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ファインダーをどこに向けるか

手持ちの一眼レフは10年以上も前のNikonで、素人のわたしが使うぶんには何ら問題ない性能をいまも維持しているが、いかんせん重たくて持ち歩くのが億劫になり、結局、ほとんど使用しないことが続いていた。新しいカメラを買おうと時折思うものの、壊れたわけでもないし、とつい躊躇してしまい、標準レンズのほかに広角も買ってみるとか自ら興味をそそる工夫をしてみたりもしたが、やっぱり重たさに負けてしまい、ここ数年は「今日は撮影するぞ」という日にしか持ち歩かなくなっていた。しかし、たいてい、シャッターを切りたい瞬間というのは「今日は撮影するぞ」という日じゃないときに訪れるものなのだ。

それで散々悩んで、今年、iPhone11 Proを買った。iPhone 11、しかもProとなるとカメラの性能、相当いいと聞いて、ならば十分だろうと。最初のうちは確かに楽しかった。何よりスマホはいつも持っているものだから、いま撮りたいという時にいつでも撮れるのがいい。そのうえ綺麗に撮るのにほぼテクニックいらず。iPhone 11 Proはケータイと思うとやや重たくて大きいが、小さなカメラ付きタブレットと考えたら重たいとも大きいとも思わない。むしろ軽くて小さい。

しかし、やっぱり、なんか物足りないのだ。前にも書いたけど、わたしは「ファインダーを覗く」という行為が相当好きみたいだ。ファインダーを覗くと、世界がそこだけに切り取られる。余計なものがなくなって、ファインダー越しの景色と自分だけの世界に入り込める。たぶん、そこに、ちょっとした瞑想のような効果があるんじゃないか。わたしがiPhoneで物足りないのはそこである。画面じゃなくてファインダーを覗きたい。タッチじゃなくてプッシュでシャッターを切りたい。

というわけで、自分へのクリスマスプレゼントにカメラを買ってしまった。いろいろ研究したが、一眼はまた重くて持ち歩くのが嫌になりそうなので、ミラーレス一眼にした。届くのは明日。けっこうな金額をかけてしまったが、わくわくが止まらないので、これでいいのだ。ということにする。

2021年はもっと写真をたくさん撮りたい。言葉も書きたい。社会で起きていることから目はそらさず、しかし美しい世界を見ていたい。それってまさに10年前にわたしがけっこう熱心に取り組んでいたことでもあった。ぐるっとひとまわりして昔と同じところに戻ってきちゃった。でも、きっと螺旋階段みたいな感じで、ちょっと高いところにいる。と思いたい。そんな心境の2020年の終わり。

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