お久しぶりです。バレンタインシーズンなので鶏の宝石箱という名前のラーメンを頂いてきました。2杯もねw
美しさを愛でながらスープを頂きます。
するとそこには清湯とは思えぬ旨味の濃厚さ!!
口当たりに鶏油の味わいが舌を包み込み、笑顔柔らかな母親の優しさを思い出させるような表情がすっと舌へと、そして心にと染み渡っていきます。
そして鶏の温かみゆっくりと舌の上で丸みを帯びながら実体的に浮かび上がると、鶏の味わいが甘く口の中に香り立つのです。
そしてここから広がる鶏のスープ(出汁)が、まさに絶品!!
スープに使われているのは、東京しゃも中抜き、東京しゃもガラ、比内地鶏ガラ、合鴨ガラ、セセリとのことですが、これら複雑な鶏の個性を見事に纏め上げることで、表情を多彩にしながら、ブレのないスマートな味わいが完成されています。
プロフェッショナルさを突きつける構成美が、一口のスープにしてしっかりと感じられたのです。
オーケストレーション―― 個性の強い食材を、無化調ならではの輪郭のキリッとした風味のままに調和させ、バランスによって角を感じさせない優しくも繊細な、そして味わいの深さを楽しませると同時に、その深さの中に素材の複雑さを広げていく・・・その様は、まさに高貴なる鶏のオーケストレーションであったと思います。
複雑な素材感、そして徹底した技巧の高さに溢れながら、一方ではそのことがけっして押しつけにはならず、むしろ食べる者をリラックスさせながら柔らかな癒しの表情で素直に素材の構成美とマリアージュを楽しませ、その余韻の中に優しい温かみを覚えさすこの個性がまさに―― 超クオリティーっ!!
口当たりからのコンマ数秒の中に、完成されたドラマとしてスープの素晴らしさが主張されます。
しかしこの一杯への喜びはまだまだ完結しないのです。
後味ではこのスープに返しの個性がすっと差し込まれ、その美味しさはさらに加速していきます。
命の塩ぬちまーす、そして戸田塩の個性が鶏の味わいにすーーーっと溶け込むように柔らかに優しく広がってゆき、その塩の表情の繊細さが、鶏の風味の輪郭をデリケートな輝きで彩るのです。
さらには極めてほのかに感じられる湯浅醤油の個性がスープと塩の個性に柔らかな馴染みを作ります。
そして羅臼昆布やイタヤ貝由来と思われる海鮮系の個性が、優しく重心を効かせながら後味を下から穏やかに支えていくのです。
―― あまりにも美味!!!!!!
口当たりからフィニッシュまで、鶏という題材をしっかりと主張する王道然とした力強いメッセージが漲っています!!
鶏の個性をただ濃厚にするのではなく、鶏の魅力に意識を瞬間的にフォーカスさせることができる、美しさあればこその美味しさであります!!
トッピングでは鶏チャシューの舌に忍ばせたセセリの柑橘煮が印象的です。
ワイルドな盛り付け、そしてその味わいもギラリと個性的でありながら、不思議とスープの気品にこの個性が馴染んでいます。
この辺が、やはりセンスなのでしょうね。
セセリの柑橘煮は、スープの黄色い味わいにオレンジ色の味わいを重ねる印象で、スープの明るい表情に厚みある煌めきを添えます。
温かなスープに柑橘系が加わった時にありがちな、重たさや曇り、そして甘ったるさは一切感じられず、むしろ西洋料理のアレンジが思い浮かぶようなエレガントで上品な色気を楽しまされます。
もちろんセセリの柑橘煮自体も素晴らしい味わいで、鶏の野性味が適度にスープから独立し、一杯の食べ応えに張りを生み出しています。
鶏胸真空低温調理チャーシューも柔らかで美味しかったです。
スープの鶏の表情をしなやかに絡めながら、舌の上へと優しくその旨味を溶け込ませていくその様が堪りません。
鶏ひき肉を中心としたアレンジも良質で、鶏という主題を改めて食べる側に意識させるきっかけにもなっています。
そしていよいよこのお店の真骨頂、自家製麺であります!!!!
細いストレート麺が使用された今回、麺は白くしなやかな表情で、スープに麺由来の温かな表情を強く重ねず、鶏の表情をよりスマートに楽しませようとします。
穀物感が舌に優しく、同時にスープの味わいに必要以上に干渉せず、その軽やかな一体感にこのお店らしいスタイリッシュさが感じられます。
この麺の上品さ、清楚さによって、トッピングのビーズもより高貴なる輝きを導かれているように思えます。
バレンタインシーズンに提供されたこの限定メニュー、その名を「ジュエル ~鶏の宝石箱~ 」といいます。
―― 何と言う美しい名前!!
そしてバレンタインデーが終わった直後、このスープを魚介スープとあわせた姉妹作品「エンジェル」が登場しました。
これまたネーミングが上手すぎて、ヤバすぎますから!!!!
今回このジュエルには、味変用の小皿が用意されていました。
焦がし葱とバターと思われるそれは、スープに加えることでこの上品に整った鶏のスープに興奮的な躍動感を与え、鶏の力強い生命感を蘇らせるようでもあります。
この遊び心もニクいですね!!
それにしてもジュエル、美味くて巧くて上手すぎる一杯でした~!!