(過去の連載を転記しています)是非論だけで終われない離婚・別居後の「面会交流」 子供を最優先に考えた面会の支援方法の選択肢が増えることこそが必要

2017.11.14 15:30 初出:wezzy(株式会社サイゾー)
 佐藤正子(@SATOMasako)です。こんにちは。

 今回は、夫婦が離婚や別居した後に、離れて暮らしている子どもに会う「面会交流」についてお話しします。

 夫に「面会交流について書こうと思ってて……」と話したところ、「警察で面会するやつ?」となかなか惜しい間違いをしていました。それは逮捕のあとで警察に「勾留」されているときに行う面会です。今回取り上げることは、警察はほとんど関係ありません。

 面会交流とは,離婚後または別居中に子どもを養育・監護していない方の親が子どもと面会等を行うことです。近年、離婚後の親子の交流を促す「親子断絶防止法(通称)」の成立に向けた動きがたびたび活発化するなど、面会交流が注目を浴びる機会が増えてきました。この法案は話題に上がる度、ネット上などで賛否両論が起きる事態になっています。そこでこの記事では、面会交流が法律上どのように定められているのか、実際に行われている面会はどのようなものかなど、基的なお話を書きたいと思います。

 法律では「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と定めています(民法第766条第1項)。なお、裁判所が関与する形で離婚する場合でも同じように面会について定めることがあります。

 話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所で調停ができます。この調停では、裁判所の調査官が子どもの心理や環境の調査を行い、適切な面会が行えるように調整が行われることが多いです。裁判所内に子ども部屋のようなところがあれば、試験的に裁判所で面会を行うこともあります。ちなみに、裁判所から配布されている面会交流のしおりには、面会をする方、させる方が守るべきルールとして、別れた夫婦はお互いに悪口を子どもに言わない、子どもを通じて別れた相手のことを詮索しないなどが定められています。裁判所でこうしたしおりが作られるということは、面会交流の際に両方の親に感情のもつれや不安が発生してなかなか面会できないことが多いからだろうと考えます。

 なお、離婚届にも面会交流に関する欄はありますが、書かなくても受付されます。また、強制力もないため、それに従った面会などを行えなければ、相手と話し合いをするか、別途調停を起こすしかありません。

 実際にはどのように面会が行われているのか、ふたつほど例をあげたいと思います。
例1:

子どもが7歳と4歳、子どもと一緒に住んでいる親は、離婚した相手に住んでいる家に来てもらいたくない、としましょう。家に来てもらいたくないのは、感情的な理由かもしれませんし、過去にDVを受けていたといった理由も考えられます。

 この場合、必ずしも「家に来てもらいたくないから面会交流はしない」という選択肢しかないわけではありません。例えば、月1回程度、子どもの祖父母に付き添ってもらい、近所の公園やショッピングセンターなどで待ち合わせをし、夕方になったら祖父母が迎えに行く、という方法が考えられます。長時間、特に外で過ごすことで子どもの体調が崩れること、あるいは子どもが成長により同じ場所に飽きてくる可能性もありますから、季節や天候などによって、待ち合わせ場所や面会場所などを変えるのがよいでしょう。

 また、運動会や授業参観などの行事を別居した親が見に行くこともあります。

例2:

 子どもが16歳と、先程の例よりも成長していたらどうでしょうか。

 この場合、子どもが携帯電話を持っている場合も多く、同居していない親が子どもに直接連絡を取って会うことが多いようです。この年にもなると、同居している親が促したとしても、子どもが別居している親と会うことを嫌がることもありますし、思春期ということもあって同居している親とすら口も聞かない子もいるくらいです。そのため、裁判所が面会を促すような介入をする事例はあまり聞きません。ある程度成長した子どもについては、子ども人の意思を尊重しているわけです。

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 これらはあくまで例に過ぎません。面会交流の方法にはいろいろな工夫が可能ですし、事前に決めた面会交流が行われない理由も様々にあります。

 例えば、同居中にDV(子どもの目の前で夫婦間のDVが行われたらそれは子どもに対する虐待です)などがあった場合、子どもへの悪影響を考慮し、裁判所から面会が制限される決定が行われることもあります。ただ、実際にこうした決定が下されることは少なく、ほとんどの場合で面会が認められています。

 子どもに対する虐待は、きょうだい間での差別的扱い、親同士のDVも含めて法律に定められていますが、離婚となると、DVなどの影響を同居親が主張しても、その是非が十分に調査されないまま軽視されて調停などで面会を強引に勧められることが往々にしてあります。離婚調停などの家族関係の争いが多く裁判所に持ち込まれるようになったにもかかわらず、裁判所に予算が増えないために調査をしている余裕がないためと言われています。

 面会交流は、法律で定められているように、第1に子どもの成長のために行うべきであって、虐待が疑われるような場合、DVや夫婦間、子どもへのつきまといなどの影響を無視するべきではありません。子どもにとって面会自体が負担にならないような慎重さが必要です。子どもの代理人をつける制度自体はあるのですが、なかなか面会交流を行う調停で、子どもの代理人をつけてもらうこともできていません。

 実際、離婚した直後の元夫がはじめての面会で子どもを殺してしまった事件もありました。安易に「面会できるようになればいい」というものではないのです。子どもを面会させる側の同居親がこのニュースを見たあと、会わせることに不安になった事例を私はいろんなところで見聞きしています。
 冒頭で紹介したように、親子断絶防止法という法律が親子断絶防止法という法律が国会議員間で検討されたことがあります。しかし、私は、面会が安全に行われる制度の保証がほとんどないまま、別居親に継続的に会わせるのが原則であるというこの法律については賛成しません。推進するウェブサイトには、「あくまで子どもに会わせるべき」ということが書かれていますが、すでに今でも裁判所でも十分に(むしろ強引と感じることも多くあります)同居親に対して面会が勧められているのです。むしろ現状会えないという親にはなんらかの理由があるのではないか、会えない親の言動をSNSなどで見るたび、感じます。

 もちろん、面会交流を安全に行うための支援が十分ではない、という問題もあります。離婚調停などが増えたにもかかわらず予算が不十分で、調査官による十分な調査や試しに短時間の面会を繰り返して様子を見つつ調停を進めて最終的な取り決めをする余裕がないと言われているのもそのひとつです。また、協議離婚や面接交渉の調停後などに面会交流を支援する団体(例:公共社団法人 家族問題情報センター)のほとんどは無償ではありません。また、地域によっては、そのような団体がない、遠く離れていると利用しにくいところもあります。裁判所で面会交流について調停をしても、面会を裁判所で行うのはせいぜい数回ですし、平日昼間にしか裁判所は空いていません。実際、小さい子どもは慣れない場所に連れて行くとそれだけで緊張して、ギャン泣きすることもあります(うちの子がそうです)。

 明石市では市役所で面会交流支援を行っているようです。できれば、このように収入が低い人でもハードルが低く、利用しやすいサービスが増えると実質的に別居した親も利用しやすいので、このような取り組みが広がることを心から強く希望します。

 現在、面会交流については、立場の違う人々の間での言い争いが巻き起こっています。しかし、一般論で面会交流の是非を論ずるのではなく、どうすれば子どもの成長にとって望ましい形で安全に面会交流を実施することが出来るのか、そのためのサポートをどう整えていくのか、などきめ細やかな議論こそが重要なのです。

※11月15日:一部表記を訂正いたしました。

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