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農村型地域運営組織(農村RMO)とは ~地域の「共」を考える#3~

地域のつながりが弱くなっているといわれるなかで、公(行政、公助)と私(個人、自助)のあいだにある「共」をどう育んでいったらよいのだろう?

この問いに向き合う<地域の「共」を考えるシリーズ>です。
前回は、公助のパートナーとして地域の多様な主体が協働し地域課題を解決する「地域運営組織」についてまとめました。


今回は、地域運営組織の一形態として、とくに人口減少や高齢化が深刻化する中山間地域での形成が推進されている「農村型地域運営組織(以下、農村RMO)」を取り上げます。



農村RMOとは

農林水産省によると、「農村型地域運営組織(農村RMO:Region Management Organization)とは、 複数の集落の機能を補完して、農用地保全活動農業を核とした経済活動と併せて、生活支援等地域コミュニティの維持に資する取組を行う組織のこと」と定義されています。


取り組む事業は主に以下の3つです。

  • 農用地の保全
    農作物の生産活動に支障がでないよう、農地を適切に管理する

  • 地域資源の活用
    農林水産物のみならず地域ならではの特産品や地域特有の資源(例:景観、山林、温泉、渓流、湖など)を活用して付加価値を高める地域経済活動を行う

  • 生活支援
    子育てや高齢者支援をはじめとする地域住民サービスを提供する

出所:参考[1]3. 農村RMOの推進体制


農村RMOってどうやってつくるの?

農村RMOの形成には主に3つのパターンがあるとされています。(パターン名は筆者が付けました)

  • 連携型(農業関係組織+地域の組織)
    農⽤地を保全する組織と地域の組織(社協、公民会、自治会等)が協⼒し合う

  • RMO化型(農業関係組織⇒農村RMO)
    農⽤地を保全する組織が活動内容を発展させて生活支援や地域資源利用も行う

  • 農村化型(地域組織⇒農村RMO)
    地域の組織が、中⼭間地域等直接⽀払の集落協定等と協⼒して農用地保全活動も行う

具体的な農村RMOの形成過程や活動は事例が参考になります
▶農村RMOの事例:https://www.maff.go.jp/j/nousin/nrmo/attach/pdf/index-20.pdf


農村RMOを支援するには?

農村RMOの立ち上げから自律的な事業実施までのサポートとしては、段階的に足し算のサポートと掛け算のサポートを使い分けることが重要とされています。

1.足し算のサポート(立ち上げ期~ 寄り添い型支援)
集落活動が縮小している時期に、いきなり大きな活動を行おうとしても、かえって歪みが生じてしまいます。農村RMOの立ち上げ期には、住民ひとりひとりの意識が向上してくるように寄り添うことが大切です。住民の不安や悩みに寄り添いながら、共に考え行動を起こし、小さな成功体験を積み重ねていきます。

2.掛け算のサポート(向上/事業期~ 事業導入型支援)
継続的な地域活動が行われるようになり、地域力が向上する時期になったら、住民が中心に「地域の将来ビジョン」を策定します。作成した将来ビジョンに基づいて、事業計画の策定、調査、検証など、持続的な地域づくりに向けて活動の幅を広げていきます。

出所:参考[1]2. 農村RMOの形成過程


行政の方でもさまざまな支援策が用意されています。

出所:参考[2]2. 支援施策

行政による支援策はこちら
▶農水省Webサイト:https://www.maff.go.jp/j/nousin/nrmo/index.html


編集後記

農村RMOの内容をまとめていてまず思ったのは、なんでもかんでもやりすぎでは…ということでした。住民が中心となって、自分たちが住む地域の課題を解決していくことは全うなことだと思いますし、自走していけるに越したことはないのですが、

全体のマネジメントを担うのは誰なのでしょうか?
事業の多様化や継承にどう対応していったらよいのでしょうか??

こういった現場のリアルは政策で掲げられる理想像や事例集をみてもわかりません。

実際に私が現場で見聞きしたことを振り返ると、事業ばかりが増えて事務局の手が回らない。でも、毎年続けてきたことをやめることもできない。補助金も取ってしまっているから続けなければならない。といった声が各地で聞かれます。

また、地域の状況は刻一刻と変化しています。時代の流れや地域の構成員の変化によって地域課題も変わっていきますし、最初に熱意をもって協議会やNPOを立ち上げた世代が引退にさしかかり、現役世代との温度差事業の継承に関する問題も生じています。

地域がよりよくなるためにやっているのに、自分たちの暮らしを犠牲にしたり、疲弊していては本末転倒ですよね。。

今実施している事業によって地域がよりよくなっている実感があるか、これまでのやり方で改善すべき点はどこか、といった事業の見直しや、
個別の組織でできることと協働してやった方がよいことの割り振りはできているか、一部に負担が集中しすぎていないかなど、組織の見直しを定期的にすることが大切だと思います。

目の前のことで忙しくてなかなか…という声がきこえてきそうです。そのために私たちのような農村計画学の研究チームがいます。地域のなかで話し合いの場が持ちづらいときは、地域づくりやコミュニティデザインを専門とする第三者に声をかけてみるのも手かもしれません。


最後までお読みいただきありがとうございました!新しい里づくり研究室(さとけん)では、都会と田舎、山と海、自然と人間のあいだにある「里」に光をあてた研究や実践を紹介しています。記事の感想、里づくりのお悩み、気になるテーマなど、お気軽にコメントお待ちしております😊


参考

[1] 集落コミュニティのための地域づくり・支援情報(2022)「農村RMO」,https://nouson-rmo.com/(参照2023-04-21)

[2] 農水省「農村型地域運営組織(農村RMO)の推進 ~地域で支え合うむらづくり~」,https://www.maff.go.jp/j/nousin/nrmo/index.html(参照2023-04-21)

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