見出し画像

【カテーテルアブレーション体験記⑥手術開始】

■13:45 2Fの手術室へ。

自動ドアが開くと、わぁぁ、テレビで見るような手術室!!

点滴の竿を引きずりながらトボトボと中へすすむ。手前の談話室?で3名のお医者さんが待期していて、主治医のH先生(着替えたて)をみつけて軽く会釈。検査技師ぽい方が3~4名、若い方が多い。奥には、私がのる”まな板”と、整然と準備された管やらなんやら器具たち、その周りをぐるりと取り囲むでっかい機械とたくさんのモニター・・・

好奇心と蒼ざめそうな気持ちがないまぜ状態ななか、看護師さんたち4~5名がわぁ~っと私を取り囲んでお出迎え。とてもニコニコ、きゃっきゃしている。「お名前は?」「生年月日は?」に怖くておもわず涙声になると、すかさず看護師さんが「大丈夫ですよ!(^^)」と手を握ってくれた。柔らかな人肌があたたかい・・・

そっか、そうなんだ。私のためにみなさんが準備をして下さって、そしてこれから、こんなにたくさんの人が、私の治療のために頑張ってくれるんだ!勇気がわいてきた。

■手術前の処置

「では、こちらに腰かけてください」と案内されて、"まな板"に腰をおろすと、電極らしきシールを背中にぺたぺた。「ここに貼りますね、ちょっと冷たいですよー」「今度はちょっとぬるいですよー」と声をかけながらテキパキとすすんでいく。言われた通り、本当に冷たくぬるいので思わずほほが緩んで「ぬるい(笑)」とこぼす。「ねー、あったかかかったらいいのにねー(^^)」その間も、肌が見えすぎないようにタオルで覆ってくれて「今は男子禁制なんで安心して下さいね(^^)」「寒くないですか?(^^)」「身体をさわる前には、必ず声をかけますから安心して下さいね(^^)」と気遣ってくれた。

そのまま寝転んで、両手をやわらかい紐のようなもので固定される。術中に動くと危ないので、手術同意書の中に「身体拘束についての同意書」も入っていた。H先生が「手術中に寝ぼけて起き上がろうとした人がいるらしいんですよ。心臓にカテーテル入ってますからね、相当あぶない」って言ってたな。「拘束」って聞いてたからどんなかと思ったけど、縛られている感覚は全くなくて柔らかいもので包まれている感じだった。

マスクは外されて、同時に「呼吸をサポートする酸素マスクをつけますね~」とカパ。・・・微妙に顔にあわない。「アラ(^^)お顔が小さいから合いませんね、紐を調整しますね」とごそごそ。

加えて、鼠蹊部あたりの準備がはじまり、「お尻の下にシーツを引きますよ、膝を立ててお尻をもちあげてください」と上げて下ろそうとしたら、パンツがしゅるしゅるる~と見事にさらわれる。オムツのようなもので大事なところをおおわれて、マエバリ?の完成。看護師さん4人がかかりの同時並行で、和気あいあいと、だがテキパキとすすんでいく。「わぁ(^^)おへそがキレイですねぇ!」よくしゃべる看護師さんの和やかな空気になんだか救われた。

手は縛られパンツをぬがされたからだろうか、、、だんだん体の力が抜けてきて、ぼ~っと天井を眺める。その後も連携プレーで準備はテキパキと進み、「清潔なシーツをかぶせますよ~」とファサとのせられ、「消毒しますね、垂れてくるのでちょっとぬるっとしますよ~」と鼠蹊部を消毒ぬりぬり。ぼんやり瞼をあけると、胸の上にはレントゲンの四角い機械が2つガシっと構えていた。私自身はもうやることは何もない。「よろしくね・・・」そっと目を閉じる。

■手術開始

どうやら準備が整ったようだ。聞きなれたH先生の声で、手術開始前の最終確認がなされている。「さといもこさん、38歳、女性。XXXX・・・。看護師のほうどうですか」「はい、XXXX・・・」ちょっと気が遠くなっていて、はっきり聞こえないが、おそらく10人近くいるのではないか。ありがたい。

開始。点滴を入れている左手首の血管がぴりぴりしはじめる、麻酔をいれているらしい。「大丈夫ですか~?」「ちょっと手首が痛いです、点滴」「しばらく血管痛がしますよ~」血管の中にあら塩でも流しているかのような、ごりごりしたかんじで痛い。が、しばらくするとぼぉ~~っとしてきた。眠いのとはちょっと違うような、ポヤポヤしている感じ・・・眠れはしないが。「眠くなりましたか~?」「うーん、眠れはしないけどぼーっとしてます」「プロポ3追加」・・・しばらくして「眠くなりましたか~?」「うーんあんまかわらんす」「プロポ2追加」・・・その間におそらく太ももに麻酔の注射が打たれたり、カテーテルをいれる管を入れられているのだろうが、チクリとした記憶すらない。・・・アレ、寝てた?

気づくと、胸元が内側からぴくぴくされている。え、もうここまで到達したの。くすぐったいような、不思議なぴくぴく。心臓ってここなんだ!ぴくぴく、ぴくぴく。体の中を通る感覚は一切なかったし、思っていたよりもかわいい感じだなぁ~、と余裕ぶっこいてたら、ドクドクドクドク!!検査が始まった。まずは不整脈の原因箇所となる回路を特定するために、発作を誘発させて探している。

「500!」「400!」の合図の後に、ドクドクドク・・・心臓がぐにゅと握られて持ち上げられたようなアノ特有の不快感。で、止められる。そしてもう一度「400!」⇒ドクドクドク⇒止まる、の繰り返し。自由自在に心臓をもてあそばれている、なかなかありえない状態だ。

ドクドクドク・・・(ピタ)・・・・ドクドクドク・・・(ピタ)

そういえば、このぐにゅっとした感じに何度も対処してきたなぁ。止まらなくて焦って焦って、それが旅先だったりするとどうしようかと思いながら薬を飲んで、すると解けるように消えてホッとして。そんな繰り返しだった。治療をしてしまえば、このぐにゅドクドクともお別れか・・・しみじみと回想する。

ドクドクドク・・・

「400!」

ドクドクドク・・・

不思議なもので、この状況にも慣れてくる。発作はおきてるけど、止まることがわかっているし、検査だからしばらくしたら終わることもわかっている。やりとりから、3名の先生のそれぞれの役割と、関係性を察知する。右側に主治医でカテーテルを触っているだろうH先生と、左側にもう1名下っ端らしき先生、さらに奥の方にボス先生。すべての指示はおそらくボス先生からでていて、それに下っ端先生が答えているのだろうか、H先生の声は聞こえないけど、もくもく淡々とやっているのだろう。

「こっちか!?」「Pは!?」

ドクドクドク・・・

「とんだ」「ケントか!?」「あばれているのはなんだ」

ドクドクドク・・・

「もどして」「早く!」

ドクドクドク・・・

・・・いやこれ、長くないか。ドクドクが長くて身体が徐々にしんどくなってきた。そして、追加でなにかを血管に入れられたのを感じた。おおお・・・差し込み口から腰のあたりを通っていくかんじがわかった。「いま、何か入れましたよね」と心の中でつぶやく。そんなこんなでポヤポヤもとけてきて、ぱっちり目も覚めている。その様子に気づいたのか、H先生が

医師「検査が長引いてます。ちょっと複雑で。大丈夫ですか?」
芋「うーん、ちょっとしんどいです」

先生たちの声は聞き取れないけど、ところどころ声が大きくなったり、なんかちょっとボス先生が苛立っているような様子を感じ取る。看護師さんが「検査しています、しんどいですね、もうちょっと頑張ってくださいね」と励ましてもらう。頼むから、見つかってくれ・・・そしてポヤポヤ・・・

すると、ぐわぁぁっと、上半身の下から頭の先まで、気持ち悪さが持ち上がってくる。例のあれだ、「心臓を一瞬だけ止めるクスリ」を打たれている。何度か目だけどコレにはこたえる。追加でもうイッチョ、ぐわぁぁぁ・・・

ボス先生「動かないように言って」

に続けて、看護師さん「危ないので動かないでくださいね」いよいよ焼くのだと察した。ミスるとペースメーカーと脅されていた。「焼くときは痛いよ」とも脅されていた。

呼吸も浅めに、じっとする。
けど、なんの痛みはなく、ホワンとちょっとあったかくなった程度。それを4回ほど。

そのあとも、うりゃうりゃうりゃと心臓をもてあそばれる。何度も何度も。ぐりぐりぐり、うりゃうりゃうりゃ・・・しばらくしてから、またうりうりうりうり、るるるるる・・・・

「はい、確認できましたね、終了です」「お疲れ様でした」

!!

医師「さといもこさん、誘発しても発作が起こらないことが確認出来ました。おそらく治療できていますので、これで終了です」

終わった、らしい。やった・・・

先生たちから看護師さんたちへバトンタッチ。また同じくテキパキと連携プレーが始まる。何をされているのかまったくわからないが、いろいろとつながっていたものはずされて、板を使ってストレッチャーに移される。ガラガラガラ・・・と外へ運ばれる。

「あ、御主人さん、終わりましたよ」と声をかけられ、オットが近づいてくる。見上げると、H先生とオットの珍しいツーショット。

芋「何時間たったの?」 
オット「3時間だよ、いま5時だよ」 
芋「えー、そんなに」 
H先生「ちょっと複雑で、検査に時間がかかりました。ですが、おそらく大丈夫です」

オットも一緒にエレベータに乗って、7Fの病室へ。ガラガラガラ~。そして、今度も4人がかかりでベッドへ。ふ~~。「これで終了です、ご主人さんに帰ってもらいますね~」「え、あ、はい、わかりました。」コロナで病室には入れないので仕方ないが、なんともあっけない。

が、とことこと近づいてくる足音が聞こえる。手前のベッドだったから、オットが病室の入り口ぎりぎりまできてくれた。ほっとして、笑顔でピース!「終わったよ~!」オットも安心して笑顔になり、帰っていった。ふ~

ヤレヤレ、ようやく終わりました。

■17:00 終了




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?