2020年のトレンディドラマ・MIU404とおじカワと猫村さんそして半沢直樹とナギサさん
遠き昔、トレンディドラマというジャンルがテレビ国を支配した時代があったのじゃ…(とおもむろに茶をすすりながら語る村の古老)
古老の話は長いので、ほんとにお茶飲みながらどうぞ。
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「トレンディ(形動) 流行の先端をいくさま。最新流行」
手元のスーパー大辞林にはこうあります。じゃあ「トレンディドラマ」って何かと考えて、パッと思いつくのは「東京ラブストーリー」「101回目のプロポーズ」「ロングバケーション」とかかなあ。フジテレビ多いですね。
主人公たちはカタカナの職業で、東京の、インテリアが雑誌のグラビアみたいにおしゃれなコンクリート打ちっ放しの部屋(寒そう)に住んでる人たちが多かった気がする。
流行の場所で流行の服を着ている美男美女が恋愛するドラマ。
トレンディドラマ全盛期から30年近く経った現在、2020年。
トレンドを追いかけるドラマは絶滅し、古老が語るような昔話となったのか…というとそんなことなくて、今でもドラマはトレンディ=みんながあこがれるようなものを作ってるんじゃないのかな、と思ってるんですよ。
「MIU404」男性四人から成る4機捜チームの指揮をとるのは女性の桔梗隊長。
「私の家政夫ナギサさん」メイは仕事に打ち込んでいるから、家事は男性家政夫のナギサさんに外注する。
「きょうの猫村さん」松重豊さんが演じる猫村さんは種も性別もどうでもよくいっしょうけんめい働いている。
「おじさんはカワイイものがお好き」小路課長は部下に慕われる上司で、でもカワイイものを愛してる。
「妖怪シェアハウス」澪のことを上司の野沢さんは全力で守る、大事な部下だから。
仕事するときに「男なのに」「女なのに」という雑音はいらない。
好きなものを好きになるのに性別も年齢も関係ない。
仕事は仕事・恋愛は恋愛でわけて考えたい、職場で仲良くなったら即恋にはならなくていい。
MIU404で桔梗隊長が言ったように、「ただ仕事してるだけ」の人たちを見せてるだけでも、ドラマはおもしろくなる。
そうそう、こんなかんじにシンプルに働いたり暮らしたりしたいの。
こういうのにあこがれて毎日を過ごしてる私から見たら、これらもじゅうぶん、トレンディなドラマですよ。
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で、その私が思うトレンディドラマの逆の位置にいるのが「半沢直樹」だなあと。
私はこのドラマおもしろく見てるし、役者さんたちすごいなって思ってるけど、思ってるけど、「好き」とは言い切れない。
男たちは怒鳴り合い、仕事ができる女は「鉄の女」とあだ名をつけられ、それを笑顔で受け入れる。同じように仕事しても「鉄の男」とは呼ばれないのに。
半沢の妻の花ちゃんは、半沢の仕事をよくわかっていない専業主婦で、半沢が浮気してるのではと問われれば「そんな甲斐性はない」と、「浮気は男の甲斐性」という昭和の価値観を口にする。この世界は、トレンディじゃないし、少なくとも私は「いいなあ」とあこがれない。
もうひとつ…「ナギサさん」も、最初はトレンディだと思ったんですが…。
ナギサさんが言う「お母さんになりたい」の「お母さん」が「いつも優しく自分を見守ってくれる、家事を完璧にする人」の象徴で、他の人が言う「おじさん」が「家事をしない人」になってるように思えるのが、困ったなあと思ってます。
「家事ができる・できない」と「年齢性別」は関係ない、自分にできないことは外注したっていいと言ってくれるドラマだと勝手に思い込んでたかもしれないです…。
最終回前のメイの「結婚してください」、それは家事を引き受けてくれて優しい誰かを自分につなぎとめておきたいからだとしたら、ほんとにナギサさんが気の毒だと思っちゃった。愛情の搾取だと、「逃げ恥」でみくりちゃんが抗議し、「おっさんずラブ」で引き止める春田に、家事をしてほしいからかと牧くんが言ったように(実際は違っててよかった)、それは好きな人に対しては、やっちゃダメなことだと思うんですよ。
今夜が最終回、どう決着するのかまだわからないですけどね。
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どうか、ドラマはあこがれの形でいて。
バブルがはじけて数十年経っても。2020年の私は、今はまだほんのちょっと手が届かない(でもいつかああなりたい)、ステキなトレンディドラマを見せてくれる人たちが、やっぱり好きなんです。