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奄美諸島伝統発酵食品「ミキ」
※サイト移管のため、過去の記事を掲載しています。
奄美諸島伝統発酵食品「ミキ」の製造・販売を行っている陽だまり堂の斉藤達也さんを講師でお迎えし、ワークショップを開催しました。
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そもそも「ミキ」って?
「ミキ」はお米とサツマイモを原料とした発酵食品で、奄美地方で古くから作られていました。「ミキ」の名前の由来は「神酒(みき)」と言われていて、神様に捧げるお酒だったそうです。収穫祭や豊年祭などの神事で神棚にお供えされていました。
元は「口噛み酒」(巫女さんが口の中でご飯を噛み、ツボに戻して発酵させた酒。日本酒の原型と言われている。)だったそうだが、奄美地方では、人がお米を噛む代わりに、サツマイモで代用したのが始まりと考えられています。
沖縄でもミキはスーパーなどで販売されていますが、沖縄のミキはサツマイモを使用せず、麦が使われていることが多い。缶入りで広く販売されていて、自動販売機でも見るので、庶民の味なのかな?!砂糖で甘みが加えられているものが多く、発酵の度合いは奄美のミキより弱いとされています。
一方、奄美地方のミキの原料はサツマイモとお米(砂糖が入っているものの方が多い)。生のサツマイモをすりおろし、炊いたお米に混ぜ、3日程度室温で発酵させる乳酸菌飲料。甘酒より甘くはなく、ほんのりとした酸味を感じる優しい味。
(今回のブログでは、「ミキ=奄美地方のサツマイモとお米のミキ」でお伝えします。)
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ミキの発酵
サツマイモには「βアミラーゼ」という強力な酵素が含まれています。その酵素がさつまいもとお米のデンプンを分解し、甘み(麦芽糖/マルトース)に変換します。さつまいもをゆっくり加熱して焼き芋を作ると甘くなるのも同じ原理です。ちなみに、βアミラーゼがよく働く温度は60~65℃。75℃以上になると働かなくなってしまいます。
(参考:名古屋学芸怠惰区管理栄養学部)
ちなみに、米麹でつくる甘酒は麹に含まれるアミラーゼがお米のデンプンを分解して甘み(ブドウ糖/グルコース)に変換します。先に述べた「口噛み酒」は、唾液の中に含まれるアミラーゼがお米を分解して甘みを作り出します。
つまり、ミキでは米麹を入れない分、米麹の役割をサツマイモが担っているということ。ミキは言わば、「サツマイモでつくる甘酒」。
私たちの舌は、ブドウ糖の方が甘みをストレートに感じるため、ブドウ糖が2つくっついた分子構造の麦芽糖では、甘みを弱く感じます。だから、ミキよりも麹の甘酒の方が甘みを感じやすい。
「ミキを飲ませ始めたら周りがどんどん元気になっていった」陽だまり堂斉藤さん
名古屋市でミキの製造・販売をしている陽だまり堂の斉藤さん。サーファー仲間と飲み明かした翌日、ひどい二日酔いになり、そんな斉藤さんを見かねた友人から「これ飲んでみな」と言われて飲んだのがミキでした。
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「飲んだらなんだか、体がスッキリして、なんだこれは?!ってなったんです。それまで何度も奄美にはサーフィンをしに行っていたけど、全然知りませんでした。
改めて、ミキの作り方を教えてもらいに奄美に行きました。奄美大島に移住された自然料理研究家の田町まさよさんが砂糖を使わないミキのつくり方を研究されていて、田町さんから直接教わった友人の奥さんから教えてもらいました。 サーフィン仲間のおばあちゃんが奄美大島にいるんですが、その方にも、昔はお祭りの時にどうやってミキを作っていたのかなど話も聞きました。
90歳近いおばあちゃんで、今はほとんどミキを作ることがなくなってしまったけど、それでも娘さんから『お母さんのミキが食べたい』と言われると、作って送ってあげるんだよ、と話してくださいました。 教えてもらった通りにミキを作り始め、父親が病気だったのと、遠くに住んでいるおばあちゃんもヒドイ便秘だったから、作ったやつを飲ませていたんです。そうしたら、みんな元気になってきて、『これはすごい』と。」 沖縄や奄美地方では一般的なミキも、本州で知る人はほとんどいない中、「陽だまり堂」を立ち上げて、ミキの製造・販売を始めた斉藤さん。
マルシェなどで地道に販売していくことにより、徐々にファンが増えています。ただ、周りで誰もやっていないことを始める苦労を痛感したそうです。
「材料も作り方も何も変えていないのに、なんかミキから変なニオイがするようになって。もともと発酵の知識とかもそんなにないから、何が原因か見当がつかなくて、しばらくの間、胃が痛くなるほど頭を悩ませていました。でも、知人に聞いたり、ネットで調べたりして、可能性があることを色々つぶしてきた結果、原因が分かったんです。
答えは『水』でした。近くの古いマンションの取り壊しに伴い、水道管に何らかの影響が出て、どうも水質に変化があったようで。そこをクリアしたら、また元のおいしいミキに戻りました。見えない菌や発酵の世界の難しさを感じたけど、これもまた経験値が上がったことで、勉強になりました。」
みんなでミキを仕込む
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最近は精米技術の精度が上がっているため、お米は優しく洗う程度。それを土鍋で炊いていきます。
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炊いている間に、さつまいもをすりおろしていきます。
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炊きあがって蒸らしたご飯をすりこぎですっていきます。ポイントは「右回し」。右回しはエネルギーや祈りを込めるので、斉藤さんはいつも、「おいしくなるように。皆さんが健康でありますように」と祈りを込めて作っているそうです。
しかし、これがなかなかの力仕事!
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「こんなに重かったら、右回しで祈りを込めるなんてできなーい(笑)!」と参加者さん。今回、仕込みの量が多いので大変ですが、量が少なかったらもっと簡単ですからね。
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ご飯がある程度冷めたら、すりおろしたサツマイモを加え、すりこぎでさらに混ぜます。
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容器に移して、仕込み終了!あとはおうちで発酵させていただきます。 今回、基本のミキのつくり方を教えていただきましたが、発芽玄米でやったり黒米や雑穀を入れたり、芋を変えたり、色んなバリエーションが作れるそうです。
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ミキランチ
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ワークショップの最後には、ミキランチ。ごはんには雑穀ミキを入れて炊き、塩麹漬け鶏肉にカレー味のミキソースでタンドリーチキン風。ドレッシングは粒マスタードとオリーブオイルでぼてっとした食べるドレッシングに。 ご飯に入れて炊いたら、甘みが増した感じがしました。みんなで食べながら、「発酵あるある(失敗話)」などで盛り上がり♪
ミキの活用まとめ
「ミキ」と聞くと、「何に使ったらいいかわからない」と思うかもしれませんが、ミキの役割を考えると、「乳酸菌」と「酸味と少しの甘み」。「乳酸菌を使う料理って何だろう?」「酸味を加える時ってどんな時だろう?」と考えてみましょう。
乳酸菌=糠漬け、キムチ。
酸味=お酢、ドレッシング。とか。
ミキはお酢ほど酸味がないので、酸っぱいものが苦手な方にもおすすめです。
乳酸菌や酸味だけではなく、サツマイモの食物繊維やビタミン、様々な健康成分も含まれています。
醤油や味噌、お酢などのその他の調味料のように、ダイレクトに味を左右するものではないため、「健康プラス」「栄養プラス」として色んな料理に活用してみてください。