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春を待つ、この季節が一番好きかもしれない
いつのころからか冬が憂鬱だった。雪国に住んでいるのもあるかもしれない。でもそれは大人になってからの話で、子どもの頃はむしろ春が嫌いで冬が好きだった。
葉が落ちた細い枝から透けて見える灰色がかった薄青の空。
学校から帰ってくると母が作ってくれたロイヤルミルクティー。
毎年同じ文房具屋さんで来年のカレンダーを迷う贅沢な時間。
思い返せば冬も素敵なことがたくさんあったし、学生のうちはどうしても春は出会いと別れの季節の影響が大きく、冬が好きで春が嫌いだったのだと思う。
大人になってからは、冬になるとまずもう外に出るのが億劫になってしまった。一方、娘は雪の上を歩くのが大好きで「おんも行くよ」と言うと「おんも!おんも!」と大喜びする。自分も昔はこんな風に素直に冬を楽しめていたなと思い出す。
最近は仕事が終わっても辺りがまだ少しだけ薄明るくなってきたのが嬉しい。まだまだ冬服が手放せないけれど、空気に以前のような鋭さはなく、日差しは日に日に力強くなり、匂いはもう春の匂いだ。
春を待つ、この季節がもしかしたら一番好きかもしれないなと最近は思う。