私は小劇場で15年ほど、
本数にしたら沢山の数の舞台を踏んだ。
だけど演技をきちんと学んだことがない私は、
自分の演技にはいつも疑問があり、
たまに演技に対して批判を受けることもあった。
女優として成長していないと感じ、
小劇場の舞台から降りた。
そして演技を学ぶことを決めたのだが…
20年近くも独学で舞台を踏んでいると、
それまで身に付けてしまった自分の癖や独自の演技論が体に染み付いてしまっている。
終いには「私は役者なのだ」という願いに近い信念まで持ち合わせてしまっている。
こいつがとても厄介だ。
頭では「役者なんて言える技量じゃないでしょ?」と思っているからこそ、演技をイチから学ぼうと決めたくせに「私は役者なのだから」と必死に役者であることにしがみついているのだ。
ああ。そんなものは余計な荷物だ。
新しいものを身に付けて、
よい演技を追及したいくせに。
私は役者なのだ。
その言葉にしがみつくことで安心しているのだろうか?
「素敵な女優になりたいです。どうしたらなれるの?」
子どもが夢を語るように、
そう素直に言っちゃえば良いのに!
もう、
私は役者なのだ。
というラベルを捨てよう。
そう決めた。
役者だと思っている自分を一回捨てよう。
私はただの私だ。
役者の私ではない。
なんでもない。誰でもない。ただの私。
一人の人物として自分を捉えてみよう。
そう思った。
私として日々を生きる。
そのなかの一つに演じるという事柄がある。
それだけだ。
イチから歩こうと思う。