書籍「こどもの夢中を推したい」 #全文公開の切り抜き
書籍「こどもの夢中を推したい」が2023年7月4日にfreee出版より発売されます。発売前の6月13日から予約開始にあたって、書籍の「全文まとめ」を公開します。本を買うまでもないけど、中身に少しは興味があるなって人向け。全文公開だと読むの面倒だけど、10分もあればざっと読めちゃうYouTubeの切り抜き動画みたいな「全文公開の切り抜き」です。
この本は、ツペラツペラさん、atama+、探究学舎など7組の教育系の人との対談本。 中学受験?海外移住?AI教育?など、正解がわからない時代にこそ、大切な「こどもの夢中」を伸ばすヒント集です。内容をみて共感いただけたら、書籍の方もよろしくお願いいたします。
目次を読むだけでも、何となく要点がわかります。
小中学生の「夢中」を7組と対談した本
これは小中学生の親御さんに向けた本。僕自身が欲しかった本。いま小6の子がいるんですが、時代の変化すごいけど「うちは今のままで大丈夫かな…?」という不安に思ってた部分を、いろんな有識者に聞いていった本です。
夢中になった子は、家でどんなことしたか?思春期の子へ、どう夢中を渡せるか?勉強についての深掘りなど、リアルな話が読めます。
7組の対談相手の幅が広く、かなり広い角度から「こどもの夢中」を語った本で、一読の価値はあるかな〜と思います。たぶん、人により刺さるポイントが全然変わる本なのではと思います。
面白い7組の対談相手
他にも、哲学者:苫野一徳さん。作家の鳥羽和久さん。9歳で「世界が尊敬する日本人100人」に選出された、13歳ドラマーYOYOKAさん。小3から高3まで続けた自学ノートの梅田明日佳さん。など7組と対談しました。
もくじ
PART1 こどもの夢中を推してきた話(佐藤ねじ)
PART2夢中のひみつを聞いてみた (対話集)
●宝槻泰伸(探究学舎)
●苫野一徳(哲学者)
●鳥羽和久(作家)
●稲田大輔(atama plus)
●tupera tupera(絵本作家)
PART 3 夢中のこどもに聞いてみた(対話集)
●YOYOKA(ドラマー)
●梅田明日佳(自学ノート)
PART1 こどもの夢中を推してきた話
本をつくった理由
昔、小1起業家がバズり、それきっかけでたくさん「こどもの金融教育の本」出さないかとお話をもらいました。でも全部お断りしました。僕はお金の専門家じゃないし、何より小1起業家で得たものは、お金リテラシーより「こどもの夢中」でした。
小1の子はおこづかいを増やすことより、珈琲屋としてもっと世界中のコーヒー豆を集めたいと考えるようになり、珈琲屋にハマりました。珈琲屋を通して、子はいろんなことを勝手に学んでいきました。それがすごく良かったんです。お金の勉強もいいけど、何より「こどもの夢中」は本当に大事だなと。そこに関する本なら、あってもいいなと思いました。
でも、僕は教育の専門家ではないし、僕の話はあくまでn=1なので、教育についてあれこれ語れません。ならば、親当事者である僕の仮説や疑問を、いろんな人と対話していく本ならどうだろう。そう考えてできたのが、この本です。
教育迷子の時代
みんな偉い人が「これからは非認知能力が大事だ」とか「いや非認知能力を育てるなんておかしい」とか「そもそも義務教育がベースにあっての話だ」とかいろいろ語ってて、なるほどね〜と思って見ていました。
でも、いま小学生の子がいる親にとって重要なのは、そういう「概念」だけじゃないですよね。「今!今、実際にどう行動すべきか!!」ですよね…。しかも、小5くらいから思春期になってきたりすると、余計にむずいですよね…。
受験ひとつとってもそうですが、今は選択肢が多すぎるからこそ、何がベターなのかよくわかりません。学校の勉強や英語だけでなく、プログラミングなどのSTEAM教育系もやっとくのか、最近はChat GPTなどAIの進化えぐいから、もっと違う能力がいりそうだよねとか。でも、やっぱりスポーツもやったほうがいいよね……と、あれこれマジメに考えると、教育迷子になりそうです。
で、どうせ未来なんかわかんないから、なるようにしかならないんだろうけど。でも、親ができることはしておきたい気持ちもあり。みんな実際どう考えてんだろうと思ったりします。
夢中になって遊び、そして学ぶ
で、僕から言えることは「何を学ぶにしろ、経験するにしろ『こどもの夢中』は重要」だってことです。夢中にさえなれば、人はものすごい勢いで吸収し学ぶ。
夢中になることで遊び、結果的に学ぶ。それがゲームであろうと、数学であろうと、ニッチな趣味であろうと。「面白い遊び」/「つまらない学校の勉強」という対立構造ではなく、夢中になれば何でも面白いのです。
なので親として僕ができることは「夢中と出会える環境づくり」を考えることだなと。で、子どもがハマったら邪魔せず、どんどん没頭するためのサポートをすることかなと思っています。
佐藤家がやったこと
5歳児が値段を決める美術館、6歳ラジオ、小1起業家など、いろんな試みをしてきましたが、小学校になってからは「こどもの夢中」に関わることを多くやりました。
「こどもの夢中」のつくり方
実際に「こどもの夢中」をどう生まれるのか?別に親が生み出すものでもないんですが、きっかけを与えたり、環境づくりは親ができるとこと。僕が思う「夢中」が生まれるためのメソッドをまとめました。「子どもによりけり」であることは大前提です。
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『ヒント1:いろんな刺激をぶつけてみる』
●役割を与える
子どもは「やらされる」ことが多いので、責任ある役割を渡すことで、自主性が伸びていく感じがあります。小1起業家の珈琲屋とかもその典型です。
●大人扱いする
「どうせ子どもだから、これくらいのことを教えれば十分」と決めつけない方がいいです。子どもは、すごく難しい話でも意外に興味をもちます。
●学校で習わないことを教える
自分が好きなこと、仕事のことを、そのまま子どもにも話しています。ゲーム、映画、テクノロジー、音楽、アート、食、ビジネス、世界情勢、Twitter で話題になったこと。最近でいえば、AIの進化のすごさ等。
その魅力を「熱量をもって子どもに伝えること」がポイントです。そのためにも、親自身が何かに夢中になり、勉強や好奇心を持ち続けることが大事。
●本番を体験させる
サッカーの楽しさを知るには、シュートのやり方を教科書で学ぶより、サッカーをしたほうが早いですよね。
同じように、教科書で地理を学ぶだけでなく、現地を旅したほうが理解は深まります。数学問題を解くだけでなく、数学で動くゲームプログラミングをしたほうが、サイン·コサインが好きになります。お金の勉強をするより、家庭内起業したほうがビジネスの本質に近づきます。本番体験をすることで、それが好きになりやすいのです。学校の勉強はどうしたって、教科書。こうやって本番体験もしてもらうことも、何かにハマるきっかけになります。
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『ヒント2:夢中を邪魔しない』
●やらなきゃいけないことで埋めない
宿題や習い事、親が用意するタスクで子どもの1週間をびっちり埋めてしまうと、夢中になるチャンスも減るので、もったいないです。
親があれこれ動きすぎることで、夢中をつぶしてしまうこともありそうだなと思います。子どもが何かにハマってるときは、放っておくのが一番。これは自戒をこめて…
●夢中をサポートする
子どもが何かにハマりそうなときは、必要な手伝いは惜しまないようにしています。特に物を買って解決できる系は、本でも画材でもゲームでも、多少高価なものでも、できるだけケチらない。誕生日を待って買うのもいいけど、その興味の炎が消えないうちに渡してあげる方がいいなと思います。
(結果、買って2回くらいしか使ってない顕微鏡とかありましたが、いろいろ渡して、ハマるもの見つかるなら安い投資です)
他にも、どこかに連れていくとか、誰かに会わせるとか、関連動画を紹介するとか、そういうサポートの積み重ねがポイントかなと思います。
●「自分で発見する機会」を奪わない
学校の勉強は教えられることが主で、自力で答えにたどり着く体験は少ないですよね。でも失敗も含めて、自分で発見したことは忘れにくい。
だから過干渉タイプの親(僕もそうですが)は、全部を教えすぎない距離感も大事です。できるだけ、子ども自身が調べ、体験し、発見する機会を奪わないようにしたほうがよさそうだと思います。
●「将来のため」と「今の夢中」のバランス
こどもが今夢中でやりたいことと、勉強などやらないといけないことのバランスは難しい。もしも今、その子がすごくやりたいことがあるなら、学校を1週間休んでそれに集中してもいいとは思います。例えそれが「親からみて有意義に見えないこと」だとしても、夢中を推したいです。
将来の夢を20代以上で叶えるのでなく、10代の今、ここで叶えることができる時代ではあります。というか「将来」っていつなのかって感じもします。本書では、19歳でイーサリアムつくった「ヴィタリック・ブテリン」の話も紹介しました。
でもかといって「全く勉強しなくていい」みたいになるのは極論すぎますよね。だから空気読んでバランス取るのが大事。ここが本当に難しい。理屈でなく、親の感情もありますし。
でも少なくとも、「10代は勉強期間で、本番が始まるのは大学卒業してから」と考えるのと、「人生はずっと本番。本番をやりながら、勉強もする」と考えるのは大きく違うはずです。子どもの夢中が開花したとき、それを受け止める度量が親側に必要なのではないかと思います。
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『ヒント3:親も無理せず、持続可能なシステムを』
●自分が楽しむ
育児は「やらなければならないこと」の連続。子どものために、自分のやりたい時間を潰す。自分の行きたい場所より、子どものためになる場所へ行く。仕方ないことではあるし、全然悪いことじゃない。でもその中でも、なるべく「自分がしたいこと」に変換した方が、親のモチベは保てます。
たとえば子どもがゼルダにハマったら、僕も思いっきりゼルダはまってみると、共通の会話も増えて楽しいです。
自分が行きたい旅を優先させて、その中で子どもが好きなイベントもつくる。僕は阿蘇山行きたかったけど、こどもは週末もゼルダやりたい。旅とかだるい小6。そこで「阿蘇山はリアルゼルダな風景だぞ!」とプレゼンして、こどもの興味もつくる。などなど。
●家族でチームになる
親子関係の中に違う関係を持ち込んでみることも、「親が上で子どもが下」となりがちな親子関係を柔軟にしてくれます。
実際、子どものほうが知っていて教えてくれる場面も多々あります。例えば、最近話題になった「Fortniteのオープン化」は今後のビジネスにおいて、すごく重要そう。僕はフォトナ分からないので、今度こどもにFortnite講座してもらう予定です。
家族を会社にたとえるなら、「親」というワンマン社長の言う通りに従う会社より、社員からも自発的にアイデアが出てくる会社でありたいです。家族というより「年齢の離れた人間がいる仲良しチーム」。プロジェクトごとにリーダーは変わってもいいのです。
●「成功体験」より「夢中体験」
長男の場合は、小4でプログラミングにハマって大作ゲームをつくった経験が大きかったです。穴ぼこだらけのゲームだけど、「やればつくれる」という自信がついて、より積極的な人に成長しました。
だから、成功体験もいいけど、失敗体験も含めて「夢中で何かをやった体験」の回数のほうが重要な気がします。
仕事の場合はプロセスより結果を求められますが、子どもの成長は結果よりプロセスが大事なのではないでしょうか?中学受験に失敗した子も、数年間集中して勉強した経験は絶対に活きますよね。「その体験をしてよかった」と思えるマインドセットを、子どもに渡してあげられることが大事なのかもしれません。
夢中体験をポジティブに捉えることで、自信が生まれ、結果また次の夢中体験が生まれやすくなる気がします。
PART1「こどもの夢中を推した話」のまとめ
……と、僕の体験からさまざまな仮説を並べてみました。けど、僕の仮説なんて、ただ2人の男の子を育てているだけの狭い視点。もっと教育的に詳しそうな人・面白い人・実際に今夢中になってる「現役の子どもたち」などと対談して、ヒントをもらってきました。それが第2章です。
PART2 夢中のひみつを聞いてみた
対談1:探究学舎の宝槻さん
探究学習のプロに学ぶ、夢中のつくり方
子どもたちの探究心に火をつけるオリジナルの授業を展開し、メディアでもよく取り上げられて大人気の探究学舎。5児の父でもある、代表の宝槻さんと話しました。
きっかけを与えた「回数」がポイント
子どもが夢中になるための「きっかけ」を与えるのが上手い親と下手な親はいます。きっかけプレゼンが上手な親は、子どもを観察して、どんなアイテムを、どういう言い方で渡すといいか知っています。「おーい、図鑑買ってきたぞ。読め!」。これは下手です。
でも上手い下手の前に「試行回数」が多い人と少ない人がいるのです。
思春期の子への接し方
子どもは、小さい頃は親に喜んでほしいというのがすごく強い。でも思春期になると、自分が満足することにシフトします。
思春期の子に対しては「聞き役」に回り、必要に応じて提案してけばいい。幼いほど親のほうにある主導権を、段階的に子どもに渡していくイメージです。
興味のきっかけのハブ「サードプレイス」を探せ
1から10まで、親が興味のきっかけを与えるのは無理です。学校や塾で、興味のきっかけが色々もらえれば、それでいいですが、賄えない場合は「興味のきっかけのハブづくり」を探すのがおすすめ。つまり「子どものサードプレイス」です。
「サードプレイス」は、駄菓子屋、サッカークラブ、サマーキャンプ、なんでもありです。宝槻さんの中学時代のサードプレイスはなんと「お寺と住職」。いろんなことを学んだそうです。ちなみに、宝槻さんの高校のサードプレイスは「Bar」。そこでいろんなサブカルを学んだりしたそうです
でも小中学生が、自らサードプレイスを探すのは難しい。ここは親が役立てるところです。簡単に見つかるものでもないので、やっぱり試行錯誤の回数が大事です。
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対談2:哲学者の苫野一徳さん
哲学者と考える育児のヒント
哲学者でありながら、教育関連の本や、活動をいろいろされている苫野さん。リファレンスが哲学にあるから、すごく面白い視点で話せました。
子どもを大人扱いする
多くの学校では「これくらいの発達段階の子どもにこういうのは難しいよね」という言葉がよく聞かれます。でもそれはちょっと子どもをバカにしすぎです。
吉田松陰は子どもをとんでもなく大人扱いした
そのへんの農民の子に「君、これからの我が国はどうすべきと思うかね」と問うて、天下国家を語らせたそうです。そんなふうに問われると、一気に引き上げられるよね。
可塑性|いつだった変わりうる力
脳には可塑性、つまり変わりうる力があります。人間はいつだって変われるし、やり直しがきく。だから、あんまり心配することないんです。
一番大事な土台は、親であれば「私はあなたのことをとても大事に思っている。何があってもいつだって味方だよ」という、絶対の“承認の砦”。これさえ築いていれば、基本的に何だって大丈夫。まあ、そう簡単に思えないけど、それくらい思っておくことが大事なんです。
がまん忍耐とやりきり忍耐
忍耐には2種類あります。
1:嫌なことをただ耐えてやりすごす「がまん忍耐」
2:自分のやりたいことのために努力をする「やりきり忍耐」
→この2を「能動的忍耐力」と呼ぶそうです。
遊び浸る
では能動的忍耐力をどう獲得するか?基本は「遊び浸る」。遊び浸るから学び浸るへ、というのが幼児教育の基本です。
小学校に入ると、遊びと学びが切り分けられてしまいます。本当は遊びと学びは連続しています。遊び浸った経験がある子は、やりきる粘り強さが身に着いているんです。遊びのレベルは少しずつ上がっていくから、「どうやったらもっとうまくなるかな?」「どうやったらもっと楽しめるかな?」と考えるけど、遊びは楽しいからそれを実現するためにがんばれる。
こういう経験を積んでいると、学びにおいても自然と探究につながるんですね。
構成された遊び
遊び浸るという経験がとても大切。だけど、今の幼稚園や保育園でさえ、“構成された遊び”、これを使ってこうやって遊びなさいという遊びが少なくないです。小学校でも「クラス全員遊び」をやっている学校が多くて、みんなで遊ばないとダメということになっていて。それはもう遊びじゃない。
よく規制された自由
哲学者ルソーの言葉。「教育の一番大事な目的は、子どもたちが自由になって、自ら生きたいように生きられる力を育むこと」
そんな力を育める環境はどんな環境かというと、「よく規制された自由」であると。ちゃんと守られていて、安心して失敗もできるような環境です。野放図な自由は怖いのです。
「悪そうな学び/壮大な勘違い」の素晴らしさ
東大の中邑賢龍先生がつくった「LEARN」という学びの場。ここでやってる「家出プロジェクト」が面白いです。
申し込んだ子たちが駅などに集まって、長時間家出する。ひとりで行動してもいいし、他の参加者と一緒に行動してもいい。ミッションもあって、スマホなどは使えないという制限もあります。これもまた「良質な制限」かもしれません。こういう経験って、「自分はこういうことができるんだ」という力になるんです。
対談3:面白い塾をやってる、鳥羽和久さん
「可能性の担保」があり、自分の欲望をわかっていれば心配ない
「寺子屋ネット福岡」代表、「唐人町寺子屋」塾長であり、作家の鳥羽さん。思春期の子どもたちとたくさん接してる鳥羽さんに、親子関係や思春期の子とのコミュニケーションについても悩み相談しました。
親子関係を切ってみる
子どもたちは、権威者に対して反発するのに、逆に従いたいという欲望もあります。思春期の子も、塾ではすごくちゃんと授業を聞いたりする場合もあるんです。
親が子どもに勉強を教えるとケンカになってうまくいかないという相談は多い。そんな時、「親子の関係を切ってください。そうするとうまくいきますよ」と話をします。つまり、親子以外の関係にする方がよい場面があるってことですね。
大事なのは「可能性の担保」をすること
なぜ親は、こどもが全く勉強しないと不安になるのか?それは勉強によって「可能性を担保」したいからかもしれません。やっぱり、ベースとして勉強ができてる方が潰しが効くように感じるから。
だから、仮に勉強が苦手な子だとしても、代わりの可能性の担保があればいいだけかもしれません。別の方向で、何か夢中があるなら、そこを伸ばし、そこからいろんな学びが生まれることは多いのではないでしょうか。
推しの科目は社会、国語
本書では、勉強も遊びも関係なくて、全部が「ハマれば面白いもの」になると定義しています。だから、つまんないと言われがちな「5教科」の勉強にも推しがあるはず。ということで、塾の先生でもある鳥羽さんの、5教科の推しを聞いてみました。
鳥羽さん的には社会は、現実社会にアプローチしやすく教えやすい。国語は、評論がけっこう面白いそうです。
高校までの数学や理科は「素振り」。大学から「本番」
小学校から高校までの数学や理科は準備段階すぎる。面白いこともあるけど、学問的には野球の素振りみたいな段階。本当に面白くなるのは大学2年生くらいからだそうです。
対談4:atama plusの稲田さん
「正しい学力測定と正しい勉強法で急にできるようになる子は多い」
atama+は、全国の主要な塾に採用されている、AIを用いた学習システム。「人間では不可能なレベルの分析力」で、個別指導以上の“超”オーダーメイド学習を実現。そのatama plusの代表、稲田さんとお話ししました。
勉強ができないと感じる2つの理由
1つ目は「テストがおかしい」
本当はできるのにできないと判定されてしまうこと。
2つ目は「勉強法がおかしい」
たとえば数学の確率がぜんぜんわからない場合。これはatama +でもよくあるケース。よくよくその子を分析してみると、小学校のときに勉強した分数がわかっていないだけで。分数をわかってない人が確率を勉強しても、わかりません。そういう場合は、一度分数をやり直して理解するプロセスが必要です。
正しい学力測定と正しい勉強法
atama+を勉強してる子の中には、ずっと自分はできないと思っていて親に無理やり塾に連れてこられた生徒さんもいっぱいいます。
でも、正しく学力測定し正しい勉強法で勉強すれば、急にできるようになっていく子たちはたくさんいます。自分も勉強できるんだと気づいて、atama +で勉強している教科以外もやる気が出て……という子をいっぱい見てきました。大人が勝手にできない扱いをしちゃいけないよなと思います。
4人のうち3人の中学生が、前学年以前の範囲を理解できてない
子どもたちは一人ひとり違うはずであり、一人ひとりに合った教育を提供したいと思っています。そのほうがその子の基礎学力習得も効率化できるんじゃないかと。
データから、数学では「中学生の4人に3人」が前の学年以前に習った範囲を理解できていないということがわかりました。中には小学校の範囲も含まれます。逆に、小学生の5人に1人は、実学年より先の勉強をしているというデータもあるんです。
将来のためもあるけど、単純に楽しいから勉強する
「なぜ勉強するかがわからない」から勉強が面白くないんだと言われがちだけど、わからないことがわかるようになるって単純に楽しい。スマブラする人に、なぜスマブラするかは聞かない。楽しいからやるだけ。
オンラインでもatama+が使える
稲田さんとお話を聞いてると、うちもatama+を試してみたくなりました。その場合、導入してる塾を選ぶ選択肢もあるし、うちみたいに受験しない組でも、atama plusが運営するオンライン塾で、atama+を使えるようです。
対談5:tupera tuperaさん
家族そろって食事する。コミュニケーションを大事にする。ツペラツペラさんちの育児
みんな大好きtupera tuperaさん。佐藤家では特に「パンダ銭湯」にお世話になりました。このご夫婦が、どんな育児してるのかとか、あまり語られてない気がしますが、とても面白い対談でした。
中学受験は考えなかった
現在、高1の娘と、小5の息子。中学受験に関しては全く考えなかったです。小学生までの時間は特別だと思っていて、ただ単に公園を走り回るとか鉄棒にぶらさがるとか……子どもだからこそ無邪気に楽しめる遊びがたくさんあると思っています。
中学生からは、大人とそんなに変わらなくなってくるけど。放課後の時間、ガッツリ塾に通ってそういうのびのびした時間を過ごせないのは、なんか違うなあと思って。本人たちも望んでなかったし、そこに迷いはなかったです。
晩ごはんは家族みんなで食べたい
晩ごはんをとにかく子どもたちと一緒に食べたい。晩ごはんおいしいねって食べながら、今日一日どんな日だったかお互いに話して、家族で共有できる時間が本当に大事だと思ってます。
大河ドラマも必須
みんなでやると決めたことは譲りません。大河ドラマも毎週家族そろって観ています。
いろんな人間を味わってほしい
tupera tuperaの活動を始めてからの20年間はずっと、日本中のいろんな場所に行って日々いろんな人に出会って、世の中は面白い人であふれていてすごく楽しいなと感じています。
大人の面白い可能性とか、大人のバリエーションを子どもに見せるのは、教育において重要な部分だと思っています。
いわゆる目立った職業や有名な人だけではなくて、世の中にはたくさんの職業があるし、仕事じゃないことに人生をかけてる人もいます。そういう人生のいろいろな可能性を、もっと実感できたら、勉強する意識も変わってくるはずです。
土地土地に魅力的な人はいっぱいいて、そういう人たちを小学生や中学生の間に見るのがとても重要です。20代のフットワークが軽いときにいろんな人に会ってほしいかな。
何の道に進もうがいいけど、人をきちんと味わえるような人間になってほしいです。そのためにどこか行きたいと言うなら全然いいし、放浪の旅をしたいというのもアリ。
3人限定で知らないことを教えてくれた古本屋
亀山さんが中学のときに3年間通ってた塾があって、古本屋のおじさんが生徒を3人だけ集めて教えてくれていたそうです。
雑学、知らないことをいっぱい教えてくれた塾。ウッドストックについて今日は学びましょうとか、宗教について学びましょうとか。今振り返っても、自分の基礎をつくるいい経験になっていたようです。
人との出会いが、人生を豊かにする
ツペラさんとの対談は、すごく新鮮でした。これまでいろんな人と、子どもは勉強ばかりじゃなくて夢中になることがあるといいよねということを対談してきたけど、それは「自分ひとりでの夢中の話」だったなと。今回の話は誰かとワイワイしたり、「人の夢中に触れる」というのがポイント。実際、ツペラさんたちは本当に、人間の魅力にあふれていて、対談がずっと笑いっぱなしでした。人間力って、ほんと大事だな…
PART3 夢中のこどもに聞いてみた
対談6:ドラマーYOYOKAさん
「娘をリスペクトしてる」世界的ドラマーになる可能性がある子とアメリカ移住を決断した家族の話
9歳で「世界が尊敬する日本人100人」に、また11歳で世界的なドラム関連サイト「ドラマーワールド」の世界トップ500ドラマーに、いずれも史上最年少で選ばれた、現在13歳のドラマーYOYOKAさん。
こどもの夢中をどう作るか?という話は多いけど、「夢中がありまくる子」がいたとき、その先はどうなるのか?という話は少ない。YOYOKAさんとご両親に、その辺りのことも含めて聞いてみました。
アメリカに移住
中学生のYOYOKAさんと家族が一緒に、ドラマーとして世界を目指すために北海道からアメリカへ移住しました。現在は北カリフォルニアのオークランド。
海外移住はいろんな手続きがすごく大変だそうです。ソーシャルセキュリティーナンバー取得、銀行口座を開設、免許証、携帯電話を契約、保険、学校の手続きなどなど。
家族でバンド
YOYOKAは、1歳からドラムをさわっていました。そして5歳のときに、家族でバンド結成。
親子の関係以外に、バンドメンバーという軸がありました。歳は30くらい離れているけど、バンドメンバーとしては平等。両親はドラムができないので、師匠的に立場にならず、あくまでフラット。それが良かったです。
オリジナル曲をずっとやってるので、ドラムのフレーズは小さい頃からYOYOKAさんが考えていました。
ゆずにハマったら、ゆずにフルコミット
2歳くらいの時、ゆずにハマっていました。ゆずしか聞きたくないって時期があって、ゆずのCDを全部買い。全部聞いて、ゆずのライブも行って。私が肩車して2時間半、ライブを楽しんでいました。
子どもをリスペクトする
娘のことを人として尊敬しています。ドラムができるからではなく、考え方とか人間性とか、素晴らしい。
アメリカに移住する決断も、彼女の思いがあったから。親はお金どうしようとか、現実的なことで迷います。決断するまでは、半年くらい眠れないほど悩み続けました。でも彼女はバシッと自信満々に「大丈夫だ」と言います。
彼女が言うことは今までほとんど間違っていないと思っていて、彼女が見ている世界や価値判断を信じていいんじゃないかというところで決断しました。
アメリカへ来るしかなかった
北海道の片田舎にいる凡人のところに、世界的なドラマーになれる可能性がある子がなぜか生まれてしまった。そんな子どもを授かった以上、世界でたたかっていくためにはこの年からアメリカで勝負するしかありませんでした。
18歳くらいだとどのミュージシャンも成熟しています。ローティーンのうちに世界のトップで揉まれて、絶望したり切磋琢磨したりしながら才能を伸ばしています。だから私らは無理してでも、来るしかありませんでした。
お金の面では、支援金や財団を調べても18歳以上が対象で、クラシックに限定しているところがほとんど。私(お父さん)は札幌市の公務員で14年間働いても手取りで25万円くらいだったので、このまま働き続けていてもアメリカで挑戦する娘の家賃すら払うことが難しい。
だから公務員をやめてチャレンジするしかありませんでした。才能のある子を世界に送り出すのに、こんなにリスクを負わないといけないことに驚きました。それにひとりで行かせるのではなく、家族でサポートすることの大事さも証明したいというのもあります。
アメリカ移住してどう?
YOYOKA「お風呂で湯船に全然入れてません。いろんな人がいて違いすぎるから、比べることをしない。どんな髪型でもどんな服装でも気にしない。
その人はその人、私は私。何が起こっても、自分のせいだし、自分のおかげ。周りからの感じ方も自分で変えないといけない自己責任の世界なので、けっこう大変。日本だと察してくれるところが、こっちではわからせなきゃいけない。大変でもあるし、そこがいいところでもある。多様性ってメリットとデメリットが半々。」
対談7:自学ノートの梅田さん
小3から高3まで続けた自学ノートが、たくさんの世界/面白い大人たちと出会うツールになった
小学生からハマり続けた「自学ノート」
小3年生から独自に「自学ノート」をつくり続けている梅田さん。現在大学2年生。
「自学ノート」とは、アンテナに引っかかった新聞記事の感想、資料館や展覧会のレポートなど、その時興味を持ったことを自分で調べてノートにまとめたものです。
リリー・フランキーさんが審査員をつとめる「子どもノンフィクション文学賞」では大賞もとっています。梅田さんの活動はNHKのドキュメンタリー番組にもなりました。
大学になってハマる場所を見つけた。文学部の勉強は自学ノートそのもの
ずっと自学ノートにハマっていたけど、大学に入ってから気づいたんです。大学の勉強、というか文学部の勉強というのは、自学ノートそのものであると。
見聞きしたものに対して、自分の考えたことを論じるというスタンスが自学ノートと同じ。これまで自学ノートでしてきた遊びが大学では勉強として扱われると知ったときは驚きました。
大学に入るまでの勉強は学びのスタートラインに立つための準備運動でした。義務教育や高校の勉強は難しいけれど、人生を楽しいものにするために必要なものだと思います。
自学ノートが、人と出会うためのコミュニケーションツールに
子どもの頃から、北九州のいろんな施設を、自学ノートにまとめて、それを施設の館長さんなどに見せに行ってました。中学校・家以外の「サードプレイス」を、子どもの時から生み出していました。
「自学ノート」みたいに、人と会うためのきっかけがあるのは強いですね。
さいごに
宝槻さんからは「夢中のきっかけプレゼン」は何度でもトライすればいいことと、サードプレイスについて学びました。
苫野さんからは、子どもたちはいつでも変われる「可塑性」という言葉をいただきました。
鳥羽さんからは、親には「可能性を担保したい」という心理があることを教わりました。勉強ルート以外でも、子どもが「大丈夫」と思える何かを持てば可能性の担保は成立するんだなと。
また、稲田さんからは「勉強はふつうに面白いものだ」という本質的な気づきを得ました。
ツペラさんからは、人間力の視点を学びました。たしかに論理的なことばっかりで子育てを考えてると、肝心なことを見落としそうです。ツペラさんたち自身すごく魅力的なご夫婦で、ものすごい説得力がありました。
梅田くん、YOYOKAさんからは、実際に夢中になった子たちの、その向こう側の話が聞けて、すごく視野が広がりました。
うちには現在、小6と4歳の子がいます。2人が今後どうなっていくのかは、わからないけど、この本で得たことを、フル活用していきたいと思います。
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6/8より予約発売開始。7/4に発売開始。
「こどもの夢中を推したい」は、現在amazonで予約発売中。発売日は7月4日。kindle版も7月から読めます。このnoteではまとめきれなかったいい話もたくさんあるので、内容ぜひチェックしてみてください!
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