見出し画像

渡辺あやさんが描くFMシアター『はるかぜ、氷をとく』〝あの日からの世界”を生きる、私とは違う道を選んだ、あなたとの雪解け。

本日、3月19日(土)22時よりNHK-FMにて「はるかぜ、氷をとく」が再放送されます。
この作品は、令和3年度文化庁芸術祭優秀賞を受賞し、その受賞を受けた再放送です。

画像1

この物語の登場人物は4人。原発事故のあと、息子・麦(ばく)と共に自らの判断で福島から千葉へ避難をした祐実と、 娘・こなみとともに福島に残った、祐実の妹・麻子。

10回目の春が近づく、ある日。 1本の電話がきっかけとなり、姉妹の胸の奥で冷えて固まっていた複雑な思いがあふれ出す。 「あんなことさえなければ…」そう思っても戻れない、“あの日”を境に変わってしまった世界。 異なる選択をしながら、その世界をともに生きようとする、2人の母親と2人の子どもの物語。


私は今回は出演ではなく、福島弁の方言指導で関わらせていただきました。渡辺あやさんの書いた台詞を、監督と渡辺さんと一緒に、役ごとにどれくらい方言が強いか等を確認しながら、ひと言ひと言福島弁に変換していきました。私は本格的な方言指導は実は今回が初めてでした。脚本を方言に変換したり、方言に変換した台詞を音源に吹き込む作業は、かなりのプレッシャーと想像以上の労力でした。(いつもは吹き込まれた音源を聴いて方言の台詞を話す方なので、こちらもものすごく大変なのですが…。)しかし、この渡辺あやさんの素晴らしい脚本に触れながら、台詞を福島弁に変換していく作業や、声に出して音源に吹き込む作業はものすごくやり甲斐があり、非常に光栄な時間でした。幸せな時間でした。福島に住む母や、地元の友人にも協力してもらって、丁寧に台詞を変換させていただきました。この場を借りて、改めて感謝をお伝えしたいです。本当にありがとうございました。

画像2

こなみ役の中村天海ちゃんと。彼女は女優さんではなく、自主避難を経験した現役高校生。演技初挑戦とは思えない素晴らしい演技で、スタッフも騒然。こなみ役の方言は、天海ちゃんと相談させてもらいながら仕上げていきました。


この作品の企画の小林涼太さんは、実は普段からドラマを制作している方ではありません。震災後、福島県で何年も報道を担当されていた小林さんが取材をもとに企画し、製作された作品です。

脚本の渡辺あやさんは、この企画の誘いをメールで受け取った時、正直逃げ腰になりながらも、小林さんの取材、企画が素晴らしいので是非頑張ってほしいと言った、とおっしゃっていました。

渡辺あやさんのコメントはこちらからhttps://www.nhk.or.jp/fukushima-ana-blog/100/444361.html

近くで、たくさんの方のお話を取材し続けてこられた小林さんが、ドキュメンタリーでは伝え切ることが難しいと、ドラマの企画に踏み切られたそうです。作品を聴いていただけると、確かにこの瞬間は、カメラが入り目の当たりにすることは難しいのです。私が2013年から続けている福島の記録映画『1/10 Fukushimaをきいてみる』でも、きっと映像でお伝えすることは難しいと思います。

〝自主避難”という独特な状況が産まれ、その後の世界を過ごす方たちのお話は、私も直接何人かにお話を伺うことができました。そして、実は、その方達もこのドラマの取材対象でした。

あなたの今夜の50分、私にいただけませんか?耳を傾けたら、嬉しいです。オンタイムが難しい方は、1週間の聴き逃し配信がありますので、そちらを是非。

ご感想、ご意見、ここの方言はどうなの?などなど、お声もお待ちしております。ホームページにもお声を届けるページがありますので、そちらも是非どしどしお待ちしております。


『はるかぜ、氷をとく』公式ホームページ
https://www.nhk.or.jp/fukushima/harukaze/

【出演者】酒井若菜 新山千春 三村和敬 中村天海

【作】渡辺あや
【音楽】岩崎太整
【スタッフ】
制作統括:鹿野恵功
技術:大塚茂夫
音響効果:野村知成
演出:小林涼太
(福島局制作)

ガッツリ福島弁をお話ししていただいた酒井若菜さんと新山千春さんのインタビューがこちらにありました。

https://www.nhk.or.jp/fukushima/harukaze/blog6/index.htmlhttps://www.nhk.or.jp/fukushima/harukaze/blog6/index.html


収録の裏側はこちら。私の方言指導の様子も触れていただいています。


最後に。この作品に関わったスタッフ、キャスト全ての皆様。改めて受賞、おめでとうございます。私はこの作品に関わることができて、本当に嬉しく光栄に思っております。ご一緒させていただき、本当にありがとうございました。

この作品が、まだ届いていない誰かの心に届いて、冷たく固くなっている部分が少しでもあったかくなることを祈って…

今夜、あなたに届きますように。

視聴方法…ラジオでNHK FMをお聴きいただくか、らじるらじる というアプリでもお聴きいだくことができます。


積もり積もった『ちょっとやってみたいけど、やらないでいること』のために使わせていただきます。佐藤みゆきという1人の人間に何が出来るか、私もまだ手さぐりですが、何もしないで悶々と悩むするよりは、何かしながら考えていこうと思っています。