見出し画像

映画『ミッドサマー』考察 / あのお祭りは何だったのか? ※ネタバレ有

※映画『ミッドサマー』・『ミッドサマー ディレクターズカット版』のネタバレが含まれます。
※少しだけ映画『ヘレディタリー/継承』についても触れています。全くのネタバレ無しで『ヘレディタリー/継承』を見たい!という方はご注意ください。

2020年に日本で公開された映画『ミッドサマー』。映画『ヘレディタリー/継承』のアリ・アスター監督作品ということもあり、日本での公開前からネットでは盛り上がっていました。「画面が明るいのに……明るいからこそ怖い」というよくあるホラーとは真逆のアプローチが新鮮に感じた方も多いのではないでしょうか。
そんな未知の恐怖と共に疑問が湧いた方も多いでしょう。公開から今でも様々な人が考察を書いてきました。

詳しい解説等は、公式サイト様の解説が分かりやすくて、めちゃくちゃ面白いのでそちらを是非↓
映画『ミッドサマー』公式サイト

インタビュー等でもアリ・アスター監督は「この村はこういうので……」と話しています。いわゆる「正解」がすでにある設定。ここの考察ではそれらをまるっと無視しています
これはこういう見方が出来るんじゃない?こう考えられるのも面白いな、と妄想している考察です。
実際はどうあれ、こんなふうにも見えるんだなあ、と面白がっていただければ幸いです。

【考察①】悪魔信仰か?

画像1

画像出典:映画『ミッドサマー』公式Twitter

「9」の数字がよく使われたり、「熊」が登場したり……ここホルガは、キリスト教が入って来る以前の、古代北欧神話や自然を信仰する古代宗教が色濃く残っている村のようです。しかし、そう考えると冒頭の女性のセリフが不自然なように感じます。
祝祭の始まりを宣言する女性。手を叩いて「精霊よ!死の世界へ還れ!」と叫びました。豊穣を祝うミッドサマー(夏至祭)で、自然の一部であり信仰の対象でもあるだろう精霊にわざわざそんなことを言う理由はなんなのでしょう。
もしかすると精霊ではない何かを信仰しているのかも……?精霊と対照的な何か、だとすると、悪魔とか……?

【考察②】悪魔の誘い

私が「悪魔を信仰しているのか?」と感じてしまった要因の1つが、クリスチャンを誘惑した「光」の存在です。
クリスチャンを誘惑していた女性。彼女がクリスチャンに「こっち」と誘ったシーンで、彼女の顔に光が反射していました。
アリ・アスター監督作品の映画『ヘレディタリー/継承』にも似た演出があります。そこでは「悪魔が誘っている」「誘導している」演出でした。
では、本作でもそうだったのではないでしょうか?クリスチャンが自ら行動するように、悪魔が誘導していたように見えます。

【考察③】本当に何百年も続く村なのか

画像2

画像出典:映画『ミッドサマー』公式Facebook

本作を観ていて、多くの人がこの村を「綺麗だなあ」と感じたのではないでしょうか。自然の美しさだけでなく、建物も道具や食器も綺麗です。まるで新品のよう。
最初は、主人公たちがハイになっているから綺麗に映っているのだろう、と考えていましたが、どうも違うようです。時間が経ってもこの村はとても綺麗。そこに違和感を覚えます。
どんなに綺麗に使っていても、使っているからこそ、道具には年期が入ります。使い古された美しさがあるはずなのに、ホルガ村は新品のような綺麗さがありました。

もしかすると、ホルガ村は儀式の年だけに作られる村なのでは?と勘ぐってしまいます。普段はごく普通の町に住み、ミッドサマーの時期に集まって来て……なんて。

【考察④】ヒッピーとの共通点

画像3

画像出典:映画『ミッドサマー』公式Twitter

ホルガ村は60~70年代のヒッピーたちが集まって作った村、とは考えられないでしょうか。
・現代社会から解放された場所
・大麻を使って解放されたり、自然と一体となったりする手法
・性に対して大らか
・コミューンを形成

……と、このようにヒッピーたちとホルガには共通点が多いように感じます。もしかすると、60~70年代にヒッピーたちが集まってここホルガを作ったのかもしれません。今回72歳となってこの世を去った人、60~70年代は20代。ありえてしまう年齢なのも興味深いです。

【考察⑤】客人への最高のもてなし

画像4

画像出典:映画『ミッドサマー』公式Twitter

ホルガの人々にとって「死」は悪いものではありません。ただの通過点の1つにすぎないのです。その「死」が意味のあるものなら怖くはなく、誇らしいとまで思っているよう。
さて、お客様が見えたらどんなもてなしをするでしょうか。食べ物、飲み物、特別な儀式をお見せして……ホルガの人々にとっては、お客様を「死」でおもてなしをしているだけなのかもしれません。

【考察⑥】子どもが生贄にされるところだった儀式

ディレクターズカット版にのみ収録されている、夜に行われた儀式。この儀式では危うく子どもが水に沈められるところでした。
もしかしたら本当に生贄にするつもりだったのかもしれません。しかし、実際には生贄にはなりませんでした。それは、ダニーが止めたからではないでしょうか?
ダニーたちの寝ているベッドの壁にはそれぞれの人物の役割が描かれています。それによれば、ダニーは元々「メイクイーン」になるべく連れてこられたように感じるのです。本作のラストでも、誰を生贄にするかの決定権は「メイクイーン」であるダニーにありました。ダニーが「生贄にする」と言えば殺すし、「しない」と言えば殺しません。この場でも、その「メイクイーン」になるダニーに決定権は委ねられていたのではないでしょうか。

「勇気を示したのだから止めて」という村人のセリフで生贄の儀式は中断しました。その「勇気」とは、ダニーに対して言ったようにも思えます。知らないコミューンの神聖な儀式に口を出して良いのか?どちらにしても黙っていられなかったダニーに対する称賛のように聞こえます。

【考察⑦】メイクイーンのその後……

画像5

画像出典:映画『ミッドサマー』公式Twitter

メイクイーンの写真が何枚も飾られていましたが、私前回優勝したよ!という女性は一人も登場しませんでした。「見て、あの人が優勝したこともあったんだよ」なんて説明もありません。カラー写真が残っているのだから、72歳になっていない(存命の)優勝者もいるはずなのに……。
メイクイーンになった後、その女性はどこへ行くのでしょうか?その後結局は殺されるのかもしれません。 実は毎回、外から来た人を優勝させて最後には生贄にしていたのかも……。

【考察⑧】空白の4日間

画像6

画像出典:映画『ミッドサマー』公式Twitter

今回のホルガでのお祭りは、90年に一回の「特別なもの」だと語られていました。しかし、何が特別だったのでしょうか?72歳になると、崖から飛び降りて次のサイクルへ行くことが?しかし、それは72歳の人が出ると毎回やっていることだと話されていました。
ではメイクイーンを決めることが?歴代のメイクイーンのカラー写真も残っていることから、メイクイーンを決める競争も90年に一度ではなさそうです。
では何が特別だったのでしょうか?

そもそも本作では時間が5日しか経っていません。最初に、9日間のお祭りだと言われていたのにも関わらず、です。
外部から「生贄」が招かれるのは毎回のことで、それが終わった4日間こそが本当の「特別なミッドサマー」なのかも。
……いえ、そもそも「特別」だというのは外部から人を呼ぶ口実だったのかもしれませんが……。

【考察⑨】なぜ心地良いのか

画像7

画像出典:映画『ミッドサマー』公式Twitter

ダニーは時々、本人も予想できない時にパニックに陥りました。呼吸が浅くなり、発作のように苦しみます。ダニーはそんな時、トイレなどに籠って一人で対処しようとしていました。
しかし、終盤ではダニーの周りにいる人が一緒に苦しんでくれます。しかも呼吸も合わせてくれるのです。
今まで誰も私を見てくれなかったのに、ここでは外側も内側も全部見て・合わせてくれる。
ダニーにとってはこれまでで一番心地良く感じたのではないでしょうか

【考察⑩】共鳴するダニー

画像8

画像出典:映画『ミッドサマー』公式Twitter

ダニーは早いうちからこの村に共鳴、共感していたように思います。最初は、あの72歳の2人が崖から飛び降りた時。ダニーは目を背けるでも泣いたり叫んだりもせず、穏やかな表情をしていました。
周りのホルガの人々と同じように静かです。それは、「死んだ人」に共鳴していたからではないでしょうか。肉体から離れたら、どんなに体がぐちゃぐちゃでも関係ありません。「魂」は穏やかなのでしょう。
そして、生き延びてしまった男性に木槌が振るわれた瞬間、ダニーも思わず息を吸い込みます。生きる為に息を「ハッ」とするのと真逆。なんだかダニーはどんどんこの村自体に共鳴しているように見えてしまいます。
そして、ダニーはそんな自分に気付いているからこそ早くホルガから出ていきたかったのかも。

【考察⑪】『オズの魔法使い』な彼ら

画像9

画像出典:映画『ミッドサマー』公式Facebook

ダニーたちのメンバーは『オズの魔法使い』のようなキャラクターになっています。
ダニーはドロシー。家族がいなくなり、お家を探す、というキャラクター性もぴったり合っています。
クリスチャンはライオン。臆病で勇気がない人物です。ダニーと別れたいと思っているのに別れを切り出す勇気がなく、ずるずると関係を続けていました。優柔不断で、「ホルガ村を題材に……」とジョシュに言うのも、もう引き返せなくなってから。卑怯者なキャラクター性も、映画『オズの魔法使』のライオンとそっくりです。
ジョシュはブリキ男。彼は頭が良い人物ですが、時々心無い言葉や表現をします。人のコミューンの大切な場所で、写真を撮りたがり、聞きたがり、知りたがり……。自分の研究を第一に考えています。心の中に土足で上がり込むような事をするジョシュは、まさに心のないブリキ男のようです。
そして、マークはかかし。物事をあまり深く考えず、話すことは女性やセックス、ドラッグのこと。大切な木に小便をかけて村人に怒られても「なんで?」と全く分かっていない様子です。マークは脳みそのないかかしとリンクしています。
本作のディレクターズカット版では、空港からホルガの村までの車内の会話のシーンがありました。そこでは彼らの「心無い」「脳のない」「臆病な」会話を見ることができます。気になった方はそちらもぜひ

そんな『オズの魔法使い』な彼らは、森の中の黄色い花の道を辿ってホルガの村までやってきました。ここで彼らは求めるものがもらえたのか……。

まとめ

映画『ミッドサマー』について考察しました。あまり宗教などに明るくないので、辻褄の合わない考察もあるかもしれません……。
見る人を惹きつける物語の空白が多い作品なので、考察できる部分がたくさんある映画です。ぜひあなたの考察も聞かせてください。

いいなと思ったら応援しよう!