年収3000万円とスマイル0円
赤ちゃんの笑顔は全てに満足したような笑顔だなと思う。大人になるにつれて、笑っていてもどこかに諦めやら皮肉やら冷めた感情が混じったような笑顔になってしまうけれど、赤ちゃんの笑った顔は本当に無欲な心の底からの笑顔だなと思う。得られるものは大人になってからの方が多いはずなのに、全然満足しなくなっていることが不思議だ。
この間、夫の誕生日祝いとして、久しぶりに夫婦でずっと行きたかったフレンチで食事をした。その時に隣のテーブルから聞こえてきた会話がおもしろかった。隣の男性は「日本人で年収3000万円以上は人口の5%しかいない。自分はそのわずか5%に入っているのに今日は百貨店の外商にひどい扱いを受けた」というようなことを話していた。そのデータが正しいのかはさておき、かなりのお金持ちらしいその男性が全然満足していないことに驚いた。しかも、そのお店は地元では有名なフレンチレストランのはずだが、「こんなお店があるなんて知らなかったけどおいしいね」と言っていて、何年も前からこのお店に憧れてやっと食べにこられて感動している私たちとは雲泥の差だった。高級フレンチにふらっと行けるお金持ちよりも、一生に一度の幸せだと盛り上がっている私たちの方がなんだか幸せのような気がしてしまった。どう考えても気のせいなんだろうけれど。
コロナ禍になってからは外食もほとんどしなくなり、テイクアウトでも十分おいしいものが食べられて満足していたけれど、やっぱりその時その場に偶然居合わせた人々で場を共有して食事をするのはおもしろいものだと思った。食事以外のノイズもまた思い出に残って楽しい。久しぶりの夫婦二人の時間だったが、実家に預けてきた娘の笑顔が早く見たいと思った。