をプロダクトそのものの開発や企業のあり方にまで対象を広げて応用した点にある。
強い意志と才気、適切なタイミング、そして何よりすごい製品があれば、誰でも富と名声が手にできるという古い考え方では、失敗するケースが多い。
❶[3セレクト]
①時代の変化
昔は、一つの会社を立ち上げるのに数十億円かかるのが当たり前で、潤沢な資金を持つベンチャーキャピタルの助けを借りないと行けなかった。今は、お金をかけずに少人数かつ短時間でまずはプロダクトを作ってみて、そのプロダクトに対する市場の反応を見てから、改良を進めれば良い時代になった。
事例)
YouTube:2005年に始まった当初は、動画を使ったユーザー同士の出会いを目的としたサイトを模索していた。その後、ビデオ版フリッカーとして方向転換を試みたが、成功に結びつかなかった。そこで、当時人気のあった「マイスペース」のページに動画を埋め込むためのサービスとして再出発したところ、ようやくユーザーの心をつかみ急速に伸びた。
②リーン・スタートアップのプロセス
リーン・スタートアップビジネスの本質は「顧客」
顧客が求めているものを提供することでビジネスを進めていく。「検証による学び」を重視する。
【具体的プロセス】
1、仮説をつくる
顧客にインタビュー、アンケートをしながら「サービスやプロダクトが顧客の求めていることを満たすか」についての仮説を立てる
2、MVP(最小限のプロダクト)を開発する
3、仮説の計測
仮説を検証するためのデータを集める
4、検証で得たデータからの学習
データを生かして、「変えるべきこと」「変えてはいけないこと」を学習する
5、意思決定
より顧客に寄り添ったサービス・プロダクトを作る
③大きく考え、小さくスタートする
ザッポス(世界最大のオンライン靴店。
総売上は10億ドル超)の創業者、ニック・スインマーンは、ここにいけばどんな靴でも買えるというオンラインショッピンクサイトがないのが残念だった。
それまでなかったすばらしい買い物体験ができたら良いなと思った。十分な時間をかけてビジョン全体をテストする方向もあったが、実験からスタートすることにした。
まず、靴を顧客がいるという仮説を立てる。そしてその仮説を検証するため、近所の靴店に頼んで在庫品の写真を撮らせてもらった。撮った写真はウェブに掲載し、それを誰かが買ってくれたらお店の売値で買うからと言って。
❷[エピソード] 成長エンジン
ウィルス型成長エンジン:オンラインのソーシャルネットワークやタッパーウェアの場合、マーケティングの大半を顧客がしてくれる。ウィルスが伝染していくように、製品の認知が人から人へ急速に広まる。これは、口コミとは異なる。
口コミとの違いは、その製品を顧客が普通に使うだけで人から人へと認知が広まる点。顧客自ら知り合いに勧めようと思っていない。ウィルス型は、顧客が製品を使うとその副作用として自動的に成長していく。
成功事例)
ホットメール(電子メールサービス)
ユーザーは無償で利用できる。はじめの頃は、思うように成長しなかった。十分に資金調達できず、マーケティングにかける資金がなかった。状況を変えたのが、製品に加えた小さな工夫だった。
「追伸。あなたも無償のホットメールを使ってみませんか」という一文とリンクを追加しただけで、6週間で新規ユーザーが100万人以上にも増えた。サービススタートからわずか18か月でマイクロソフトに4億ドルで買収された。
❸[今日からのアクション]
プロセスをいつ誰でも使えるようにシートにする