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目に見えない不思議な迷路。


その日、
私は不妊治療をやめる決意をした。

子供が欲しいという思いを
捨てた訳ではない。
ただ、不妊治療をすることが
私の幸せではないと思ったから。

ぽつ、ぽつ、
季節外れの雨が降りだす。

頬にあたる冷たい雫は
心を鎮めてくれる母の手のようだった。

雨足が強くなるほど、
歩くのが遅くなる。

遠くで響く雷の音。

まだ大丈夫。
誰かにたよらなくても、
まだ歩ける。

次の瞬間、
耳をつんざく爆音に身体が震え、
後ろを振り向くと
立ち木が真っ二つに割れていた。

何が起こったのか、
頭の中は光で覆われていた。

しばらく
動く歩道に立ちすくむような浮遊感。

1分、10分、1時間?

どれくらいだろう。
時間が動いているのか、
それとも
時が停止しまったのか。

怖々しながら、
そっと瞼を押し上げる。

タージ・マハル。

私はここで生まれた。

名前はダミニ。
雷って意味がある。

懐かしい香り。
スパイスとお香が
絶妙な空気を作る。

ゆっくりと足を進める。
玄関まではだいぶある。

1歩ずつ、
石の硬さを感じながら、
前を向いて、
太陽の熱を感じていた。

カラン。

なんの音だろう?
四角い塊を蹴ってしまったようだ。

黒くて、
2つの穴がある。

手に取ってみて
ハッとした。

早く家に入らなくては。
歩速を上げて急いだ。

青春時代を過ごした
私の部屋。
そこには全てのものが
あの頃のまま残っている。

ソニーのウォークマンも。

カチッ。

耳を澄まして小さな音を拾う。

おぎゃあ
おぎゃあ

おぎゃあ
おぎゃあ

おぎゃあ
おぎゃあ




「ねぇ、ママー!
 おなかすいたよぅ」

「わかった、わかった。
 今日は寒いから
 おでんにしようねぇ」


おわり


最後までお読みいただき、
ありがとうございました。

今日は私が参加している
Bar「コミカルケチャップ」の応募作品を
投稿させていただきました。

はじめての試みでドキドキなので、
どうか寛大なお心でコメントを
いただけると嬉しいです。

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次回の参加意欲が倍増します♡

今日はおでんのように温かいものを
召し上がってぬくぬくしてくださいませ♪



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