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旅 + fp L 〈青森編〉
弘前れんが倉庫美術館で展示されている『池田亮司展』が今週末で終わることをふと思い出し、青森へのエアチケットを取った。土曜日の朝に行って、夜には帰ってくる弾丸の様で実はのんびりとした旅。
行き先は『池田亮司展』が開催されていた弘前れんが倉庫美術館と『ミナ ペルホネン/皆川明 つづく』の展示がされている青森県立美術館。それ以外は特に何も決めていない旅に SIGMA fp L に 24mm F2 DG DN | Contemporary を付けたカメラと財布とiPhoneだけ持って出掛けた。
今回持っていくカメラに SIGMA fp Lと 24mm F2 DG DN | Contemporary を選んだのは、美術館など室内で空間に限りのある場所では広角が活きるのと、広角かつコンパクトながら F2 という明るさ美術鑑賞妨げずにお供してくれる。まずは美術鑑賞に集中したいので記録を残すカメラはコンパクトなこの組み合わせにした。
あとは、SIGMA が「24mmを持ち歩き、日常の一コマを切り取ろう」というキャンペーンを実施しているので、24mm で一日の記録を残してみようという遊びも含んでいる。
まずは『ミナ ペルホネン/皆川明 つづく』を観に青森県立美術館へ。青木淳氏設計の美術館は隣の「三内丸山縄文遺跡」の発掘現場から着想を得て設計されており、真っ白な「ホワイトキューブ」の展示室と土の床や壁が露出する隙間の「土」の展示室が、対立しながらも共存する空間。すべての展示室に向かう際に通るアレコホールは壁も天井も想像を超える空間で圧倒される。
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訪れた日はナイトミュージアムも開催されてる日だったが『池田亮司展』を閉館まで観ることを優先し今回は断念。ナイトミュージアム時には、VI〈ヴィジュアル・アイデンティティ〉である「青い木が集まって森になる」木々達もライトアップされておりきっと美しい光景でしょう。2022年冬期の開催も決まっている様で、雪景色の中に浮かぶ青森県立美術館を訪れるのもいいのではないでしょうか。
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地下の展示室に降りるとまずはシャガールの「アレコ」が展示されているアレコホールに圧倒された。正直写真では伝えられない、その圧倒的な巨大な空間は作品の力も相まって美術館に入ったと同時に非日常に引き込まれる感覚がある。
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アレコホールでの展示にしばし圧倒され、本題の『ミナ ペルホネン/皆川明 つづく』へ。ものづくりの営みを自然界に例えて構成されている展示は「根」や「種」、「土」、「芽」、「風」、「実」、「森」というシーンになぞらえて綴られていた。このコンセプトが展示の隙間に書かれている言葉に納得感をもたらしていてとても腑に落ちた。
ミナ ペルホネンのものづくりの営みを自然界に例えて各章の名称としています。活動の要素をその名称の意味合いと重ねてご覧いただきます。ものづくりに在る「つづく」と人の心に繋がる「つづく」を様々な視点から感じる中で、ミナ ペルホネンのデザインがつくり手とつかい手を繋ぎ、どのように関係しながら循環と継続をしていくかをご覧ください。 <皆川明>
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展示には皆川明さんの言葉が展示の隙間に綴られており、写真を撮る身としても考えさせてもらえる言葉がたくさんあった。デザインももちろん、デザインの過程で生まれる思考にも刺激をもらえる展示でした。
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青森県立美術館といえば青森出身のアーティスト奈良美智さんの『あおもり犬』。今回の旅の楽しみのひとつであったことは間違いない。以前、IMA が主催するフォトコンテストの審査員として、私の写真を選出してくれたのも奈良美智さんだったので個人的にも思い入れのある方の作品で、代わりに『あおもり犬』にありがとうを伝えて来た。
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青森県立美術館を後にして、一路弘前へ。弘前純喫茶として有名な『ルビアン』に立ち寄り、名物の昔ながらのパフェを頂く。作られたレトロ感ではなく、本当の純喫茶感が醸し出す空気感はマスターも含めて国宝にして頂きたい。メニューを開いた時にオルゴールが鳴るそんなロマンチックな喫茶です。
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甘いものを食べた後は珈琲。せっかくなので場所を移して弘前城前にあるスターバックスへ。陸軍師団長の官舎として建設された木造の建物で、外国の文化を積極的に取り入れていた弘前ならではの和洋折衷のデザインが特徴的な木造建造物に敬意を払いスターバックスの店舗として生まれ変わっている。建築の保存は維持するための費用もかかる。その点を民間の力も使って保存、活用していく取り組みが弘前では進んでいる。
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旅は再び美術館巡りに戻り、今回の一番の目的である『池田亮司展』が開催されている弘前れんが倉庫美術館へ。先日応募のあった Casa BRUTUS 主催の建築家・田根剛と巡る/語る〈弘前れんが倉庫美術館〉で田根剛さんのお話と『池田亮司展』を同時に堪能できれば良かったのですが、残念ながら Casa の抽選には当たらず訪れる機会を逸していたので今回の思いつきの旅となった。
田根剛さんの建築は新国立競技場の案も含めて好きなものが多い。この弘前れんが倉庫美術館も訪れてみて「記憶の継承」をコンセプトに造られた空間は『池田亮司展』の展示も相まってとても良かった。
実は先に訪れた『ミナ ペルホネン/皆川明 つづく』も会場構成は田根剛さんが手掛けている。今回の青森旅の裏テーマは『田根剛展』と言ってもいいのかもしれない。
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本題の『池田亮司展』は 2018年7月29日 にスパイラルで体験した『Ryoji Ikeda concert pieces』展示以来の体感で、想像以上の体感が今回も得られた。特にデータを扱ったプロジェクトの集大成とされている『data-verse 3』は大音量、圧倒的な映像のはずなのになぜか心地よい。空間の旅に徐々に引き込まれていく様な感覚でいつまででも居れる不思議な没入感。最後は閉館の時間まで『data-verse 3』をひたすら浴びていた。2時間以上の時間を費やして体感してもまだ欲している感覚が残っている。
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弘前を訪れた日は『弘前ねぷた300年祭』で、ねぷたも観ることができた。美術館の方がちょうど今夜開催されるので観ていってくださいと教えてくれてねぷたも堪能することができた。ちなみに、青森で開催されているのは「ねぶた」、弘前、五所川原で開催されるのが「ねぷた」で微妙に言い回しが違う。南部弁、下北弁 と 津軽弁 の方言の違いから由来するもので呼び名が異なっている。
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思い立って訪れた青森は思考を促され、感覚を刺激されるとても充実した日帰り旅になった。旅に出て、好きな宿に泊まり過ごす旅も好きだが、疲労感もちょどよく日帰り旅もなかなかいいものだという新しい発見でもあった。またカメラを片手に旅に出よう。
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