海士町の福祉ツアーに行ってきた感想
2泊3日のUBDOBE主催福祉留学お試しツアーに行ってきました。
簡単なまとめを書いてみました。
ウブドベとは?
うぶどべは、医療福祉について、めちゃ面白く発信したり、イベントや新しい取り組みで親しみやすくしてくれている異色の団体です。
例えばこんなこと→医療福祉をテーマにしたクラブイベント「ソーシャルファンク」
子供や知的障害者が楽しんでリハビリを出来るようにする「デジリハ」
限界地域と福祉人材をマッチングする「福祉留学」
海士町の簡単な説明
海士町は島根県の離島で、本土から船で2時間半くらい。
他の離島と同じく、人口減少や産業の衰退の道を辿っていました。
しかし、産業や教育面の改革、まちづくりや福祉面での新しい取り組み、それらを含めた島の魅力を発信することにより、全国から注目を集めて、いまでは旅行者・移住者・研修などで訪れる人も多く「奇跡の島」などとも呼ばれています。
そんな海士町。どんな取り組みが見れるのか、わくわくしながら上陸です。
上陸
まず、ついた港がとてもおしゃれで驚いたの。木を感じる温かみのある建物です。
港に隣接する「キンニャモニャセンター」には、お土産売り場やレストランだけじゃなくて、船の待合室が開放的なフリースペースになっていて、スタバばりにマックを広げる人もいたよ。
レストランではご飯を食べたけど、シマメ(こっちの言葉でイカのこと)の肝しょうゆ漬け丼は、シマメが柔らかくて醤油にコクがあっておいしかったな。
このシマメはCAS冷凍システムっていう特殊な冷凍システムで、細胞を動かしたまま凍らせるから、鮮度が保てるんだって。島はこの技術を導入して、島で取れた新鮮な魚介類を日本だけじゃなく、世界に輸出することで、島の漁業が再興したという、すごいシステムなんです。
それで、このレストランでは、CAS冷凍システムを使っている魚介類には、その記載があって、分かるようになってる。
こういうのも小さいところだけど、島全体が島の強みと出していきたい部分を分かっていて、アピールができている証拠だし、ブランディングってこういうことなんだなーって思いました。
ここで観光福祉課の沼田さんが登場します。なんと3日間、付きっきりでツアーに帯同してくれると言うのですが。豪華すぎかよ!
午後からは島の医療・福祉施設の見学です。
社会福祉協議会 ひまわり
ここで出てきたのは、協議会会長の片桐さん。
本土で働いていて、困っている人はそこにいるのに、「高齢」や「障害」という縦割りで、支援がしづらい福祉の現状に疑問を持ったと言う片桐さん。「人を助けることを仕事としている私たちが、制度や申請主義によって助けることができない。こんなことがあるか」と、まっとうで熱い人柄で、すぐに好きになったよ。
海士町に移住してきてから、片桐さんは島の人口、2,300人を幸せにするために働いていると言う。
そう聞くと限られた視点かと思うけれど、だからこそ、ニッチな支援ができるし、支援者が企画を立てやすいみたい。
たとえば、おばあちゃんが大根を干して、切り干し大根にしている写真を見せてくれた。ここまではデイケアではない光景ではない。
だけど、ここからすごいのは、作った切り干し大根をおばあちゃん達が、他の入居者さんや職員さんに売るんだって。それで、売ったお金でおばあちゃんたちが企画を立てて遠足に行っちゃうんだって。その時の写真がすごく楽しそうだったのを強烈に覚えてる。
「やりたい」と思ったことをかなえる、夢を叶える支援を大事にしていて、ひとりの夢を大切にしていると、今度は夢に相乗りして来る人たちがいる。その相乗りも叶えていくことで、島全体だけじゃなくて、島の外まで巻き込んでいるんだって! すごいなー
諏訪園
特別養護老人ホームです。
管理者さんがおらずあまり詳しいお話が窺えなかったですが、明るい雰囲気でした。壁面がとても華やかだったのが印象に残っています。
社会福祉法人 福来の里
高齢者住宅と高齢者デイサービス・障害者グループホームを運営している社会福祉法人です。
私が障害者グループホームの世話人であることを伝えると、プログラムにはなかった、グループホームの見学もさせてくれた。
おおきな窓から、田んぼが見渡せる、すてきな環境だったな。とてものどか。
入居者さんが部屋に招待してくれて、自慢のスピーカー(ウンジュウ万円だとか!)で演歌を聞くと言うすてきななぞ時間を過ごしたよ。
ここのグループホームの世話人さんも移住者でした。初めに来た時に魚釣りをしたんだけど、大きなお魚が釣れて、2回目に来た時にも釣れたので、移住しました(?)という釣り好きのお兄さん。島には障害者のグループホームはここだけだから、いろんな障害の方がひとつの場所で暮らすことになる。多様性を持った入居者同士の人間関係をうまく保つのが、苦労することだと、優しく教えてくれました。なんだか癒された時間だったな。
障害者就労継続支援b型作業所さくら園
障害者の作業所b型。
海士町で昔から飲まれていたお茶、ふくぎ茶を、島の特産品として売り出しています。ふくぎ茶は、クロモジと言う木を、枝も葉っぱもお湯に出して飲むお茶。その土地に昔からある文化を、掘り起こして産業にしているんだよね。
収穫、生産まで、ほぼぜんぶ作業所で生産されたフクギ茶は、柑橘のようなさわやかな香りの中に、どこか丸みがあってとても飲みやすい。すっきり、ほっこりさせてくれるお茶だった。ノンカフェインなのもうれしくて、寝る前に飲みたいなと思う。そんなフクギ茶は、港のお土産屋さんでも品切れが出るほど人気で、生産の方が追い付いていないくらいだって。
仕事は働く人のペースによって、15時で終わる人もいれば、17時まで残って働く人もいます。私たちが行ったときはもう16時を回っていたので、残っていたのは数人だったけれど、皆仕事にやりがいを持って取り組み、もう何グラム終わった、と逐一報告していたり、見学の私たちに気を遣って、パンフレットを全員に手渡してくれたりと、すてきな歓迎を受けました。
海士診療所
島にたった一つの医療機関の海士診療所。内科と小児科は毎日、精神科と整形と眼科が月に数回~年に数回。救急医療も受け付けています。ここの看護士さんが院内を案内してくれました。救急処置室、各検査室やリハビリ室、MRI室まで。かなり設備が整っている印象。
都市部の病院は、たくさんの、専門性を持った人たちが働いています。特に大きな病院では、たくさんの患者さんたちがそれぞれの目的をもってやってきます。だから専門性と役割分担が必要になってきます。だけど、それは患者さんがたくさんたくさん来る場合の話。島では、患者さんが限られている代わりに、さまざまな病気や障害を持っている。だから専門性を持ってそれしかできないと言う風になると、逆にその専門性を持て余してしまうことになる。
それだったらなんにでもある程度対応できる、看護師と言う資格と素養が必要。この診療所では、機械の簡単な整備、医療器具のメンテナンス、薬剤の処方業務まで、看護師が担っている。看護師が常に足りていない状況なんだそう。看護師のセクションは全部で6種類あり、1月毎に回していく。緊急時に1人で回す必要も出てくるから、すべてを覚えないといけない。だから、業務のすべてを覚えるのに半年、ひとりで判断して回せるようになるまで3年かかるのだという。この、たくさんの業務を経験できるというところに魅力を感じて、スキルアップや経験のために就職してくれる人もいるんだって。確かにすごいスキルアップできそう。
島の医療福祉の現場を見て、全体として思うことだけれど、島には医療機関や各施設が一つずつしかないから、例えば医療で言えば、海士診療所が一人を取りこぼせばその人はこの島では医療を受けられないことになる。だからまさに、誰も置いていけない。どんな人にも対応する多様性や柔軟性を持つことが重要になるんだなって。
海士診療所はスタッフが不足している中で、訪問看護・診療までやっているんです。診療所に自分で足を運べない人もいるから。その他、緊急時の搬送の手段も天候や患者の状態によっていくつもバリエーションを持っていたり(中には自衛隊のジェットを使うパターンもあるんだって!)、それから人不足を補うために、設備を充実させたり、島の福祉職等とも合同で研修を行ったり、いろんな取り組みをしていた。
離島の医療を確保していくためには、工夫と努力が必要。だけどこれだけの工夫をしても、まだ看護師や医師への負担は大きく、プライベートを削って支えている状態だと言う。切実な医療の現場だ。離島医療の課題を垣間見るとともに、島の医療従事者への大きな尊敬を感じた。
海士町学習センター
多様性のある学びが提供される学習塾。
海士町の高校は島留学制度と言うものをとっていて、課題解決型の教育や地元の資源を活用した教育をしている。寮があり、特色のある教育を受けるために、島外から「留学」してくる生徒も多いんだって。
海士町学習センターには、そんな生徒たちが通う。だけどここも普通の塾じゃない。一方通行の講義型だけじゃなくて、話し合いながら生徒の受けたい学びを提供していく。
そして、たとえば有名な人が海士町に来た時には、ぶっつけで講師をお願いしたりもするんだそう!
ぼくたちが行った時も、東京の映像制作会社の方が、海士町のPR動画を作るにはという主題で講義をしていて、学生や島の住人が30人ほど集まっていた。
学びを提供する場がそのままコミュニティになっているんだ。
あまマーレ
島の遊び場というあまマーレ。正直、いろいろな機能がありすぎて、楽しすぎた!
中には保育園、古道具屋さん、フリースペースなどが入っていて、いろんな人が思い思いに過ごしていました。イベントスペースにもなっているんだって! 私のお気に入りは古道具屋さん!海士町で取り壊しになった家などから古道具を持ってきて格安で販売します。捨てるのも新しく物を作ったり持ってくるのも大変な島だからこその、古いものを大切にするアイデアです。ここのレトロ家具たちが可愛すぎてもう!
そして、保育園 お山の教室 ここは、島を丸ごと遊び(学び)の場ととらえて、子供たちが自分でどう遊ぶかを決めることを大切にしています。
この日は、森の中でイベントが開かれていて、芋を焼いたり、シャボン玉したり、松ぼっくりに色を塗ったり、ハンモックをブランコにして遊んでいたり 多分30人以上の子供たちが思い思いに、木漏れ日の中で思いっきり遊んでいて、夢でも見ているのかと思った。
このイベントも、保育園の保育士さんが思いついて、島の子供や父母さんたちに声をかけたんだって。
チェダッテ
医療福祉関係の移住者向けのシェアハウス。宿泊客も受け入れていたり、こんな離島にこんなにニッチなコンセプトのシェアハウスがあるなんてと、ぼくもとっても驚いた。
なんだろう、この島は
なんだろう。この島の、同時多発的に何かが起こって、作用しあって、発展していく感じは。
自分なりに、3つの要因に整理してみた。
1つは、多数のレイヤーがあること。また、それを持った人たちがすぐにアウトプットできる環境にあること。これが大きいだろうな。交流会で、ツアーの参加者が半生を語り終わった後、それを聞いていた片桐さんが、ぜひ島留学の高校生たちに話してほしいとその場でオファーしていた。沼田さんも一緒になって。その場で何かが起こっていく。こんな柔軟で活動的な人たちが引っ張っているから、海士町のアクションは活発なんだなと。
もう1つは、集う場が豊富で機能的であること。キンニャモニャセンター、学習センター、あまマーレ、チェダッテ、この規模の島に、いくつも集まる場所があって、しかもそれが、特にデザインの面からおしゃれで使いやすく、イベントも豊富で、活発に機能している。だからいろんな発想が混ざり合って、現実になりやすい。
そして規模感がいいこと。
目の前の人を愛して、大切にすることが、島を大切にすることになる。
この島の規模ではそれが見えやすくて、島の人たちが実感しているからこそ、みんな自分なりのやさしさや思い入れで、目の前の人を大切にしようとしている。また、それが集まって、結果的にも島をよくしている。
単純なことだけど。これって、でも例えば、日本全体でも、それどころか世界中でも言える話だなって思った。目の前の人を大切にすることは、日本を世界をよくすることだ。しかも、人によって大切にする方法が違うから、それで多様性が生まれて、豊かな社会になってく。嘘みたいだけど、それが社会だし、それが自然だと思ったんだ。大きすぎる話になってしまいました。
最後の感想
とにかく、学ぶものがすごく多い島なんだけど、それだけじゃなくて、疲れたり、人がなんだか信じられなくなったりしたら、海士町に行ってみるといいと思う。人が普通に、人の為に生きている島があるから。そこが気に入ったら、住み着いてみるといいと思う。みんな歓迎してくれるし、多様なレイヤーがあるから、居場所はきっと見つかる。そう思わせてくれる島だし、島の人たちだった。
最後に沼田さんは、住まなくてもいい、働かなくてもいい。足を運んでほしい。そう言ってくれた。だから自分なりに島にかかわれるし、ぼくは文章を書こうと思った。
誰かが少しでも気になって、足を運んでくれたら嬉しいな。そう思って。
終わり