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感動の1冊~島根県飯南町の「今」を記録した書籍「余白の中で。」

今回は、本についてちょっと書かせてください。飯南町とはちょっとご縁があり、「みんなでつくる中国山地」でご一緒している方々が関わっている本だったので、これは!と買って読んでみたらとっても素敵で、学ぶことがめちゃくちゃありました。友人にもなかば強引に貸してしまいました。地域づくりや地方移住、シティープロモーション、地方からの情報発信などに興味がある人はぜひ手にしてほしい1冊です。 

飯南町まちづくり推進課が企画・編集。冒頭から、「都会にはない田舎の良さを発信しよう」というつもりがあんまりないところに、ただならぬものを感じます。ライターと11人の町民ライターさんが執筆しているのですが、どの記事も書き手の個性が光ってステキ。それぞれの視点で、飯南町の人や暮らし、文化を紹介しています。どうしてその人に話を聞こうと思ったのか、取材を通して自分が何を感じ、これからどう生かしていきたいのか、まで書かれていて、「私ノンフィクション」と言ってもいいような読み応えのある内容です。※注:私は沢木耕太郎ファンです。

ガイドブックに載らない、町の魅力

小学生がランドセルに付けている「熊よけの鈴」についての記事もあります。末尾の「観光ガイドには載らなくても、いつまでも残したいこの町の魅力の一つ」との1文に共感しました。飯南町では当たり前にある登下校の1場面から、鈴を付けて、自分の居場所を教えながら歩くスタイルがなぜ飯南町では成立するのか?を考えることで、地域の子どもを見守る優しさが見えてくる記事になっていました。

私たち「阿東を盛り上げたい女性のネットワーク」のマップ部が作った阿東の四季マップでは、小学生が熊よけの鈴を付けて登下校していることを、簡単な文章とイラストで紹介しているのですが、あくまで阿東のプチ情報扱い(ぜひ読んでほしいという思いはある)。目の前にある風景の奥にあるものを掘り下げて文章にするってステキなことだなと改めて思いました。

柴犬にもハートをもっていかれる

この本を知ったきっかけは、写真を担当された七咲友梨さんから写真展のチラシをいただいたこと。チラシに使われていたのが、本の表紙の写真でした。雪景色の中に佇む3人と、柴犬1匹。リードにつながれて、こちらを見ている!柴犬飼いとして、この柴犬らしさ満点のたたずまいにノックアウトされてしまいました。

飯南町とのご縁~ローカルジャーナリスト講座

私と飯南町のご縁は、2021年秋に、町が開催した「ローカルジャーナリスト養成講座」のゲストスピーカーをさせていただいたこと。このとき、初めて飯南町を訪れました。講座では、ローカルジャーナリストとして大切にしていることなどを少しお話して、受講生の皆さんが書かれた記事を読ませていただきました。受講生の皆さんが見つけてきた地域のネタは、どれもピカイチ。この本の執筆者の中には、講座でお会いした方のお名前もあり、地域からの発信に興味を持って続けてくださっているんだなと、嬉しく思っています。

講座の際、受講者の皆さんに、阿東の四季マップを配布したのですが、そのとき飯南町にもりんご園があると教えてもらい、阿東との共通点を感じたのでした。さらには、この本を通じて、阿東の小正月の伝統行事「トイトイ」と同じ、「とろへい」が飯南町にあると知りました。飯南町は空間が開けていて空が広い、という記述もあり、阿東と似ているのかなと、再訪してみたくなりました。(前回は娘を妊娠中で、軽いつわりで食欲がなく、グルメを堪能できなかったことが心残りなのです)

飯南町の姿勢から素直に学びたい

さて。本に話を戻すと。この本をつくったことが町のシティープロモーションの一環で、「余白の中で。」が町のブランドメッセージだということが、とにかくすごくないですか。こういうことをやれる自治体が山口県にあるだろうか…?(いや、ない)と、元地元紙記者としてはつい考えてしまいます。「余白の中で。」は、とっても大胆で、飯南町だからこそできる発信だと思うのです。行政の担当者も、地域の書き手も、開放的で柔軟な考え方を持ち、自分の町をまっすぐに見つめ、深く思索を巡らせたからこそ、この本ができたのではないでしょうか。

この本に書いてあるようなことは、熊よけの鈴の話のように、ガイドブックには載らないし、地方紙を含めたマスメディアには載らない話です。私も記者時代からこういう話こそ掬い取りたいと思っていましたが、なかなかに壁は厚かったです。一見すると新しくもない、珍しくもない、どこにでもありそうな話だからです。けれども、日々の暮らしの中には、書き留めておきたくなるような瞬間があるはずで、それはきっと誰かの心を打つと思うのです。日常を大切にするまなざしを忘れずに、山口の地から発信していきたい、と改めて思っています。

書籍についてはハーベスト出版のページをご覧ください。


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