花、擬態、蝶|『PUPA.』大辻隆広
長らく完売していた写真家・大辻隆広の初の写真集『PUPA.』の再販である。しかし、ただの再販ではなく、新たに撮り下ろしも追加されている。
大辻は石黒幸誠に師事後、2007年独立。雑誌や広告だけでなく、写真展など精力的に活動している写真家だ。
本作は2017年、モデルで女優のモトーラ世理奈が10代最後のタイミングで撮影された。
本作もタイトルになっているPUPAは、サナギのことだ。サナギとは幼虫から成虫になる直前の状態を指す。人間でいえば、少女から女性へと成長する過程だろうか。
10代最後の、少女から女性に移り変わる、儚くも限りなく尊い一瞬を大辻は見事にとらえた。その儚さは、本作のもう一つの被写体である「花」にも通じるところがある。
企画、撮影にはフラワーアーティストのUDAも参加しており、ファッションに花を用いている。
ページを繰っていると、ファッションと花が渾然一体となって、モトーラ世理奈が花に身を包み擬態したサナギのように見えてくる。いや、もう花そのものと言いたくなるくらい美しいのである。
とにかく、光と肌の質感がいい。モトーラ世理奈自身、かつてはコンプレックスだったと語るそばかすが、まるで花びらの模様のように惹き込まれる。
撮り下ろしでは、4年が経ち、サナギから蝶となったモトーラ世理奈が納められている。儚さのなかに妖艶さ加わり、より魅力が増したようだ。
本作は、大辻のネットショップ「ALL OUR FUTURES」で購入可能。
全然、関係ないけど、モトーラ世理奈の歌うフィッシュマンズのカバー「いかれたBaby」がすごく好きだ。
(文中敬称略)
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