財布購入までの長い道のり
約1年ほど前から、財布を買おうと思って、色々探し回っていました。前に使っていた革の財布が好きだったので、その柔らかい手触り重視で探したのですが、なかなか見つからず、ようやく似たような手触りを見つけました。それが、鹿革でした。
しかしそのお店では良いデザインが見つからず、しばらく財布探しは中断していました。
数カ月後、たまたま鹿革を扱っているお店を発見し、とうとう運命の財布に出会いました。柔らかい手触り。紺色で、私の分厚い財布の中味もまるごと入るような大きさ。そして中を見てみると、ピンク。攻めてるなーこの色。と思い、一目でこの財布が気に入りました。
しかし、お値段が……
とても高くて私のお給料では買えませんでした。
それからお金を貯めはじめた私。
ようやくメドがついて、買いに行こうとしたら、コロナが流行ってきて、タイミングを見失い、自粛期間に入ってしまいました。それでも毎日毎日、頭の中にその財布を思い浮かべ、自粛が開けても、いつ行こうか。いや、まだだめだ。と、自問自答を繰り返し、ようやく先月、意を決して買いに行きました。しかし、コロナの影響か閉店時間が早まっており、お店は閉まっていました。
私は、もはやここまでか。と、一旦あきらめかけました。けれど私は覚悟を決め、翌日、再びお店に行ってみました。
前に見たときから、半年以上経っていたので、あの財布はもうないのではという一抹の不安がありました。けれど店頭を見ると、あの紺色の財布があったのです。しかし、頭の中で補正されていたのか、思っていたよりも落ち着いた紺色でした。派手過ぎやしないかと思ってちょっと心配していたので、ちょうど良かったわと思い、中身を開いてみると……
あれ?なんか違う。
頭の中で何回も思い描いた、あのピンクじゃないのです!
中味が青に変わっていました。
お店の人に聞くと、前は赤い生地もあったが、全部青生地に変わってしまったとのこと。
なんと言うことでしょう。ピンクじゃなくて、赤だったのです。
これも、自分で好きな色に補正していたのでしょうか。私はあの財布がないことに、2重の意味で衝撃を受けました。そんながっかりする私を見かねて店員さんが、「次回生産の際に、一つだけ赤の生地でお作りすることも可能ですが……」と言ってくださいました。
「じゃあ、お願いします」
自分で言って、自分でびっくりしました。本来の私なら、欲しいものがなくても、適当にその中から選んで、「あ、じゃあ、これでいいです」というタイプなのです。けれども、うっかりとお願いしちゃっていたのです。もう毎日毎日その財布を、思い出補正する程に思い描いていたので、本当に欲しかったのだと思います。
なんだかめんどくさい大人になっちゃったなぁ~と後から思ったのですが、許してください。
そして一カ月後、待ちに待った電話が来ました。
そして今日、取りに行ってきました。
お店の人が確認のため、中身をパラパラ〜っと開いてくれた時、私は、「あ、あのピンクだ」と思いました。やっぱり私にはちょっとピンクに見えました。ほっとしました。
この日の為に、私は昨日、小銭をハンドソープで洗い、十円玉は、冷蔵庫に入っていた一年前の賞味期限のケチャップに漬け込んで、きれいにしておりました。
そして、眼鏡をはずしたまま、新しい財布に、その小銭を入れました。
あんまり見えなかったです。
それでも、革の良い匂いがしました。
ついに、念願の財布を手に入れることができました。
店員さん、職人さん。わがまま言ってしまい、すみません。
そして本当に、ありがとうございます。
この財布で、頑張ってお金を溜めて、早く人に募金できるような人間になりたいと思います。