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美術館はれっきとした社会教育施設だった!

職場で年4回発行している機関紙で、社会教育・生涯学習に関係する施設の紹介をしている。
1月号の取材先を、北九州市立美術館にしようということになり、今日行ってきた。

取材は午後からだったので、せっかくだからと美術館内にあるカフェ・ミュゼでランチ。
美術館内のお店ってちょっとお高いけど、ここのカフェは見晴らしも良くて雰囲気がステキ。

座った席から目に入ったランプシェードが、影絵のデザインでかわいかった。

取材対応してくれたのは、美術館館長の後小路雅弘さん。
この方のお話が、とっても良くて、勉強になった。

来年50周年を迎える北九州市立美術館。
なんと、九州で初めてできた美術館だったそう!

もちろん、小さな美術館は他にもあったけど、しっかりとした、それも公立の美術館は、当時九州にはなかったんだとか。
その後1860年代に、公立の美術館をつくろうという動きが各地で興ったそうで、北九州は先駆的だったとのこと。

「丘の上の双眼鏡」という愛称がある北九州市立美術館は、磯崎新という建築家の設計。
近年では映画の舞台にもなっている、こんな独特な建物を建てられること、九州で初めての美術館ということも含めて、当時の北九州にはそれだけのパワーがあったというお話だった。

ちなみに、北九州市立美術館では、会館当初から、市民のボランティアを数年かけて育成して、美術館のガイドや作品の整理など、様々な活動を行っているそう。
そして、美術館にボランティアを取入れたのは、北九州市立美術館が全国で初めてのことだったんだとか。

このボランティアは、単に人手を補うというものではなくて、美術館と市民をつないでいくもの、市民の中に美術館を根付かせていくものとして存在しているとのこと。
数年かけて育成しているということからも、それがよくわかる。

50年前は、美術館は非日常で、キレイな服を着て行くような特別な場所だったけど、これからの美術館は、そういう側面もありながらも、もっと日常に密着したものとして存在していかなくてはいけないと思っているとのことだった。

日常や地域に密着という観点から企画され、現在展示されていたのが、タイ人のナウィン・ラワンチャイクンというアーティストの「新生の地」という作品。

これは、火災にあった旦過市場の人たちを取材して、映像や絵に残したもので、火災を乗り越えて復興を目指す人たちの姿を伝えたいと、美術館が企画して制作を依頼したものなんだそう。

美術館は、色々なところにある作品を借りてきて展示するというイメージだたけど、こうして自ら生み出していくという取り組みもしていたことに驚いた。

美術館に行かない人に、なぜ行かないのかというアンケート調査をした美術館があるらしく、一番多かった回答が、「学生の時の美術の成績が悪かったから」というものだったそう。

正解があると思うから、「よくわからないから行かない」となってしまう。
でも、わからなくていいんだと、館長は言われていた。
わかるということは、それだけのものであって、色々な側面があるからわからない。
わからないからこそ、わかりたいという思いになる。
それが大事なんだ、というお話を聞いて、なんだか励まされた気持ちになった。

北九州市立美術館では、市内全小学校の3年生を対象に、ミュージアム・ツアーをしていて、今日も子どもが来ていた。
これは、集団でぞろぞろ観てもらうのではなく、少人数に分かれてガイドが色々な説明をしながら美術に触れてもらうものだそう。
そうやって、「わからなくていい」ということを知ったり、美術館への興味を持ってもらうことで、将来また来てくれると嬉しいとのことだった。

他にも、乳幼児を連れた親御さんが来られるように、休館日に年2回キッズ&ユースデーという日を設けたり、様々な仕掛けをしている。
そうした色々な取り組みについても、課題はあるから、研究が必要ということを言われていた。

美術館は、文化芸術の側面で捉えてしまいがちだけど、今日お話を聞いて、立派な社会教育施設なんだ!ということを実感できた。

とっても良い時間を過ごせて、大満足。
美術館を出たところに、この時期に開花する桜が何輪か咲いているのを見つけて、得した気分。

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